健康志向が高まるなか、塩分の摂りすぎを気にする人が増えています。なにかと悪者にされがちな塩ですが、基本的には人間の生命維持に欠かせない大切なミネラル。

健康になる理想的な塩分補給・塩の摂り方を教えてもらった前回に続き、「減塩って必要ですか?」「季節によって塩の摂り方を変えた方がいい?」「自分に合う塩の選び方は?」など、覚えておけばきっと毎日の食事やヘルスケアに役立つ塩に関する素朴な疑問を、ソルトコーディネーターの青山志穂さんにぶつけてみました。

塩の素朴な疑問に答えてもらいました!

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教えてくれたのは、ソルトコーディネーター 青山志穂さん

Q1.季節によって塩分の摂り方は変えた方がいい?

A1.汗をかく量が変わるので、気温や季節によって変えたほうがいい。

普通に生活するだけで汗をかく夏は、水分と同時に塩分も意識して補給を。反対に、汗をかきにくい冬は体内から塩分が出ていきにくいので、塩分量は控えめに。気温や体調によって調節することが大切です。

日常的に濃い目の味が好きな人は、それ以上に塩分をプラスする必要はありませんが、野菜をたくさん食べる人はカリウムの働きで塩分が不足することがあります。体の冷えやダルさを感じたら、すこし塩分を増やすなど調節してみてください。

Q2.どんな人でも減塩したほうがいいの?

A2.塩分の過剰摂取は有害ですが、誰でも減塩したほうがいいわけではありません。

塩は、人間が生きていくうえでなくてはならないミネラルです。人間の血液は0.9%の塩分濃度を保つ必要があり、それによって体液のバランスを保っています。不足すると細胞の働きが悪くなり、死に至ることもあります。塩には体をあたためる作用があるため、不足すると冷えや疲れといった症状も起きます。

年齢が上がると体内の水分が減少するため、バランスをとるために塩分を控える必要がありますが、30代で減塩を気にしすぎるのは、むしろ健康に良くありません。

Q3.精製塩ではミネラルが摂れないの?

A3.精製塩そのものがミネラル(ナトリウム)です。

精製塩ではミネラルが摂れない、という言い方は誤解。塩(ナトリウム)自体がミネラルの一種だからです。ただしほぼ純粋なナトリウムなので、マグネシウムやカリウムなど、自然塩が含有するそのほかのミネラルは含まれていません。

Q4.精製塩っておいしくないの?

A4.誤解されがちですが、そんなことはありません。

自然塩は個性豊かですが、季節によって味が揺らぐので、最後の味の調整には向かないことも。プロの料理人も、下ごしらえにはこだわりのある自然塩を、仕上げの塩味の調整には精製塩を……と使い分ける人が多いです。味をさっぱりさせる効果があるので、天ぷらなど揚げ物にちょっとかけるとさっぱり食べられますよ。

Q5.体質別に合う塩ってあるの?

A5.東洋医学ではそのように言われることもありますが、科学的な指標はありません。

ただし経験的には、人によって「自分のフィーリングに合う塩」がある、と感じています。ソルトコーディネーター養成講座の生徒さんにも、「私にはこの塩が合う」と同じ塩を愛用する人や、「疲れたときになめると元気が出るから、いつも小瓶に入れて持ち歩いている」という人がいます。いろんな塩を試してみると、運命の出会いがあるかもしれません。

Q6.自分に合う塩の探し方は?

A6.塩の専門店でいろいろ試して。塩のワークショップに参加してみるのもおすすめ。

というのも、市販の塩は一袋の容量が多くて、なかなか種類を試せないから。塩に興味がある友人と、塩の共同購入をするのもいいと思います。また、今後東急ハンズで、いろいろな塩を少量ずつ試せるキットを販売する予定なので、ぜひチェックしてみてください。

売り場で商品のラベルをみると、ナトリウムの含有量などが記されているはず。ナトリウムの濃度が高いほど、しょっぱさがアップします。

Q7.「この料理にはこの塩」など、いい組み合わせを教えて。

A7.しょっぱさの強弱と、粒の大小で組み合わせて。下記を参考にしてみてください。

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【味わい】赤身の肉・魚、揚げ物:味が強いので、塩味が強い(ナトリウム濃度が高い)塩が合う
白身の肉・魚、ごはん、野菜類(トマト)以外:味が淡泊なので、塩味が弱く繊細な塩が合う

【粒の大きさ】塊肉など、触感が強く、長く咀嚼する食材や料理:粒が大きめで、一緒に咀嚼できる塩が合う
柔らかい野菜料理など、あまり咀嚼しなくていい繊細な食材や料理:粒が小さくてなじみやすい塩が合う

Q8.これから注目したい塩のトレンドは?

A8.塩麹、塩レモンブームのあとに続きそうなのは「水塩」。

海水を煮詰めていって、塩として結晶化する直前で製品化した濃縮海水です。ナトリウムの濃度が低く、通常はにがりとして出ていくマグネシウムやカリウムなど、大事なミネラルがそのまま含まれています。和食の伝統技法として伝わってきたもので、独特の味わい深さがあります。「水塩」は液体状なので、スプレー状にして吹きかけるとまんべんなく塩味がつき、塩分コントロールしやすいのもメリットです。まだ一般的なスーパーではあまり取り扱いがありませんが、これから増えていくかもしれません。

Q9.パーティで塩をうまく使うには?

A9.フレーバー塩を活用すると盛り上がります。

20170626_salt_kankitsu.jpg最近話題の「トリュフ塩」をはじめ、シークワーサーやへべすなど、その土地の柑橘類を使った「ご当地柑橘塩」や、燻製した「スモーク塩」がおすすめ。どちらも様々な香りや味わいがあって、野菜のグリルや肉料理、白身魚のカルパッチョにふりかけるだけで、味に深みが出て、料理がぐんとおいしくなります。「スモーク塩」は卵やチーズにふりかければ、クイックおつまみにぴったりです。

20170626_salt_kunsei.jpgパーティの演出として、美しい小皿にとって並べれば、「これなあに?」と会話のきっかけにも。簡単なのに料理上手に見えるテクニックです。

Q10.夏場に摂りたいイオンウォーターは手作りできる?

A10.簡単に手作りできます。

それほど汗をかいていないときに飲むのなら、0.5%くらいの食塩水を。汗をたくさんかいたときは砂糖もすこし加えると、浸透圧の働きで吸収率が高まります。

ミネラルウォーターはもちろん、炭酸水を使うのもさっぱりしておすすめ。フルーツと塩も相性がいいので、デトックスウォーターに塩をプラスするのもいいアイデアです。

>>塩分、本当に摂りすぎですか? 理想的な塩の摂り方

お話を伺った方:青山志穂さん

20170626_aoyama_profile.jpg一般社団法人日本ソルトコーディネーター協会代表理事/シニアソルトコーディネーター。東京都出身。料理好きの母の下、幼少の頃から様々な国の料理を食べて育ち、食べるの大好き!な食いしん坊に育つ。大学卒業後、食品メーカーを経て、沖縄へ移住し、塩の専門店に入社。数年をかけて日本初のソルトソムリエ制度(社内資格制度)を立ち上げる。2012年に一般社団法人日本ソルトコーディネーター協会を設立し、独立。現在は、全国各地を飛び回りながら、講演活動やメディア出演など、塩の魅力を広く伝えている。代表著作に「日本と世界の塩の図鑑」(あさ出版)、「塩図鑑」(東京書籍)など。

image via shutterstock (1)、Photo by Gettyimages (3)

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