野草で酵素ドリンクをつくってみませんか?

ある日、お誘いをうけて、野草の酵素ドリンクづくりのワークショップに参加しました。作り方を伝授してくれたのは、「酢之宮醸造所」の宮嵜さんご夫妻。ご夫妻は、自然豊かな香取市(千葉県)の風致地区で、柿と空気だけで酵素酢を造っています

実は私自身、以前に何度か酵素ドリンクを手作りした経験があります。ですが残念なことに、成功体験がいちどもありません。果たして今回、手作り酵素ドリンクは成功するのか。そして “野草の酵素ドリンク”とはいかなるものなのでしょうか。

酵素ドリンク作りの前に、知っておきたい酵素のこと

酵素という言葉をよく耳にするようになった今日この頃。そもそも、酵素とはどういったものなのでしょうか?

「酵素は、体内の代謝活動において必要な分子で、主にタンパク質でできています。そして酵素は、大きくわけて2つあります。それが、体内でつくられる『体内酵素』と植物や微生物がもつ『食物酵素』です。

まず、体内酵素は、私たちの健康に欠かせないものです。免疫機能や自然治癒力もそうですが、体内酵素の正常な働きによって生命維持活動がなされています。しかし、一説には、体内酵素はつくれる量が決まっていると言われていて、生活習慣やストレスなどにより大量に消費されたり、加齢によって体内酵素が少なくなっていくと代謝活動が鈍くなると考えられています。

そこで、植物や微生物がもつ『食物酵素』の登場です。

食物酵素は失われた体内酵素を補う役割をしてくれます。健康食品としてのイメージをもつ、ぬか漬けや納豆などの発酵食品、生野菜や果物も食物酵素を摂取できる代表的な食べ物です。食物酵素を摂取することは、体内酵素の消費を減らし、健康維持に繋がります」と酢之宮さん。

酵素については、研究する学問や分野の違いで見解が様々で、完全に解明されていないため諸説あるようです。ただ個人的には、自然のものから作る酵素ドリンクには興味があり、今回はさらに野草を使うというところが面白いなと思い、ワークショップに参加しました。

今回作る野草の酵素ドリンクは、食物酵素がぎゅっと凝縮された酵素飲料。夏前の植物の新芽が育つ季節は、野草の酵素づくりには最適なのだとか!

野草の酵素ドリンクの作り方(野草摘み~仕込み)

今回は、1キログラムの野草から、酵素ドリンクを作ります。酵素ドリンク作りに必要な原料は、「野草」と「砂糖」です。

野草を摘む

まずは野草摘みです。

毒性がある植物(とくに球根類などは注意が必要)は避けて、好きな野草の新芽から茎の部分までを園芸ハサミでカットします。ポイントは新芽の部分を摘むことです。根は使用しません。

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農薬などが散布されていない土地に生えている野草を摘むのが理想的だそう。今回は、農薬を散布していない土地を所有している方の許可をいただいて、野草を摘みました。

私は、ドクダミ・スギナ・ワラビ・マツ・カジイチゴなどを中心とした植物を摘み採りました。

野草摘みでは最初、ついつい体にいいと言われる植物を区別して探していましたが、「体にいいと言われているものだけを摂り入れ、その他を排除してしまうのではなく、与えられえている環境に存在するものを理解し、玉石混淆、万物を受け容れる」というスタンスも大切なのだそうです。野草摘みという単純な作業でも、そこには深い哲学が存在します。

野草を洗い、水気をとばす

先ほど摘んだ野草を水洗いします。大きな桶などに野草を入れて、真水で野草をすすぎます。

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念入りにゴシゴシ洗わず、簡単にすすぐイメージで。洗剤は使わずに、野草についた虫・ゴミ・埃などがサッと取れればOK。

野草を洗ったら、水分をとばすために少し干します。この日はカラッとした晴天だったこともあり、水切りの時間は1時間ほど。ですが、時間を頼りにするのではなく、野草の様子を見ながら、水が切れているかを判断します。

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広めのネットやザルなどの上に洗った野草を広げると、水気が飛びやすくなります。

水気をたっぷり残したまま酵素ドリンクを仕込むと、腐敗の原因になります。水気はできるだけ残さないようにします。

野草をカットする

水気が切れた野草は、約1cmずつにカットします。

包丁やナイフ、もしくは切れ味のよいハサミを使い、野草をスパッと切っていくのがコツ。野草から酵素が抽出されやすくなるのだそうです。

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ミキサーやジューサーは使用しないようにご注意を。

投入する砂糖の量を把握する

酵素ドリンクは、砂糖の浸透圧により野草から酵素を抽出します。ですので、野草に対して酵素を十分に抽出できる砂糖の量が必要です。

投入する砂糖の量は、「野草:ショ糖= 1:1.1」を目安に。しかし、環境(季節や地域、住居環境)によって若干異なるので、あくまで参考として捉えます。

私の場合、過去の数々の失敗から、1kg(野草):1.2kg(白砂糖)と砂糖の量を若干多めにしました。

ちなみに、使用する砂糖の種類によって、含まれるショ糖の量が異なります。あらかじめ、使用する砂糖の「ショ糖割合」を調べた上で、投入量を計算しておくと作業がスムーズです。

砂糖の投入量については以下をご参考に。黒砂糖を使用した場合の計算式です。

例/野草1Kgに対して、ショ糖割合80%の黒砂糖を使用する場合
(メーカーによって、黒砂糖に含まれるショ糖割合は異なります。あくまで一例です)

1(野草の重さ)÷0.8(ショ糖割合)×1.1(目安となるショ糖の量)=1.375

よって、ショ糖割合80%の黒砂糖を使用する場合、約1.4kgの黒砂糖が必要となります

容器に野草と砂糖を入れる

カットした野草と砂糖を容器に詰めていきます。

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容器の底が野草になるように、底から野草→砂糖→野草→砂糖と層にして原料を入れていきます。

これで仕込みが完了です。

仕込みの工程を通して気をつけたいのは、摘んだ野草は時間を置かず、手早く作業を進めることです。酵素の抽出には、野草の鮮度も重要。できれば、野草は朝の水を吸い上げているときに摘み、すぐに仕込むのがベストなのだとか。

酵素ドリンクの保管方法

仕込んだ酵素ドリンクが入った容器は、直射日光や高温多湿を避け、冷暗所に保管します。また、保存容器の蓋は、ギュッと閉めないようにしましょう

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半開きの容器の口から埃が入らないよう、サラシなどの通気性の良い布をかぶせ、その上から蓋を軽く乗せるなどの工夫を。

もし、蓋をギュッと閉めて保存しなくてはならない場合は、一日に1回~は蓋を開け、容器のなかのガスを抜きます。蓋の開封を忘れて放置すると、容器が破裂して危険ですので、くれぐれもご注意を。

次回は、醸造~濾過~完成の過程、飲み方などをお伝えします。

>>【後編】酵素酢屋さんに教わる、「野草の酵素ドリンク」の作り方

取材協力/酢之宮醸造所

写真撮影/Masa(Yonevanlife)

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