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今回のテーマは、サスティナブルなスニーカー自然由来素材リサイクル素材を使って、高機能でありながら耐久性に優れた3足をご紹介します。

大量生産、大量廃棄。負の連鎖を断ち切るべく、シューズ業界もサスティナブル化

余剰在庫や衣類廃棄量の問題から、アパレル業界におけるサスティナブル化は急務の課題といわれています。これはシューズメーカーにおいても同じで、シューズは世界で年間250億足も生産されているものの、売れ残りのなかでリサイクルされるものはごくわずか。90〜95%は埋め立て処理されており、その数は地球の陸地の約95%(オーストラリアを除く地球の陸地面積)を1年で覆ってしまうほどの量。

なかでもスニーカーは、クッション性や安定性の面から、石油に頼った製造であることが問題視されてきました。よって、いかにサスティナブルな靴を生産するか、スニーカーメーカー各社は、いま、しのぎを削っています。

脚をサポートし、耐久性に優れ、それでいて環境に優しいプロダクトであることを目指したい! 先端技術や素材を積極的に取り入れている、ヴィーガンスニーカーともいうべき、すばらしいブランドや商品をピックアップしました。

天然ゴムの汎用性から生まれた、「EUYEN」の土に還るアウトソール

まずご紹介するのは2020年にフランスの展示会でデビューを果たした日本ブランド「EUYEN(ユーエン)」。同ブランドのポイントとなるのが、天然ゴム発泡素材

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高い反発性と優れた衝撃吸収性、グリップ性を誇る最上級モデル「EU001-ICHI」20,900円(税込)。ニットアッパーにはオーガニックコットンを採用し、染色は花や植物からできる天然顔料を使用。

一般的にスニーカーのミッドソールには軽量・高反発性などの特長から、EVA(ビニル系)素材が多く使用されます。しかし前述のように、廃棄されたシューズはほとんどが不燃ゴミとして埋め立て処理をされるわけですが、EVAは埋め立てにより揮発性有機化合物(VOC)を大気中に放出し、大気汚染や地球温暖化などの悪影響を及ぼすことが問題視されてきました。

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世界には靴のはけない子どもが3億人存在し、素足ゆえに怪我をして大病を患う子どもが多くいる。EUYENは、2030年までに、売上金の一部で発展途上国に靴製造工場を設立し、産業と雇用を生むことで、彼らに安心安全な生活を提供することを目標とする。

そこでEUYENは、約3年の月日をかけ、特殊技術により天然ゴム発泡素材をはじめとした素材や技術を発掘。有害物質を一切使用せず、温室効果ガスを発生させる心配はなし。しかも生分解性が高く、土に還すことができるのです。

「天然ゴム発泡素材を用いたアウトソールは、人間と動植物の生命に限りなく安全で無害であると同時に、軽量で、防滑性クッション性まで担保しています」(ミライェ代表・木下裕さん)

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アッパー材などその他のパーツに用いる素材も、すべてを天然由来にこだわる徹底ぶり。天然ゴムを発泡させる、植物のみで染色を行う。これらのトライ&エラーの繰り返しにより、地球環境への負荷の低い、究極の一足が誕生しました。

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独自撥水加工で、肌触りと通気性のよさを両立。「Allbirds」の走れるシューズ

続いては米国発「Allbirds(オールバーズ)」。サッカー元ニュージーランド代表だったティム・ブラウンが、ケミカルな素材を用い、目立つ色やロゴを配したスニーカーのあり方に疑問を抱き、バイオテクノロジーを専門とするジョーイ・ズウィリンジャーと組んで立ち上げたブランドです。

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ニュージーランドメリノ・カンパニー認証のメリノウールをアッパーに採用した「Wool Dasher Mizzle」17,500円(税込)。従来、撥水に用いられたフッ素系界面活性剤は環境や人体への影響が懸念されてきたことから、自社独自のフッ素化合物にてシールド加工。メテオライト(グレー)、ノバ(グリーン)のほか、2月中旬には追加カラーを展開予定。

シューレースを再生プラスティックに、その他、全パーツには自然由来素材を採用し、素材・製造・洗濯・廃棄のプロセスで排出されるカーボンフットプリント排出量ゼロを目指すなど、サステナブルな商品開発に努めること4年。2020年に待望のランニングシューズ「Tree Dasher(ツリーダッシャー)」を発売。環境負荷を下げながらも、ランナーが必要とする要素を入れ込むべく、50人以上のプロ・アマレベルのランナーテスト経て生まれた同商品は、ミッドソールのクッション感が絶妙と評判。

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Wool Dasher Mizzleのミッドソールには二重構造で高反発なサトウキビ由来のSweetFoam™を、同アウトソールには森林管理協議会認証の天然ゴムを採用。最高のクッション性と、濡れた路面をもしっかりグリップする安定性が魅力。

そして2021年1月、Tree Dasherをさらに進化させた「Wool Dasher Mizzle(ウールダッシャーミズル)」が誕生。アッパー素材を、ブランドの象徴的存在であるメリノウールへと変更。水に弱いウールのデメリットを解消するため、バイオベースの撥水加工を採用したパドルガード®と呼ばれるフッ素化合物を使用しないシールド加工を施しました。これにより、外側は水を防ぎつつ、肌に触れる内側はソフトな風合いをキープ。ウールならではの通気性のよさドライなはき心地を両立させています。

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ベストセラー・モデルをヴィーガン設計に。内側から変わる「アディダス」

熱狂的なファンが多い、「アディダス」のアイコニックなモデルも進化を遂げています。それは「スタンスミス」

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同社は「END PLASTIC WASTE」をコミットメントとして掲げ、2024年までに全商品でバージンポリエステルの使用を廃止し、リサイクルポリエステルに代替することを目標としています。その一環として、2020年夏には定番10モデルを環境負荷の少ない素材でアップデートさせたサスティナブル・コレクション「アディダス オリジナルス」を発表しました。

この流れから、2021年、アディダスはベストセラー・モデルであるスタンスミスを、ヴィーガン設計とすることを宣言。

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「定番が変わらなければ、常識は変えられない」との考えからサステナブルなシューズへと変わったスタンスミス。愛されてきたルックスは不変。写真はSTAN SMITH(FX5502)9,889円(税込)※自店販売価格。

内側に高機能リサイクル素材・プレミアグリーンを、アッパーにはレザーと同じルックスかつ手触りの日本製リサイクルポリエステルを、そしてアウトソールには天然ゴムやリサイクルラバーを採用。また、レースやライニング、インソールに至るまで、ディテールはすべてリサイクル素材に。つまり象徴的なシルエットはそのままに、内面を変化させたのです。

SDGsが身近になったいまの時代に向け、再構築されたスタンスミスを、ぜひ、ワードローブに加えましょう。

アディダス

スポーツをする人だけでなく、アスレジャーに代表されるように、ファッションとしてのスニーカーファンも多数。愛用者が多く、たくさん生産されるものだからこそ、環境負荷が少ないというのは、モノ選びの大きなポイントとなるはずです。

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