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京都・花脊の料理旅館「美山荘」の次女として生まれ、小学生のころから旅館のまかないを担当していたという料理研究家の大原千鶴さん。はんなりとした和服姿と京ことばの印象から、懐石料理のような和食が得意な方なのかな……と思いきや、大原さんの料理はプロセスが簡潔で、味つけも迷いなくできるシンプルさが魅力。初めて著書に出合ったときは、毎日作れる和食のお手本をやっと見つけたと、すごく嬉しかったのをおぼえています。

そんな大原さんの新刊、しかもテーマは「つくりおき」ということで、発売前から楽しみにしていたのが『大原千鶴のささっとレシピ 素材のつくりおきで、絶品おかず』(高橋書店)。野菜の切りおき、肉の下味冷凍、すぐに食べられるサンドイッチやスープのストックなど、あると助かる冷蔵・冷凍ストックのアイデアが満載の一冊です。

「素材のつくりおき」で料理が時短に

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著者の大原千鶴さん

2020年の年末に自宅のキッチンを改装し、カウンターごしの“居酒屋スタイル”で食事をすることが増えたという大原さん。楽しい反面、手早く出せる料理の仕込みが欠かせなくなったことが、本書の「ささっとレシピ」を考案したきっかけだったとか。

お子さんたちの帰宅時間が変わることも多く、食材が残ることもしばしば。捨てずに食べるにはどうすればいいか、大原さん流に「持続可能」な食材の使い切りシステムを考えるなかで生まれたのが、料理ではなく「素材のつくりおき」という方法でした。

野菜は、最初に使う時にまとめて、使いやすい切り方にしてストック。意外に時間がかかる(中略)切る時間が1回で済み、かなり時短に。肉や魚と煮るだけ、炒めるだけですぐ1品ができます。

(『大原千鶴のささっとレシピ 素材のつくりおきで、絶品おかず』7ページより引用)

丸ごと買うと余りがちな野菜も、「野菜の切りおきストック」にしておけば安心。

夏と冬の冷蔵保存の目安や、冷凍した食材を解凍するときの注意点まで細かく書かれているので、食材をムダにせずに使い回すことができます

残ったピーマンで作る「すき焼き」が絶品

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つい先日、大袋で安売りしていたピーマンを発見したときも、大原さんの「素材の切りおき」に助けられました。

ピーマンは使いやすい幅の細切りにしておけば、冷蔵保存で夏は2~3日(冬は5日ほど)、冷凍なら1か月ほどおいしく保つことができるそう。あとはじゃこと炒めてもよし、ヘルシーな鶏むね肉と塩炒めにしてもよし。意外な取り合わせに驚いたのは「ピーマンと牛肉のすき焼き」です。

主材料(直径16cmのスキレット1個分)と下処理
ピーマン(細切り)……80g
牛薄切り肉……100g
焼き豆腐……1/4丁(100g)→食べやすく切る
1.牛肉を焼く
スキレットにサラダ油小さじ1を入れ、牛肉を広げて入れて火にかけ、砂糖、しょうゆ各小さじ2をかけ、牛肉にからめる。
2.煮る
牛肉に火が通ったら端に寄せ、空いたところに豆腐、ピーマンを加えて上に砂糖、しょうゆ各小さじ1をかけ、牛肉をのせる。豆腐とピーマンの上下を返しながら、豆腐がしょうゆ色になるまで煮る。あれば実山椒(水煮または市販品)を加えて少し煮て火を止める。

(『大原千鶴のささっとレシピ 素材のつくりおきで、絶品おかず』32ページより引用)

牛肉はかたくならないよう低い温度で焼くことや、食材のそれぞれに味つけをすることも、おいしく仕上げるコツだと大原さん。

ピーマンのジューシーさとほんのりした苦みで牛肉の甘さと旨味が引き立って、主材料3つとは思えない奥行きのある味わい。調理時間は15分ほどなので、おなかがすいたときにさっと作れる手軽さも最高でした。

「素材のつくりおき」がくれる、ささやかな幸せ

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冷蔵庫、冷凍庫を開けるたび、「あぁ、誰かが私のために仕込んでおいてくれた。ありがたい」と幸せな気持ちになれる。(中略)幸せとはそんなささやかなことの積み重ねで出来ているのだ。

(『大原千鶴のささっとレシピ 素材のつくりおきで、絶品おかず』3ページより引用)

仕込んだのは自分では……などと野暮なことは考えないのが幸せへの近道、と大原さん。作りおき料理よりも気軽で、幸せ貯金にもなる「素材のつくりおき」、時間があるときの習慣にしたいと思います。

コツを知ればもっとおいしい

大原千鶴のささっとレシピ 素材のつくりおきで、絶品おかず

image via Shutterstock

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