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「サバ缶」ブームで注目された、健康に良い油こと「オメガ3系脂肪酸(オメガ3)」。心疾患の予防など、さまざまな働きが期待できるといわれます。効果を得るには毎日適量を摂り続ける必要がありますが、サバ缶を毎日食べるのは大変。いつのまにか買うのをやめていた、という人も多いのではないでしょうか。

しかしオメガ3の大切さを説いた『いのちを長持ちさせるひとさじの油 ー いつまでも若々しく健康でいたいなら、オメガ3を摂りなさい!』(アスコム)によると、日常的にオメガ3を摂る習慣がない人は、さまざまな不調のリスクが高まるとのこと。オメガ3の不足により、体内の「油バランス」が崩れてしまうことがその原因です。

体内の「油バランス」の悪化が不調の原因に?

本書は、看護師歴20年を経てオメガ3の重要性に気づき、オメガ3オイルの啓蒙活動を行うオメガさと子さんの著書。監修はオメガ脂肪酸の有用性を20年以上にわたって研究する守口徹教授(麻布大学生命・環境科学部教授)が手がけており、オメガ3の働きがわかりやすく解説されています。

健康に気を遣っていても、加齢とともに病気のリスクは上がるもの。その理由のひとつになり得ると著者が語るのが、体内の「油バランス」の悪化です。

ベストな体を維持するには「油」から

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「体が悪い油バランスになっている」とは、正確にいうと「体を構成する油脂のバランスが悪くなっている」ということ。私たちが動植物から摂取した油脂は「脂質」と呼ばれ、タンパク質や炭水化物と並ぶ3大栄養素のひとつになっています。そのバランスが崩れれば、どんなに体にいいものを食べ、運動をしても不調は改善せず、老化も進むと著者は指摘します。

なぜなら、37兆個ある人間の細胞を包む膜は、じつはほとんどが油でできているからです。脳に至っては、水分を除いた全重量の65%が油です。つまり、私たち人間は、油でできているといっても過言ではないのです。

(中略)古くなった油を新しい油に置き換えていけば、私たちはいつまでもベストな状態の身体を維持することができます。これらのことは、昨今の最新医学や栄養学の世界で、ようやく解明されつつあります。

(『いのちを長持ちさせるひとさじの油』11ページより引用)

体の「油バランス」が悪くなると、人間を形づくる細胞膜は硬くなります。栄養を摂取しても細胞間でうまく受け渡すことができず、食べているのに栄養不足……ということになりかねません。

神経細胞の先端にあるシナプスの膜も油でできている脳においては、「油バランス」の影響はさらに大きくなります物忘れがひどくなる、気分が落ち込む、イライラするなど、脳の機能低下につながると著者は警鐘を鳴らします。

解決策は「毎日スプーン1杯のオメガ3オイル」

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体内の「油バランス」を整えるためには、一体どうすればよいのでしょうか。

著者によると、その方法はとても簡単。本書のタイトル通り「毎日スプーン1杯のオメガ3オイル」を摂るだけです。

油は脂肪酸でできています。脂肪酸には、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸があり、不飽和脂肪酸はさらに「オメガ9」「オメガ6」「オメガ3」に分類されます。

私たちの細胞膜を柔らかくする「良い油バランス」を実現するには、「オメガ3」である、えごま油、アマニ油、魚油などの摂取が重要です。

(『いのちを長持ちさせるひとさじの油』17ページより引用)

オメガ3を摂り、オメガ6を控えるべき理由

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オイルを選ぶときに大切なのは、「摂りすぎの油を控え、良い油を選んで摂る」こと。油脂のなかでも、バターや牛脂、ココナッツオイルなどは飽和脂肪酸。不飽和脂肪酸では、オリーブオイルがオメガ9、サラダ油やごま油がオメガ6にあたります。

これらのうち、飽和脂肪酸は控えめに……というのはよく言われること。不飽和脂肪酸に含まれるオメガ9はエネルギー源になりますが、じつは体内でつくれる脂なので、食事からたくさん摂る必要はありません。

積極的に摂りたいのは、体内でつくれないオメガ6とオメガ3。しかも、オメガ6とオメガ3の比率を2対1にすることが重要だと著者は語ります。

福岡県久山町で40歳以上の町民3000人の協力のもと、血液中のオメガ6とオメガ3の割合を調査したところ、その比率が1~2対1までの間は、心臓病の死亡リスクが低いことがわかりました。

そして、比率が2対1を超えてオメガ6の割合が増えれば増えるほど、心臓病の死亡リスクが急速に高まることがデータで明らかになっているのです。

(『いのちを長持ちさせるひとさじの油』66ページより引用)

オメガ6のなかでもごま油は健康によさそうですが、摂りすぎるとオメガ6に含まれるアラキドン酸の働きにより、細胞に炎症が起きやすくなるのだそう。炎症は花粉症やアトピー性皮膚炎などのアレルギーの一因であり、脳に炎症が起きれば認知症の原因にもなり得ます。

それを抑えてくれるのが、オメガ3に含まれるEPAEPAにはアラキドン酸の暴走を止め、体内の炎症を抑制する働きがあるからです。

なぜ日本人に「オメガ3」が必要なのか

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もともと日本人は魚をよく食べる習慣があり、さばやいわしなどの青魚にはオメガ3の一種であるEPAやDHAがたくさん含まれていました。

しかし食生活の西洋化によって、1988年ごろから魚介類の摂取が減り始め、2009年には魚介類と肉類の摂取量が逆転。認知症や生活習慣病にかかる人が増えたのも、日本人が魚食から肉食に変わっていった時期と重なっていると著者は指摘しています。

驚くことに、現在の日本人のオメガ6とオメガ3の摂取比率は、平均5対1まで差が広がっているのだそう。自分の食生活を振り返っても、日常的に使うのはごま油かオリーブオイルで、魚よりも肉料理をメインにしがち。オメガ3が不足していることは明らかでした。

著者によると、オメガ6を減らしてオメガ3を意識的に増やす生活をしていけば、体内の油バランスは自然に「良い油バランス」に近づいていくといいます。本書ではえごま油、アマニ油をいつもの食事にプラスする方法や、おいしく食べられる食材の組み合わせ、オメガ3を使ったドレッシングやタレなども紹介されています。

数年前までは、油といえば体に悪いもの、控えるべきものというイメージでした。しかし、今や健康長寿は「体を良い油バランスに変えること」と切り離せない、と著者。油の摂り方の常識も、そろそろ更新しなくてはいけないようです。

魚をおいしく食べよう!

いのちを長持ちさせるひとさじの油―いつまでも若々しく健康でいたいなら、オメガ3を摂りなさい!

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