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無観客でのオリンピック開催、コロナ禍で2度目の新内閣発足などと、いろんなことがあった2021年。複雑な気持ちを抱えることが多かった世の中の片隅で、聴く人の気持ちを晴れやかにすると話題になっていたPodcast番組をご存じでしょうか。

TBSラジオのPodcast番組「ジェーン・スーと堀井美香の『OVER THE SUN』」は、女性たちが表に出せない思いや悩みを告白し、受け止め合う「おばさんの掲示板」的番組。開始から2年目を迎えたこの番組で、パーソナリティーを務めるふたりが、2022年に馳せる思いとは?

番組収録直後のスタジオを訪ね、お話を聞きました。

バカ話をしてゲラゲラ笑うのが楽しみだった2021年

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──おふたりにとって、2021年はどんな1年でしたか?

ジェーン・スーさん(以下、スー):やっぱり結局はコロナに翻弄された、おっかなびっくりな1年でした。2020年は既存のものがどんどん崩れていくガラガラという音だったのが、2021年は古い価値観を捨てるとか、自分自身が変わるとか、今の時代の生活にアジャストしていくための“きしみ”の音がずっと鳴り続けた1年だった気がします。

堀井美香さん(以下、堀井):私の場合は、仲間と行動できなくなったので、そのマグマが溜まって、どこかで爆発しちゃいそうという危機感がありながら、その爆発をどこにぶつければいいかもわからないっていう感じだったかな。

スー:おばさんは仲間と集まるのが得意なのにね(笑)。堀井さんはいつもスマホを気にして忙しそうだった。

堀井:私はアナウンス部のデスクをしているのですが、アナウンサーや出演者、スタッフのなかで、たったひとりがコロナに感染するだけでも番組は大変なことになってしまいます。そんな不測の事態に対応できるよう、寝るときもスマホを枕元に置いていましたね。やはり私もコロナに翻弄された2021年でした。

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──そんな1年でも、毎週発信し続けたのが2020年10月に始まったPodcast番組「OVER THE SUN」ですね。スーさんは番組のことを、「おばさんの掲示板みたいなもの」とよく言っていますが……。

スー:閉経とかVIO脱毛とか、なかなか表には上がらない話題をおばさんたちがあーだこーだ話してる感じ。私たちはリスナーさんのメールを読み上げながらゲラゲラ笑ってるというだけの番組です(笑)。とにかく皆さんのメールが巧みなんですよ。今日の収録なんて、堀井さん本気で涙流して笑ってた。

堀井:そうそう。この番組に関しては、私たちはとくに打ち合わせもしないですしね。台本も、A4のコピー用紙にはじめと終わりの決まり文句が書いてあるだけ。若い世代の方やおじさんからしてみたら「おばさんってあんな話をしてるんだ」って覗き見している感覚なのかもしれないですね。

スー:怖いもの見たさ、みたいなね。でもリスナーさんに「いつも楽しみ」とか「気がラクになる」とかって言ってもらえるのは、作り込み型の番組じゃないからかも。

堀井:意外と若い世代も聴いてくれているみたいです。高校生が他のPodcastを聴いていたときに私たちのバナーが出ていて、うっかり押してみたらハマってしまったとか(笑)。あと、この番組って「おもしろいから聴いてみて」という感じで口コミで広がっているようで。そんなふうに聞くとすごくうれしい気持ちになります。

スー:毎週聴いてますなんて人がいると、「あんたら、暇だね。もっと時間を大切にしたほうがいいのに」って思いますけどね(笑)。

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毎週の収録は面倒だけど、「あー楽しかった」で終わる

──スーさんと堀井さんは、生き方も価値観も違うのに掛け合いが最高ですよね。スピーカー越しに、仲の良さや信頼関係を感じます。

スー:このあいだ計算したら、初めてラジオでご一緒させてもらってから、10年ぐらいになるみたい。「OVER THE SUN」の収録が週1で、TBSラジオ「ジェーン・スー 生活は踊る」は生放送で、5週目が堀井さんの担当だから、月によっては何日か連続して会う今日も堀井さん、明日も明後日も堀井さんってこともあるんです。

堀井:仲のいい姉妹? 兄弟? みたいな感じになってきましたね。変に気を使いすぎないし、言いたいことを言って、でも相手は聞いてないし(笑)。

スー:私はひとりっ子だから姉妹という感覚がわからないんだけど、仕事をしていく上で、信頼できるパートナーであることは間違いないですね。「これを言うと、誤解させて傷つけてしまうかな」とかいうのを、堀井さんに対してはあまり考えないでいられるのがすごくラク。わざわざ会う時間を作ろうとしなくても仕事で会えるのはうれしい。

堀井:以前は、毎晩深夜に電話してましたね〜。今はもっぱらLINEですけど。

スー:収録は毎週あるから、正直、面倒だなって思うんですけど、スタジオに来ちゃうと堀井さんとバカ話して、リスナーさんのメールにゲラゲラ笑って、結局「あー楽しかった」ってなる。その繰り返しをしていた1年でしたね。

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自分はどうしたい? をちゃんと考えてもいい頃合い

──2022年はどんな1年にしたいですか? 挑戦したいことや、はじめたいことは?

スー:得意なことばかりやっていたら、なにがやりたいかわからなくなっちゃった。 だからこうして取材とかで「やりたいことは?」って聞かれても、パッと出てこなくなっちゃったんです。自分がどうしたいのかが、わからなくなっちゃってるんですよね。

だから自分自身に目を向けようと思って、仕事を減らしてみたこともあるんです。でもちょっと休みが増えたぐらいでは生活は変わらない。そこが自分の課題であり、今年も考えてみようかなって思いますね。

堀井:私は最初にもお話ししましたけど、スマホから離れる時間をつくるようにしたいですね。最近は少し自分の時間ができてきて、30分もあれば本を読んだりしているんですけど、「こんなふうに頭が空っぽになる時間って、なかったなぁ」としみじみ思うんです。

スー:何かに追い立てられる生活はやめていきたいよね。

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堀井:そうねそうね。あとは、「声に出してものを読む」ということをしたいですね。これまで読み聞かせや音読はライフワークとして続けてきましたが、自分の暗記力の筋肉を鍛え直したいなと思って。ものを覚える力が弱くなっていることに危機感があるんですよね。

スー:「なんだっけ、忘れちゃったギャハハ」だもんね、もう私たち。筋肉でいえば、私は「ゆる筋トレ」をしたいですね。もうやせるためというのではなく、筋トレの目的が変わってきましたよね。転ばずに歩くとか(笑)。おしりを上げるとかウエストのラインを整えるとか、そのためのゆる筋トレは続けていきたいですね。夏からちょっとおろそかになっていたので。

不要不急は必要。リスナーさんたちと集いたい

堀井:あとは、リスナーの皆さんと集まりたいですね。昨年10月に、リスナーさん100名とオンラインイベントをやったのですが、参加者全員シートマスク姿でZoomをして(笑)。すごく盛り上がったんです。

スー:三密とか不要不急にこそ、私たちの楽しみがあったはずなのに、集まる場が本当になかったですからね。今年も何かイベントができるといいなと思ってます。昨年「OVER THE SUN」のちょっとしたやり取りから、リスナーのみなさんと「ヒヤシンス」を球根から植えて育ててみようという取り組みが始まっていて。この春には、日本のあちこちでヒヤシンスが咲くはずなんです。そういうのもおもしろいですよね。

堀井:ヒヤスンスね(笑)(※)

※番組内でのヒヤシンスの呼び方

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何はともあれ、背伸びをしないことに尽きる

──マイロハス読者に、何か自分らしく気持ちよく生きるヒントをお願いします。

堀井:みなさんにあてはまるかはわからないのですが、私はどんどんムダなものをなくして身軽にしているところです。

スー:堀井さんの新しいテーマだよね。

堀井:断捨離して、残すものを決めていくってすごく気持ちいいです。

スー:私は食べすぎをやめようって思っています。食べすぎないようにした人から幸せになっているような気がするんですよね。それに、若いころは「あーおなかいっぱい」で済むんだけど、私たちぐらいの年齢になると、胃もたれとか胸焼けのレベルが以前の比じゃないから。

堀井:そうしたら、私は干したものを食べようかな。田舎の出身なので、昔は干した大根とかよく食べていたんですよね。干すと栄養価が高まるって聞くし、味もしみるし。最近あまり食べていないから食べようかなと……。って、こんな答えで読者の皆さんへのヒントになるのかな(笑)。

スー:背伸びしない、背伸びしない(笑)。干したものを食べ、ただし食べすぎない。これを私たちから皆さんへのメッセージにしましょう。そうそう、気持ちよく生きるって、背伸びしないことに尽きるような気がしますし、そうありたいなって思います。

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ジェーン・スーさんと堀井美香さんが
2022年にしたいこと・やめたいこと

<したいこと>

  • 自分はどうしたいのかを基軸にする(スー)
  • 断捨離して、残すものを決める(堀井)
  • 声に出して文章を読む(堀井)
  • ゆる筋トレ(スー)
  • 干したものを食べる(堀井)

<やめたいこと>

  • 「やりたい」より「得意」を優先し過ぎること(スー)
  • 何かに追い立てられる生活(スー)
  • スマホにとらわれること(堀井)
  • 食べすぎること(スー)

ジェーン・スーさん
1973年、東京生まれの日本人。作詞家、コラムニスト、ラジオパーソナリティ。2016年4月よりMCを務めるTBSラジオ「ジェーン・スー 生活は踊る」のほか、2020年10月より開始したPodcast番組「OVER THE SUN」で堀井美香さんと共演。 音楽ジャーナリスト高橋芳朗さんとの共著『新しい出会いなんか期待できないんだから誰かの恋観てリハビリするしかない 愛と教養のラブコメ講座』(ポプラ社)、『ひとまず上出来』(文藝春秋社)など著書多数。

堀井美香さん
1972年、秋田県生まれ。1995年4月、TBSにアナウンサー30期生として入社。「王様のブランチ」「THE 世界遺産」(ナレーション)などを担当。テレビやラジオ出演のほか、子どもへの絵本の読み聞かせや、TBSアナウンサーによる朗読会「A’LOUNGE(エーラウンジ)」のプロデュースなどでも活躍。1男1女の母でもある。

撮影/キム・アルム

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