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お味噌汁は料理の始まり。土井善晴さんが教える「自立の味噌汁」

整えBOOK

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田邉愛理

「自分で作って食べることが、すべての始まり」──そう語るのは、料理研究家の土井善晴さんです。

新刊『お味噌知る。』(世界文化社)は、土井さんと長女の光さんとの初めての共著。「一人暮らしをするまで、味噌汁の存在を意識したことがなかった」という光さんの視点が生きた本書では、“自立”につながる料理としての味噌汁の力を強く感じました。

「一汁一菜」の実践版。お味噌汁は料理の始まり

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料理研究家・土井善晴さんと、フランス修業を経て現在は土井さんの「おいしいもの研究所」でアシスタントを務める長女の光さん。本書は親子での初の共著となる。

2016年に「食事は一汁一菜でいい」という考え方を提唱し、毎日のごはん作りに悩む人の心を軽くしてくれた土井先生。そのなかで、一汁一菜の要として存在感を放っていたのが、本書の主役であるお味噌汁です。

本書は土井家のふだんの味噌汁や、味噌を使ったさりげない一品のレシピとともに、「味噌汁」という料理の本質を紐解いた一冊。

ひと椀のお味噌汁の世界はとても小さいけれど、そこには無限の変化と可能性があると土井さんは語ります。

厳密に言えば、二度と同じ味噌汁は、作れません。

味噌汁のおいしさは人間が作るものではなくて、生まれてくるものです。

味噌汁を作ることは、お料理することです。繰り返します。一汁一菜は手抜き料理ではありません。日本の食文化……自然と人間がうまくやっていくための知恵……にあるお料理の始まりです。

(『お味噌知る。』218ページより引用)

具だくさんの味噌汁を中心に、ごはん、ときにはパンを合わせるのが土井家の一汁一菜スタイル。そこに和食の堅苦しいルールはありません。

だしをとらないとおいしいお味噌汁はできない、というのも誤解。野菜や肉、魚を煮ると、あらゆる食材から物質が溶け出して、旨みのある水溶液(だし汁)になるため、「水と具材を煮て味噌を溶く、それだけで充分」なのです。

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「炒めキャベツの味噌汁」ほか、具材を油で炒めてから水を加える“油炒めのお味噌汁”も数多く紹介されている(本書38ページより)

それを実感したのが、本書に登場する「炒めキャベツの味噌汁」。鍋に油と煮干し、適当にちぎったキャベツを入れて焼き炒め、そこにブロッコリと鶏胸肉を投入してお味噌汁に仕立てます。

キャベツを炒めるときは「さわらず、焼き色がつくまで待つ」といったポイントを教えてくれるのもうれしい心遣い。一品でタンパク質も野菜もおいしくとれる、大満足の汁物でした。

「自立の味噌汁」は一品で完結できるもの

「味噌汁には、人それぞれの立場や、場面に合わせた作り方がある」という視点も本書の特徴。そうした状況を踏まえて、レシピは自立の味噌汁、家族の味噌汁、組み合わせる味噌汁、季節の味噌汁、そして味噌料理・スペシャルな味噌汁と、5つのテーマに分けて紹介されています。

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「落とし卵といろいろ野菜の味噌汁」は卵を入れることでボリュームも栄養価も高まり、主役級の1品になる(本書34ページより)

第一章「自立の味噌汁」の冒頭には、土井さんと光さんのこんな会話が。土井家の日常が垣間見えるようでした。

(善)料理って自立やろ。

(光)自分自身で自分のお世話をする。その時の自分の体調を汲み取ってお料理できるって結構凄いことかも。

(善)それを助ける自立の味噌汁は、一品で完結できるもの。

(光)大きめのお椀で丼や麺のように、主菜として考えると難しくない。自立した味噌汁を作って安心や自信を持てたらよいね。

(『お味噌知る。』33ページより引用)

このテーマでは、とにかく栄養重視、一人だから見た目は気にしない……といったお味噌汁が出てくるのも、なんだか気持ちをラクにしてくれます。「餅入り、納豆汁」もそのひとつ。

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「餅入り、納豆汁」。いわゆる“和食のルール”にとらわれず、栄養を重視し、自由な発想で味噌汁を楽しむことを教えてくれる一杯(本書62ページより)

見た目が黒くなったのは、海苔を入れたからですね。見た目が悪くなって、やめといたらよかったなあと、後から思いましたが、自分で食べるものだから、そのままいきます。海苔からだしも出ますから。一人で作る料理とはそういうもんですね。

(土井さん談/『お味噌知る。』63ページより引用)

飾らないおしゃべりで作る人の気持ちを和ませながら、解説ページではお味噌汁を盛った「なます皿」の歴史や、お箸で食べる和食の食べ方のルールも教えてくれるのが土井さん

肩肘を張らずに食材を手にとり、お味噌汁を通じて料理の心を学んでほしい。そんな思いも感じられました。

新しい生活を始めるときに大事なことって?

何を作れば良いかわからない人、

どうすれば自分の食生活を見直せるかわからない人は

まず味噌汁を作ってみませんか。

(『お味噌知る。』4ページより引用)

本書の冒頭で、光さんは読者にそう呼びかけています。

新しい生活を始めるときに大事なことは、「どんなふうに暮らそうと思うか」だと土井さん。

自分の暮らしを壊さずに、何も考えなくてもさっと作れて、きちんと食べられる。そんなお味噌汁の存在が、私たちの強い味方になってくれることは間違いありません。


写真はすべて『お味噌知る。』より(撮影/ジョー)

お味噌知る。

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