こころとカラダの調子にまつわる素朴な疑問に、専門家が答える連載「こころとカラダQ&A」。今回は、「マウンティングをしてしまう理由とやめるヒント」について公認心理師の佐藤セイさんに教えてもらいました。

マウンティングをしてしまうのはなぜ?

Q. 自分の言動を振り返って「あれってマウンティングだったのかな……」と気づくことが多くて悩んでいます。マウンティングをしてしまう私の心理が知りたいです。

A. マウンティングは「自己肯定感の低さ」のあらわれかも

マウンティングは「自分のほうが優れている」と他者に示すための言葉や態度のこと。もちろん、マウンティングされた側は不快になりますし、意外にもマウンティングした本人が後悔するケースも少なくありません。マウンティングの背景には「自己肯定感の低さ」があると考えられます。

他者から認めてもらいたいという気持ちが転じて……

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自己肯定感とは、自分で自分に対して「これでいい」と肯定する感覚です。 自己肯定感が低いと自分で自分を肯定できず、「自分の行動は間違っているかも」「こんな気持ちになるのはおかしいのかも」など、何をするにしても不安がつきまといます。

そのため、自分の代わりに他者に認めてもらおうとします。 そして、他者から認めてもらうためのアピールが、マウンティングにつながってしまうのです。

マウンティングをやめる3つのヒント

1. 自分の感覚や気持ちを大切にする

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マウンティングをする人は、他者の評価には敏感に気がつく一方で、自分の感覚や気持ちを無視してしまう傾向があります。

マウンティングをやめる第一歩は「今の自分」の感覚や気持ちを取り戻すこと。「今の自分」に気づく方法のひとつが「マインドフルネス」です。マインドフルネスとは、今この瞬間における自分の体験をそのまま受け止めるものです。

やり方としては、
・外を眺めて見えるものを一つひとつ言葉にしていく。
・歩きながら足にかかる体の重みや重心が移動していく感覚などを観察する。
などの方法があります。

自分よりも他者を優先してきた人にとって、最初は自分の体験をキャッチするのは難しく感じるかもしれませんし、途中で注意が逸れてしまうかもしれません。

それでも毎日続けていくと「自分ってこんなことを感じていたんだなぁ」と気づくことが増え、自分の気持ちや感覚を大切にできるようになります。

2. 弱音を吐ける場を見つける

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マウンティングをする人は「弱い自分じゃダメだ!」と思い込んでいる傾向があります。 そのため、弱い自分を隠さなくてもいい場所を見つけるのも、マウンティングをやめる方法のひとつ。

家族や友人などに弱音を吐いてもいいですし、難しい場合にはSNSを使って匿名で愚痴を言ってみる、あるいは愚痴聞きサービスのようなものを使ってみるのもいいかもしれません。

弱い自分も他者から受け入れられる経験を重ねることで、「マウンティングで自分を大きく見せなくてもいいのかもしれない」と感じられるようになります。

3. マウントを取り合う環境から離れる

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他者からマウンティングされると不愉快な気持ちになりますし、つい張り合ってしまいます。マウンティングをやめたいのであれば、マウントを取り合うような環境からは離れるほうがいいでしょう。

職場やママ友など、簡単に離れられない関係の場合には、マウンティングされても笑顔で「そうなんだ」と受け流すことを繰り返しましょう。「この人はマウンティングしても効果がない」と判断すれば、マウンティングをしてくる人は自然と離れていきます。

「肯定されたい」「認められたい」という気持ちは誰にでもあるものですが、他者からの評価に頼っていると、いつも他者が気になり、自分らしい人生を見失ってしまうことも。

紹介した3つのヒントのうち、できそうなものから取り組んでみてください。 自分自身で「やってみよう」と決意してチャレンジすることが、他者を気にしてマウンティングしていた自分を変える第一歩です。

佐藤セイ(さとう・せい)
臨床心理士、公認心理師。精神科・心療内科、神経内科(もの忘れ外来)、リハビリテーション科、児童相談所、療育施設、刑務所などに勤務。現在はスクールカウンセラーをしながら、ライターとしても活動する。

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