本格的な冬に備えて、洋服も靴も衣替えをしたいのに、何から手をつけたらいいのかわからないという人は少なくないかもしれません。

忙しさに比例して、家の中や自分の部屋が汚くなっていき、たくさんのモノに囲まれ、掃除をする時間も取れずに気分まで落ち込んでしまう。そんな悩みを持つ人も多いのではないでしょうか。

なぜ私たちはモノを捨てられないのでしょう。そもそも、片づけるためにはどうしたらいいのでしょうか。その答えを『心の中がグチャグチャで捨てられないあなたへ』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)に求めてみました。

現代人はガラクタ中毒にかかっている

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「生活に彩りを添えるモノはあれば便利だけれど、現代人の生活はいらないモノであふれている」と語るのは、アメリカの片づけコンサルタントであるブルックス・パーマーさん。たしかに、気がつくと必要のないモノに囲まれがちです。

そこには、モノを持つことで満たそうとする人間心理が関係しているそう。多くの人はモノを所有することによって心の中のむなしさを覆い隠そうとしているのだとか。必要なくなっても捨てられなかったり、落ち込んだときに買い物に走ったりするのは、この心理が原因なのですね。

でも、欲しいモノを手に入れるとうれしいというのも事実。「しかし、その喜びの本当の理由は、モノを手に入れたことによるのではなく、欲しくてたまらないという苦痛から解放されたことによるのです」とパーマーさんは言います。つまり、モノ自体から喜びを得たのではなく、物欲を一時的に満足させただけ。モノを所有することで気を紛らわせているということなのです。

こうしてモノを溜め込みがちな現代人は、ガラクタ中毒にかかっているのだそう。所有物の中に自分らしさを求めようと躍起になって、不要なモノに執着しているのだとか。

モノはなんらかの機能を果たしてこそ価値があります。モノは生活を便利にしたり楽しみを増やしたりするのが使命です。したがって、そういう使命を果たさなくなればガラクタになります。そんなものをいつまでも保管しているなら、ガラクタのために働いているようなものです。

『心の中がグチャグチャで捨てられないあなたへ』42ページより引用

パーマーさん曰く、「内面のガラクタが外面のガラクタをつくり出す」とのこと。不要なモノを捨てられないのは、執着やプライド、過去のしがらみなど、心理的要因が大きいそう。それらを捨てない限り、心の中も整理できず前に進むことはできないと言います。

捨てたほうがかえってスッキリすることも

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では、どうやって捨てていけばいいのかというと、まず周囲のモノの価値を検証することから始めます。「そのために自分が窮屈な思いをして、生活が犠牲になっていないか?」と問いかけてみるのがおすすめ。心を開いてモノの価値を見極め、もし価値がないとわかったら、今すぐ捨てましょう。

パーマーさんによると「いくら高価なモノでも役に立たなければガラクタ」なのだそう。幸せをもたらしてくれるからではなく、人は値段が高かったという理由でモノの価値を見いだそうとする傾向があり、値札やブランド名で満足してしまっている例が多くあるのだとか。

たとえば、ある夫婦のガレージを片づけたときのこと。たくさんのスポーツ用具が「値段が高かったから」という理由で雑然と置かれていたため、「捨てたほうがかえってスッキリする」とパーマーさんは提案。すると、見るたびにお金を無駄にしたことを後悔することになっていた夫婦は、安堵したのだそう。

また、金額ではなく、劣等感が招くガラクタの山の例も。たくさんの本を所有する女性は、自分のことをいつも頭が悪いと感じていて本を読まなければならないという強迫観念を抱いていました。しかし大半を読んでおらず、本の山を見るたびにかしこくなったと感じるどころか、「自分は頭が悪い」という思い込みが強くなる結果に。これでは本末転倒ですね。

捨てるポイント

  • 「せっかく買ったのに使っていないものはないか?」と自分に問いかけてみよう。それは、生活を快適にしてくれるはずの電化製品や誰かに推薦してもらった本、あるいは、気まぐれで買った服かもしれない。
  • それを自宅の別の場所に置いてみる。もしそれをその新しい場所で使わないなら、または、その決定を先延ばしにするなら、それはガラクタだ。

『心の中がグチャグチャで捨てられないあなたへ』65ページより引用

このように、心の状態が目の前のガラクタを生んでいるなんて驚きです。周囲のモノの価値を見つめ直してみたくなりますね。

過去にしがみつく必要はない

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このほかに捨てられないモノのひとつとして、過去の思い出の品があります。「この習慣の根底にあるのは、すばらしい瞬間はめったにないから、それを保存して絶えず思い出す必要があるという思い込みです」とパーマーさん。

多くの人は人生に行き詰まると、過去の思い出に浸って現在のつらさを忘れようとするそう。しかし、過去に生きることは人生全体にとってマイナスになりかねません。なぜなら本当に大切な「今」に意識を向けることができなくなり、物事がますます悪くなっているように思えて、過去への執着がよりいっそう強くなるから。

もしモノが本当に喜びを与えてくれるなら、現在も使っているはず。でもなぜ使っていないのかというと、「もう役に立たないことを心の奥底で知っているから」だとパーマーさん。

役に立たないモノにしがみついていることに気づけば、それを手放すきっかけになります。言い換えれば、外面のガラクタの根源である内面のガラクタを処分するということです。ガラクタの根源を断ち切ってしまえば、外面のガラクタを処分することは容易になります。

『心の中がグチャグチャで捨てられないあなたへ』78ページより引用

本書にはさまざまな例が紹介されており、その中に服の山に囲まれて生きていた女性の話があります。恋人との思い出が詰まった服を捨てられないのを発端に、それを覆い隠すべく服の山ができていたのだとか。

何年も彼女を悩ませ続けた悲しい別れを思い出す服を処分することで、スッキリ平和な状態になったそう。思い出の品を処分できるのは自分だけ。過去にきちんと向き合うことも大切ですね。

もしも捨てるのを迷ったら?

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しかし、どんなモノでも、捨てるべきか保管するべきか迷うこともあると思います。そんなときは、次の3つの質問を自分に投げかけてみるといいそう。

・それがあることで快適さを感じるか?
生活を向上させてくれるか?
思い出を美化するために、それにしがみついているのではないか?

心の中のガラクタを捨て、過去を生きるのではなく、今を楽しめるようになりたいですね。

巻末には、ガラクタの判断基準や家の中をスッキリさせる方法、捨てづらいときの対処法などが簡潔に書かれたガラクタ処分の基本方針がついています。

ガラクタ処分のすばらしいところは、いったん始めると勢いがつくこと。今こそ、心と生活を乱しているガラクタを捨て、自分にとって本当に大切なものを発見し、本来の生活を取り戻してみてはいかがでしょうか。

──この記事は、 2020年3月9日の記事の一部を再編集して掲載しています。

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