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新型コロナ禍で、わけもなく涙が出る、気分が落ち込む。どう対処すれば?

カラダ戦略術

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増田美加

涙がでる女性

自分の体をきちんと知ろう! がテーマの連載「カラダ戦略術」。前回は「眠りのメカニズム」について、お届けしました。今回は、「メンタルヘルス」について、女性医療ジャーナリストの増田美加がお伝えします。

コロナ禍にあって今年の五月病は……

憂鬱な気分

五月病を起こしやすい季節になりました。春は、新しい環境への期待があり、やる気があるものの、その環境に適応できないでいると、人によってはうつ病に似た症状が5月のゴールデンウィーク明けころから起こることが多いため、こう呼ばれています。

特に今年は、新型コロナの影響があり、長い自粛期間や休みのために、生活環境が大きく変化し、新しい生活様式や環境になじめないまま、自粛明けの生活にストレスを感じる人が多くなることも予想できます。

五月病は、医学的な診断名としては、「適応障害」あるいは「うつ病」と診断されます。特に女性は、女性ホルモンの影響でメンタルの揺らぎがあり、そのため、うつになる人は男性より2倍多いと言われています。

厚生労働省 うつ対策推進方策マニュアル

女性のメンタルの揺らぎには理由がある!

気持ちが沈む、華やぐ気分やワクワク感が失われる、意欲や集中力が減退する、そして、あるとき突然、訪れる漠然とした老いへの不安や焦燥感……。

ちょっとしたきっかけで、メンタルの揺らぎを経験する女性は、少なくありません。特に更年期には、人生の節目ともいえる環境の変化が訪れます。このメンタルの揺らぎは偶然起こるわけではなく、理由があります

その理由とは、女性ホルモンの波や急激な減少と、更年期女性が置かれた心理的、社会的背景の複雑な絡み合いです。

更年期に、卵巣機能が低下すると、女性ホルモンは急激に減少します。閉経すると、ほぼゼロに近づき、卵巣からはほとんど分泌されなくなります。女性ホルモンが減ると、脳の視床下部、下垂体は、卵巣からのエストロゲン分泌を促そうと、性腺刺激ホルモンをどんどん分泌します。

けれども、卵巣の働きは衰えているため、いくら刺激されても女性ホルモンは分泌できません。そのため、脳の中枢はパニックに陥ります。

その脳の中枢は、体温、発汗、呼吸などをコントロールしている自律神経の中枢でもあるため、自律神経のバランスも崩れてしまいます

エストロゲンの欠乏とともにセロトニンも低下

イライラ、不安、悲しみ、無気力などの感情があらわれる女性

それだけではありません。女性ホルモンのエストロゲンが急激に減少することで、脳内の神経伝達物質セロトニンが不足します。

セロトニンが不足すると、心の安定が崩れ、イライラ、不安、悲しみ、怒り、恐怖、緊張など、さまざまなネガティブな感情が暴走しやすくなり、うつ病の症状にも重なります。

うつ病は、男性よりも女性のほうが2倍多いことから、女性が脳内でセロトニン不足を起こしやすいこともわかります。

エストロゲンには、海馬におけるセロトニン神経系ほかの働きを助けて、不安や焦燥感を抑える作用があります。エストロゲンとセロトニンは、同調して動くため、エストロゲンが欠乏すると、セロトニン神経の機能が低下して、セロトニンも減少するのです。

女性ホルモンが急激に変化する時期は、うつ病をはじめ、メンタルの不調を起こしやすいのです。

メンタルに影響するセロトニンとは?

セロトニンは、ドーパミンやノルアドレナリンと共に、脳内で働く重要な神経伝達物質です。セロトニンの合成能力には、男女差があります。女性は、男性より合成能力が低いという特徴が。

脳内で、精神安定の働きを担うセロトニンが不足すると、イライラ、不安、悲しみ、無気力などの感情が現れます

また、顔の表情が暗くなったり、姿勢が悪くなるなどの影響も現れます。

女性はホルモンの荒波を人生で何度も経験する

卵巣と女性ホルモン

女性ホルモンが急激に変化するのは、特に妊娠中、産後、更年期です。妊娠中と産後にうつ傾向のあった人は、更年期うつのリスクが高くなるので注意が必要です。

女性は一生のうちで初潮、月経周期で起こるPMS(月経前症候群)PMDD(月経前不快気分障害)妊娠出産後更年期と、女性ホルモンのバランスが著しく変化する時期をたくさん経験します。

ホルモンバランスの変化は、セロトニンの分泌量の変化にも影響します。さらに、女性特有の心理・社会的背景もあります。これらが複雑に絡み合って、女性のうつ病リスクを上げているのです。

卵巣機能の低下によるエストロゲンの減少、さらにエストロゲン減少によるセロトニンの不足、これらホルモン分泌の変化が大きく起こるのが更年期です。

だから、更年期には、わけもなく涙が出る、気分が落ち込むなどの症状を多くの女性が感じるのです。

更年期に起こる「うつ病」は気づきにくい……

更年期障害の症状は、百人百様で全身にわたっていて、症状の軽いものはほとんどの女性が体験します。例えば、めまい、頭痛、のぼせ、ほてり、多汗、動悸、肩こり、腰痛、睡眠障害、冷え、食欲不振、疲労感、イライラ、抑うつ、腟の乾燥などです。

これらの更年期障害の症状は、うつ病の症状とよく似ています。そのため、うつ病になっていても気づかず、見過ごされやすいのです。

心身の不調が長く続くときは、うつ病ではないかと疑ってみることも大切です。閉経周辺の時期にいる女性は、うつ病の初発や再発のリスクが高いと言われています。

うつ病の一般的な症状は、抑うつ気分、興味や喜びの喪失、意欲活力の低下、集中力の減退、自己評価と自信の低下、食欲低下、睡眠障害などです。なかでも特に、強い焦燥感、何をしても楽しくない、興味がわかないなどの抑うつ症状、睡眠障害が2週間以上続くときは、うつ病の疑いがあります。

PMS(月経前症候群)やPMDD(月経前不快気分障害)、産後うつ病の既往のある女性は、更年期うつになりやすいという報告もされています。

また、ストレスに対して弱い人、完璧主義で几帳面な人、相談相手がいない人は、うつになりやすいタイプとも言われています。

少しでも不安がある場合は、なるべく早く、精神科、心療内科の専門医のいる医療機関を受診しましょう。

こんな状況なら、要注意です!

落ち込む女性

更年期障害のうつっぽさなら、多くの女性が経験する症状です。けれども、その先のうつ病に移行させないために、こんな状況にある人は、より注意が必要です。不安がある場合は、早めの受診を心がけましょう。

妊娠中や産後にうつの経験がある

PMS(月経前症候群)やPMDD(月経前不快気分障害)、妊娠中、産後うつ病の経験がある人、過去うつ病にかかったことがある人は、更年期にうつ病が起こる可能性が高くなるので注意します。更年期の症状をもつ人の中で、焦燥感が強い、感情の抑制が効きにくい、強い不安やいら立ちがある、身体症状が強く出るなどの症状がある場合は要注意です。

ストレスに対する弱さ

生育歴や人生経験のなかでストレスに弱い素因やもって生まれた体質があると、きっかけになるようなストレス環境(子どもの巣立ち、親との離別、長期の闘病、進行中の夫婦問題など)にあるとき、素因、体質とストレスが複合的に作用して、心の安定を失わせ、うつ病などの精神疾患にかかりやすいと言われています。

思考グセがある

「~すべき」と考えたり、「オールORナッシング(すべてか無か)」の選択を迫るような考え方をしていませんか。白黒決着をつけるような完璧主義で、几帳面な思考があると、何かのきっかけがあると、うつ病などに移行しやすいと言われています。自分の思考グセに気づいて、考え方や思考の傾向を変えていくことでも、予防になります。

まわりに相談相手がいない

心の弱さを吐き出せる相手がいないと、うつ病などの精神疾患のリスクが高くなると言われています。もし、弱音を吐いたときに、そっと肩に手を置いてくれる相手がいないと感じたら、不安やつらさを語り合って、共有できる関係性やコミュニティを普段からつくっておくと、予防につながります。自分を孤独にしないことが大切です。

病院にかかるポイントとは? ──友人と話したくない、朝起きられないがサイン!?

家族のサポート

更年期障害のうつっぽさから、うつ病へ移行させないためには、早めに精神科や心療内科の専門医に相談することが大切。早期に治療するほど完治しやすいと言われています。

受診のポイントは、友人とも話したくない、仕事に行きたくない、朝起きられないなど、日常生活、社会生活に支障をきたすようになったと感じたときです。

友人と話して心が晴れ、症状が緩和するなら、大丈夫だと言われています

ほかも、憂うつ、気分が重い、不安、イライラ、集中力がない、細かいことが気になる、自分を責める、物事を悪いほうに考える、眠れないなどの心の症状。

食欲がない、だるい、疲れやすい、頭痛、肩こり、動悸、胃の不快感、便秘がち、めまい、口が渇くなどの体の症状。これらが2週間続くようなら、受診の目安です。

うつ病の治療では、家族や周囲のサポートが重要です。家族に家事や親の介護などを分担してもらったり、周囲の人に話し相手になってもらい、ひとりで背負い込まず、ストレスを減らすようにしましょう。

家族にうつ病の人がいる場合は、つらい気持ちや訴えを聞いてあげてください。軽いうちなら、漢方薬や頓服として少量の抗不安薬、軽い睡眠導入薬などの処方で治ることも少なくありません。

またカウンセラーに相談して思考のクセに気づいて、それを変えていくカウンセリングを受けてもよいでしょう。

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mika_masuda

増田美加・女性医療ジャーナリスト
予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。公式ホームページ :http://office-mikamasuda.com/

参考/厚労省「みんなのメンタルヘルス

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