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アトピー性皮膚炎の新治療薬が久しぶりに登場! 苦しんでいる人も改善の方向が

カラダ戦略術

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増田美加

首筋がかゆい女性

自分の体をきちんと知ろう! がテーマの連載「カラダ戦略術」。前回は「40歳から増える緑内障」について、お届けしました。今回は、「アトピー性皮膚炎の新治療薬」について、女性医療ジャーナリストの増田美加がお伝えします。

軽症でも3割の人しか治療に満足できていません

アレルギーはもはや国民病と言われるほど増加していて、日本人の2人に1人がアレルギーを持っています。なかでもアトピー性皮膚炎は27年で約2倍。皮膚疾患で2番目に多いのです。

さらにアトピー性皮膚炎は、中等度以上の重症度の高い人が約2~3割もいる深刻な病気。子どもに多いというイメージがありますが、1~4歳の子どもの次に、実は40~44歳という大人にも多い病気なのです。

おもな症状は、よくなったり悪くなったりをくり返す皮膚のかゆみを伴う湿疹です。さらに、それらに伴って起こる不眠、集中力低下、労働意欲の低下、抑うつ、不安など、QOL低下による疾病負荷が皮膚疾患の中で最も高くなっています

アトピー性皮膚炎による社会的損失は746億円とも言われています。治療満足度が低い病気としても知られていて、軽症者でも3割の人しか治療に満足できていないという調査もあります。 ※中原剛士ら「アトピー性皮膚炎患者における疾病負荷と治療満足度に関する横断研究」

皮膚のバリア機能の低下で炎症が

アトピー性皮膚炎とは、かゆみのある湿疹が、慢性的によくなったり悪くなったりを繰り返し、慢性的に経過する皮膚炎(湿疹)ですが、その根本には、皮膚の“バリア機能”の低下が考えられます。

皮膚のバリア機能は、外界のさまざまな刺激、乾燥などから体の内部を保護する機能のこと。

そのため、バリア機能が低下すると、外からさまざまな刺激や抗原が入りやすくなって、これらが免疫細胞と結びつき、アレルギー性の炎症を引き起こします。

また、かゆみを感じる神経が皮膚の表面まで伸びてきて、かゆみを感じやすい状態となり、掻くことによって、さらにバリア機能が低下するという悪循環に陥ってしまいます。

「Th2」細胞が増えて炎症やかゆみを起こすことで

ひじの内側がかゆい女性

皮膚炎によるかゆみで、皮膚が傷つくと、さらに炎症が悪くなります。このとき、皮膚の内部では、正常な皮膚に比べ、「Th2」細胞という免疫細胞が増えた状態になっています。

そして、「Th2」細胞が産生する「IL-4」と「IL-13」という物質(サイトカイン ※1 )は炎症を起こしたり、かゆみを誘発したり、皮膚のバリア機能に大切なフィラグリン ※2 という物質の発現を低下させたりします。

※1:体内の細胞同士の情報伝達を行うタンパク質。
※2:皮膚の水分保持やバリア機能に重要なタンパク質

アトピー性皮膚炎の原因は、まだ明らかではありませんが、皮膚のバリア機能が低下する体質や、アレルギーを起こしやすいアトピー素因が一因として考えられています。

基本は“保湿”と“炎症を抑えること”

アトピー肌の洗顔

アトピー性皮膚炎は、慢性的な病気ではありますが、適切な治療を受ければ、いずれ治ったのと同じ状態になることが期待できます。

治療の基本は、保湿(皮膚のバリア機能を補う治療)と、炎症を抑える治療 (抗炎症療法)です。そのときどきの症状の程度やライフスタイルなどに応じて、適切な治療を組み合わせて行います。

具体的には、

  1. スキンケア(皮膚の清潔を保ち、うるおいのある状態を保つ)
  2. 薬物療法 (皮膚の炎症を抑える治療)
  3. 環境整備(環境中の悪化因子を見つけ、可能な限り取り除く)

の3つを柱にした治療です。

適切な治療において、これらは、どれも欠かすことができないと言われています。正しい治療を行うことで、症状をコントロールでき、湿疹などの症状が出ない状態(寛解=症状を改善させ、湿疹のない肌にすること)にすることができます。

肌がキレイになってもすぐに薬をやめないこと

治療前に、症状を繰り返しやすかった人は、症状がよくなった(寛解したあと)あとも、計画的に抗炎症薬を塗って、悪化を防ぐ治療法を行います。薬の使用間隔を、ひとりひとりの状態に応じて調整しながら減らしていくことで、薬の副作用を避けながら、湿疹のない肌を維持(寛解を維持する)していきます。

治療を開始すると、多くの人はすぐに見た目がきれいになります。しかし、目に見えない皮膚の下の炎症は続いています。ですから、この時点で治療をやめてしまうと、すぐに湿疹が再発してしまうのです。

治療のポイントは、ステロイド外用薬でしっかりと皮膚の炎症を抑えたあと、すぐに治療をやめずに、徐々にステロイド外用薬を塗らない日を増やしていくことで、炎症を抑えた状態を維持することが大切です。

気になるステロイド外用薬の副作用

ステロイド外用薬の副作用については、免疫抑制成長障害糖尿病などと聞いたことがあるかもしれません。しかし、これらは、外用(塗る)薬ではなく、全身投与(内服や注射)でしかも長期間、使用した場合です。

また、ステロイド外用薬の使用で、皮膚に色素沈着(黒ずんだ色調になること)が起こるのではないかと心配される人もよくいます。しかし、これは薬剤の副作用ではなく、皮膚の炎症が長く続いたことによるもの。湿疹の治療をすることで改善します。

ステロイド外用薬を長期に使用すると、皮膚が薄くなったり、にきびなどの局所的な副作用が出現することがあります。しかし、薬の使用間隔を患者さんの状態に応じて、医師が調整しながら薬を減らすことで、副作用を回避します。

このためには、スキンケアや環境整備により、汗やアレルゲンなどへの対策を十分に行って、悪化要因を減らしていく努力も欠かせません。そうすれば、着実に薬剤を減らしていくことができて、湿疹のない肌を維持できると言われています。

治療法は、大きく3つあります

診察

アトピー性皮膚炎の治療では、患者自身が自分の状態をよく知り、継続して治療に取り組むことが大切と言われています。

なかなかよくならず不安なときや、主治医の指示通りに薬が塗れないなど困ったことがあるときは、主治医に相談しましょう。

医師に確実な診断・重症度の評価をしてもらったあとで、医師と治療の目標やゴールを共有して、外用薬だけでなく症状に応じて、以下のような治療の中から選択可能です。

外用療法(塗り薬)

  • 保湿外用薬
  • ステロイド外用薬(ウィーク、ミディアム、ストロング、ベリーストロング、ストロンゲスト)
  • タクロリムス外用薬

全身療法(飲み薬、注射)

  • デュピクセント®(皮下注射)
  • シクロスポリン(ネオーラル®)(飲み薬)
  • 経口ステロイド(飲み薬)

光線療法

ステロイド不安から“使わない”→“悪化する”悪循環が

治療は、

  1. スキンケア(皮膚の清潔を保ち、保湿してうるおいのある状態を保つ)
  2. 薬物療法 (皮膚の炎症を抑える治療)
  3. 環境整備(発汗、食事、環境因子など環境中の悪化因子を見つけ、可能な限り取り除く)

が3本柱です。

2の薬物療法では、頼みの綱であるステロイド外用薬が、“ステロイド忌避”の誤解から効果的に使われていない現状があります。「ステロイドで逆に悪くなった」「副作用が怖い」「依存性がある」「体内に蓄積される」などと誤解している人も少なくありません。これらはすべてステロイド薬の不適切な使用によるものと言われています。

このような誤解があると早々に薬を中止したり、塗る量を勝手に減らしたりして、治らずにぶり返し悪化することにもなりかねません。その悪循環が患者さんを長期に渡って苦しませている原因になっていると言います。

症状が出たときだけに治療する方法は、「リアクティブ療法」。これは患者さんにも理解しやすいのですが、再発の多いアトピー性皮膚炎では、症状がよくなっても薬を使うことが大事。これを「プロアクティブ療法」と言って、炎症のない部分にも薬を塗って症状を再燃させないよう、徐々に薬を減らしてくことが必要と言われているのです。

新薬で平均約8割、皮膚病変が改善したという結果

日本でステロイド外用薬が登場したのは1953年。その後、「シクロスポリン(ネオーラル®)」(飲み薬)が2008年に登場。それ以降、新薬はしばらく出ていませんでした。

その後、2018年4月に国内で久しぶりに新薬の生物学的製剤の皮下注射「デュピクセント®」が発売になりました。臨床試験で4か月後、平均約8割、皮膚病変が改善したという結果が出ています。

デュピクセント®」は、米国、EU、カナダ、オーストラリア、韓国などでも承認された世界初アトピー性皮膚炎の生物学的製剤。

アトピー性皮膚炎の慢性炎症には、体内のタンパク質IL-4とIL-3が関与しています。その受容体に結合し、両者の働きを抑えることで、皮膚病変やかゆみを改善します。

成人で初回600mg、2回目以降は300mgを2週に1回皮下注射。軽い副作用はありますが、重篤な副作用は少なく、4か月後に5割程度改善した症例が約8割、9割程度改善した症例が約4割という臨床試験結果です。費用は健康保険3割負担で300mg、約2.5万円。

「シクロスポリン(ネオーラル®)」や「デュピクセント®」は、成人の重症・難治例に対して短期的に使用するべきもので、副作用もあるため、アトピー性皮膚炎の治療に精通した医師のもとで使われることが前提とされています。

現在、治療薬としては、ステロイド外用薬、タクロリムス外用薬(プロトピック®)などの塗り薬。デュピクセント®、シクロスポリン(ネオーラル®)などの全身療法(飲み薬、注射)が、症状(重症度)に応じて、医師指導のもと使い分けられています。

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mika_masuda

増田美加・女性医療ジャーナリスト
予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。公式ホームページ :http://office-mikamasuda.com/

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