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なぜ「劣化」という言葉が使われるのか。嫉妬心の裏返し?

「おばさん」て誰のこと?

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田中ひかる

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「おばさん」をキーワードに、揺らぐ年齢観や女性の価値観の変化を、歴史社会学者の田中ひかるさんがつづる連載第3回目、キーワードは「劣化」です。

「機械とか家、壁とかに使え!」

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芸能界には「きれいな40代」「きれいな50代」がたくさんいます。彼女たちも人間なので、当然ながら少しずつ老化していきます。その容貌の変化に対し、おもにネット上で「劣化」という言葉が使われるようになったのは、10年ほど前のことです。

映像技術の進歩により、シワやシミ、場合によっては毛穴までもがテレビ画面に鮮明に映し出されるようになり、さらにインターネットの普及によって、その一瞬の映像が切り取られ、「劣化」画像として拡散されるようになりました。

こうした状況に対し、爆笑問題の田中裕二さんがラジオ番組で、「(劣化という言葉が)アイドルとか女優さんに使われるじゃないですか。どんだけ人を傷つけているか、自覚して使え」「機械とか家、壁とかに使え! 人間の顔が劣化したというのは全然わかってない!(※1) と真っ当な意見を表明したのは2015年のことです。

同時期、GACKTさんはブログ(※2) に、こう書いています。

世の中では歳を取った役者やアーティストに対して【劣化】なんて言葉を使って表現する輩もいる。メディアも劣化劣化と騒ぎ立てる。自分たち自身の顔のことは置いといて、よく他人のことをそこまでボロカスに言えるよな・・・って思うことだって多い。(中略)そりゃ、歳は取ってるわけだから、昔に比べりゃシワだって増えたさ。でもな。歳を取ること=劣化じゃない。(中略)今のボクは【劣化】と書くよりも凄まじく【烈華】のさなかだよ。

最近では、「劣化」呼ばわりされた芸能人自身が、ツイッターやインスタグラムで不快感を表明するようになりましたが、「劣化」関連の記事や投稿は減りません。それだけ需要があるのでしょう。

「劣化」が使われるようになった理由

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こうした風潮について、ライターのブログウォッチャー京子さんは、「もともと『劣化』は生き物に対して使うのが妥当な単語ではなく、工業製品など無機物の性能が衰えていくことを示すが、整形手術などの『お直し』と呼ばれる行為により手を加えられた顔=工業製品のようなもの、と見なされて、『劣化』なるワードが定着したのかもしれない」 (※3)と書いています。

また、エッセイストの能町みね子さんは、「女性の美に対してたゆまぬ努力している“女性”こそ、笑った瞬間のしわを指摘され、劣化といわれてしまう。美しさを磨こうとする人が、嫉妬心を持つ人にアラ探しされてしまうんでしょうね」 (※4) と、「嫉妬心」の存在も指摘しています。

仮に整形などの美容医療の手を借りていたとしても、それはその人の自由です。「若作りはイタい」「自然に年を重ねるべき」と考えることもまた自由ですが、他人に強いることではありません。それが束となり、同調圧力として働く社会は、「生きづらい社会」と言えるでしょう。


※1 TBSラジオ「JUNK爆笑問題カーボーイ」での発言
※2 GACKTブログより(現在はブログリニューアルにより記事なし)
※3「篠原涼子の『加齢』か『劣化』か論争~女性の老いは罪なのか?」『wezzy』
※4「能町みね子氏と辛酸なめ子氏『劣化』と『奇跡』の意味語る」『NEWポストセブン』2015年10月20日配信

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田中ひかる

田中ひかる(たなか・ひかる)さん
歴史社会学者。1970年、東京都生まれ。女性に関するテーマを中心に、執筆・講演活動を行っている。近著『明治を生きた男装の女医―高橋瑞物語』(中央公論新社)ほか、『「オバサン」はなぜ嫌われるか』(集英社新書)、『生理用品の社会史』(角川ソフィア文庫)など著書多数。公式サイト

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