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もうなんにも考えたくない。でも食事は作らないと──そんなときの救世主は、炒めて、煮立てて、かけるだけでできあがる「スープかけごはん」。スープ作家の有賀薫(ありが・かおる)さんが、今を生きる人を支える新しい料理を提案してくれました。

今ほしいのは、台所に立つ人をつかれさせないレシピ

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たたきごぼうと鶏肉のバタークリームスープ(『なんにも考えたくない日は スープかけごはん で、いいんじゃない?』より)

台所に立つ人がつかれてしまうくらいなら、献立なんて考えなくていい。何品も作らなくていい。

(『なんにも考えたくない日は スープかけごはん で、いいんじゃない?』3ページより引用)

有賀さんの著書『なんにも考えたくない日は スープかけごはん で、いいんじゃない?』(ライツ社)は、こんな提言から始まります。

本書で有賀さんが光を当てたのは、今まで「行儀が悪い」とされてきたスープかけごはん、いわゆる「ねこまんま」です。

鍋ひとつ、器ひとつで完結する「ねこまんま」は、本来なら食べやすく、栄養もある食事を手軽にとれる優れた食事のスタイルです。それを「品がない」「マナー違反」とする感覚があるのは、主食である「お米」を神聖視してきた日本らしい考え方なのかもしれません。

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でも有賀さんの言うように、「時代は令和」。「男も女も働きながら日々の生活をととのえる上で、『ごはんに具材の入った汁をかける』という手段は、手間や時間という点でも、理にかなっている」という言葉には、しみじみ頷いてしまいます。

急いでごはんを作りたいときでも「汁物がないと物足りない」という謎の呪縛がある私にとって、本書のアイデアは目からウロコ。野菜がたくさん食べられる、夜遅くても罪悪感がない……など、体にやさしいレシピが多いのも嬉しいポイントです。

驚きのおいしさ。3つの食材で作る傑作スープカレー

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クリームチーズとにんじんと卵 たどり着いた究極のスープカレー(『なんにも考えたくない日は スープかけごはん で、いいんじゃない?』より)

本書を手に取り、真っ先に作ってみたのは「クリームチーズとにんじんと卵 たどり着いた究極のスープカレー」。メイン食材は3つだけ、ちょっと丁寧にインスタントの袋麺を作るくらいの時間でできるのですが、これがびっくりするほど美味でした。

クリームチーズとにんじんと卵 たどり着いた究極のスープカレー

<材料(2人分)>
・にんじん(千切り)……大1本
・卵……2個
・クリームチーズ……30g
・オリーブ油……大さじ1と1/2
・水……450ml
・A 塩……小さじ2/3、カレー粉……小さじ1

<作り方>
1.フライパンに油(大さじ1)を中火で十分に熱し、さっと溶いた卵を流し入れる。全体を大きくかき混ぜ、軽く火が通ったら一度取り出す
2.同じフライパンに再び油(大さじ1/2)を熱し、にんじんを入れて中火で3~4分しんなりするまで炒める。水を加え、煮立たせたらAを加える。最後に1の卵を加えて火を止める
3.ごはんにスープをかけ、クリームチーズをのせる

(『なんにも考えたくない日は スープかけごはん で、いいんじゃない?』23ページより引用)

ひと口食べてみて、「えっ?」と目が丸くなるおいしさ。いい意味で、手順の簡単さと味の完成度のバランスがおかしいのです。ニンジンの濃い甘みと旨味、そこにカレーのスパイシーな香りとクリームチーズの酸味が効いていて、あっという間に食べ終わってしまいました。

考えてみると、これまでスープといえばブイヨン、コンソメ、出汁など、味のベースが不可欠だと思い込んでいた気がします。

そういったお助けアイテムを使わずに、食材と塩、オイルの力だけで引き出されたスープは、おだやかなのに鮮烈な味わい。疲れた身体に吸い込まれるようになじむのは、ごはんにスープの滋味が染みこんだ「スープかけごはん」ならではです。

新しいおいしさが「料理のワクワク」を思い出させてくれる

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焼きベーコンのカルボナーラかけごはん(『なんにも考えたくない日は スープかけごはん で、いいんじゃない?』より)

すっきりした味わいのものだけでなく、「焼きベーコンのカルボナーラかけごはん」など、魅惑的なこってり系のレシピもあります。とはいえこちらも、生クリームではなく牛乳・卵黄・粉チーズで仕上げることで、朝に食べたくなる「軽い」カルボナーラになっているとのこと。

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ふわふわ淡雪のしょうがスープ(『なんにも考えたくない日は スープかけごはん で、いいんじゃない?』より)

「ふわふわ淡雪のしょうがスープ」は卵白と鶏肉で作るスープかけごはんなので、カルボナーラで余った卵白も無駄なく使うことができます。泡立てた卵白が口の中で溶けていく……という、シンプルながら新感覚のスープかけごはんです。

簡単な手順なのに、想像を超えた新しい味に出合えるのが本書の魅力。実験をしているようなドキドキ感もあって、久しぶりに「料理のワクワク」を思い出すことができました。

「なんにも考えたくない」日は、きっと心が安まるごはんを誰よりも自分が食べたい日。ぜひ本書を参考に、ほっとするひと皿を作ってみてください。

簡単・おいしいがいちばん!

なんにも考えたくない日は スープかけごはん で、いいんじゃない?

image via Shutterstock

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