わたしたちの心地よい暮らしに役立つもの、積極的に選びたい社会や環境に優しい商品、みんなにとって気持ちがいいアイテムやサービスを、編集部がピックアップする連載「Editor’s Pick」。

突然ですが、シャンプーとコンディショナーのプラスチックボトルの廃棄量をご存知ですか?

なんと、世界で年間800億本! しかもリサイクルされるのは、そのわずか9%程度だそう(※)

そこで昨今、ボトルに植物由来素材を採用する動きがあるほか、ボトルレス化も進んでいます。

このボトルレス・シャンプーの筆頭としてご紹介したいのが、シャンプーバーと呼ばれる、固形シャンプー。紙に包装され、環境にやさしいと評判です。

※「エティーク」調べ

「石鹸=素朴でシンプル」と思うことなかれ。想像以上に高機能

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シャンプーバーを展開するブランドは、地球環境への配慮を重視するクリーンビューティ・ブランドであることがほとんど。よって、製品に使われる原材料は環境と髪・肌にやさしい成分で構成されているものが多数。

製品がナチュラル志向だからといって、機能まで素朴かというとそんなことはなく、地肌ケア用、ハイダメージヘア用、ブリーチヘアの褪色予防用など、目的別に展開されており、毛質に最適なものが選べます。

また、リキッドシャンプーは、ケア剤が手中でしっかりと泡立てられる前に塗布されることがあり、そうするとケア剤が頭皮に直接ついてしまい、洗い流しが不十分だった場合、かゆみやフケの原因に。しかしシャンプーバーは固形ゆえ、泡を作ってから使わざるをえず、そういった心配がありません。よって頭皮に負担をかけたくない人には、特におすすめです。

ひとつ懸念されるのは、シャンプーバーには弱アルカリ性製品が多い点。髪はアルカリ性に傾くと表面を覆うキューティクルが開き、きしんだり、毛髪内の染料が流出し、色落ちしやすくなったりする可能性が……ということから、今回、おすすめ3ブランドのシャンプー&コンディショナーバーのお試しを決行しました。

ブランド紹介に入る前に、結論から

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シャンプーバーは、髪とバーの両方を濡らし、手で泡立てて使うか、お好みでバーを直接髪にくるくると滑らせて泡立てる。写真は「LUSH」の「のりのりシーサイド」55g 1,250円(税込)。

シャンプーバー、非常によいです。

泡立ちがよく、洗い心地抜群。地肌のベタつきがなくなり、きしむというより、軽やかな髪になった印象です。

どれも仕上がり満足度が高かったことから、手軽にできるエコ活動として続けてゆきたい!

ただバスタイムに多くの時間を割けない人や、ハイダメージヘアの場合、リキッドタイプのトリートメント、またはアフターバスのケア剤との併用がよさそう。

これは筆者個人の髪質によるところが大きいのですが……筆者は潤いの少ない毛質にブリーチを施した傷みが激しい毛の持ち主ゆえ、トリートメント剤をしっかりと塗布させねばなりません。しかしコンディショナーバーは、手中で製品を転がしただけでは手に取れるケア剤がやや少なく、毛量の多い筆者では髪全体に行き渡らせるのに時間がかかってしまいます。手早く洗髪を終えたいときにはリキッド・トリートメントを使うか、シャンプーだけで済ませてアウトバスのケア剤で潤いを補足するのがいいかな、と感じました。

多少、ボトルゴミを出すことにはなってしまいますが、無理なく生活になじませることで、シャンプー&コンディショナーバーとより長くお付き合いを続けていけると信じています!

お待たせしました。厳選3ブランドをピックアップ

豊かな泡が、即完成。シャンプーバーの先駆けブランド「LUSH(ラッシュ)」

  • 泡立ち、香り立ちがいい
  • 化粧品会社で前例のなかった完全パッケージフリーでの販売
  • 可愛いルックス、毛質や仕上がりの好みで選べる豊富なラインナップ
  • 頭皮ケアができる「ソーク アンド フロート」の爽快感はやみつき級

1995年からシャンプーバーを販売し続けている「LUSH」

当時、新しい石鹸を開発しようと実験を重ねていたブランド創立者たちが発見したのは、驚くほど豊かな泡立ちをもたらす界面活性剤

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リキッドシャンプーには泡にならなかったケア剤が頭皮に残ってしまう難点があったことから、この界面活性剤を用い、泡立ちのいい固形のシャンプーを作ってみようと考えたのが、誕生のきっかけ。

シャンプーバーの先駆けブランドなだけに、そのラインナップは非常に豊富。

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バリエーション豊かでスイーツのようなかわいい見た目の「LUSH」の固形シャンプーは、紙の包装も不使用の完全パッケージフリーで販売される。写真は左から、ココナツクリームとオーガニックココナツミルクが乾燥した髪に水分をもたらす「ココナイス ケーキ」、ボリュームアップに効果的な「フライウェイ ヘア」ともに55g 1,300円(税込)。LUSHは渡り鳥の生息地である里山を保護する「渡り鳥プロジェクト」を推進しており、フライウェイ ヘアに用いられるシーソルトは渡り鳥の渡来地である里山にある塩田から採取、原材料のアッケシソウは塩沼で育まれたもの。

今回選んだのは頭皮を健康に導く「ソーク アンド フロート」

古くから湿疹やフケに悩む人がケアに用いてきたトショウオイルが配合されています。オレンジのリボンのように見えているものは、マリーゴールドとローズの花びらで、その昔、血行不順により硬くなった頭皮を、これらの花びらを使って洗うことで頭皮が柔らかくなったと言われているのだとか。

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過剰分泌される皮脂のバランスを整え、頭皮を清潔にする働きを活かすトショウオイルを配合した「ソーク アンド フロート」55g 1,250円(税込)。天然原料やエッセンシャルオイルが濃縮されており、原材料はたった8種類というシンプルな設計。

シャンプーバー自体は硬質で、お湯に馴染むのか不安になりますが、濡らすとあっという間に泡がむくむくウッディな香りが心地よく、おのずと深まる呼吸。アロマを楽しみながら、地肌をマッサージするように洗うのは、セルフヘッドスパのようでとても気持ちがいい。モコモコの厚みのある泡ではなく、軽めの泡なので、泡切れがいい点もよかったです。

汗ばむ季節になり、頭皮にベタつきを感じ始めていましたが、ソーク アンド フロートで洗うことで、地肌スッキリ、毛がサラサラに頭皮の痒みが改善されました。潤いを与えるダマスクローズオイルが配合されているため、髪や地肌が乾燥し過ぎた感じはなし。この爽快感は、やみつきになりそう(特に夏場)。

LUSH

脱プラスチックを目標にスタート。サスティナブル意識の高い「ethique(エティーク)」

  • プラスチック使用廃止がブランドテーマ
  • 原料も包装もサスティナブルを徹底
  • 紫色のシャンプーバーはカラーリングの色持ちよし
  • 他のケア剤に影響しない、ほのかな香り

「ethique」は、CEOのブリアン・ウェストが問題視していた海洋汚染や地球温暖化への解決策として、プラスチックボトルを使用しないシャンプーとコンディショナーを作ろう、と立ち上げられたニュージーランド発ブランド。2012年の創設時から、600万本ものプラスチック製造・廃棄の防止に貢献中です。

シャンプーとコンディショナーの美容成分を凝縮・固形化させたことで、たとえばシャンプーバーなら、1個で液体シャンプー350mlボトル3本を削減したことに。さらに生分解性原料をフェアトレードで入手包装には生分解性パッケージを用いるなど、サスティナブルな製品づくりを徹底しています。

日本展開される9種のシャンプーバー、5種のコンディショナーバーから、ハイカラーヘア用シャンプー「トーンイットダウン」、スーパードライヘア/カーリーヘア用コンディショナー「ザ ガーディアン」を選択しました。

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ブリーチした髪やアッシュ系カラー、ミルクティーカラーの褪色や黄ばみ予防をサポートするシャンプーバー「トーンイットダウン」110g2,310円(税込)。ババスオイルとジャスミンオイルが艶を、ビート根エキスがしなやかな髪へと導く。110gとサイズが大きいのも嬉しいポイント。

トーンイットダウンは、ブリーチヘアの褪色・黄ばみ予防用。柔らかいため、ケア剤が手に取りやすいのが特徴です。泡立ちが少なく、汚れが落ちているイメージはつかみにくいものの、1度の洗髪でツルツルキュッとした触り心地となり、ヘアワックス等が落とせたことが感じられるはず。

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「トーンイットダウン」は泡立ち少なめ。しっかり湯洗いを行うことで、1回の使用でも汚れすっきり。

ブリーチヘアに青系のカラーマニキュアを重ねている筆者。一般的なシャンプーを使うとカラーマニキュアは約1週間で褪せ、黄ばみが出て緑がかってくるのですが、トーンイットダウンによって黄ばみが抑えられているのか、普段より青みが長くキープできているような気が(嬉)。

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指通りのよい髪に導くコンディショナーバー「ザ ガーディアン」60g2,310円(税込)。ココナッツオイルとカカオバターが髪と頭皮を潤してくれる。

ザ ガーディアンは、やや固め。ゆえに髪にバーを滑らせながら塗布する必要がありました。塗り込みにやや時間がかかるものの、そのぶん、潤い成分を全体に行き渡らせることができ、艶々で滑らかな仕上がりに

トーンイットダウンはジャスミン香、ザ ガーディアンはライム香。どちらも自然な香り立ちのため、異なる香りを使ってもぶつかり合うことはありません。アフターバスに使うケア剤ともバッティングしないので、強すぎる香りが苦手な人でも安心して使えるはずです。

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食べられる原料を使った「SAVON STORIES(サヴォン ストーリーズ)」で、髪に栄養を

  • 植物性原料は食品レベルの高クオリティ
  • 「バナナ シャンプー バー」の原料はすべてオーガニック
  • コールドプレス製法で熱に弱い美容成分をも固形化
  • 控えめだけれど、細かな泡立ち

ロンドンをベースにするオーガニックスキンケアブランド「SAVON STORIES」のシャンプーバーの特徴は、食品レベルの植物性原料をもとに、コールドプレス製法によって石鹸を作っていること。

コールドプレス製法とは、けん化を非加熱で行い、自然乾燥・熟成させる方法。油脂が劣化せず、保湿成分であるグリセリンをはじめ、熱に弱い美容成分が損なわれにくいメリットがある製法です。

同ブランドのシャンプーバーは、乾燥・ノーマル・オイリーと髪質別に3種類がスタンバイ(写真上、すべて£8.33)。筆者は超ドライヘアゆえ、本来、選ぶべきは乾燥ヘア向けのものなのですが、ノーマルヘア向けシャンプーバーの主原料がバナナと聞き、身近な食材に親近感がわいたことから、思わずそちらを選択。

髪がパリパリになるかな……? との不安は、杞憂に終わりました。バナナは乾燥ヘア向けシャンプーに用いられることがあるほど、栄養に富む原料。本製品にはさらにシアバターホホバ種子油が加えてあり、柔らかさのなかにコシを感じる仕上がりに

デメリットは、泡立ちが控えめなので、ロングヘアや毛量が多い人の場合、バーを何度も濡らして泡立てる必要がある点。ただ、細かな泡が出来上がるので、髪の隙間に泡が入り込めるのか、汚れ落ちは非常にいいように感じました。

ちなみに、ぜひとも原材料リストをチェックしてみてください。バナナはフェアトレードで入手したオーガニックのものであるほか、オーガニック・エキストラバージンオリーブオイル、オーガニック・ココナッツオイル……と、すべての原材料に「オーガニック」と付いていて、その文字群はなんだか圧巻。環境に負担をかけない製品を作りたいという、ブランドの意気込みを感じることができます。

SAVON STORIES

最後に。シャンプーバーの保存には、水切りに優れた石鹸置き等を使ってください。石鹸は界面活性剤の働きにより水に溶けやすい性質があるため、水切りを徹底しないと、保存時に溶けてしまうことがあるのでご用心を! 使用前に切り分け、半分ずつ使うのも手です。

これから使ってみたいもの

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