「人に気を遣いすぎて疲れる」、「私ばっかり我慢している気がする」、「自分の意見が言えない」など、日頃感じる生きづらさ。このような気持ちを持つのは、人を優先してつい自分を後回しにしてしまう人に多いそう。

「人を優先できるのは、その人に対してやさしい思いを向けられるからこそで、素晴らしいことです。ただ、人にやさしさを向けるがために自分が疲れてしまっては問題です」と話すのは、心理カウンセラーの積田美也子(つみた みやこ)さん。

これまで3500人以上に、心の癒しや悩み解決のためのカウンセリングを行ってきた積田さんは、著書『「つい自分を後回しにしてしまう」が変わる本』(あさ出版)の中で、心を整える方法を伝えています。自分を優先できるようになると毎日が輝き出すという積田さんが教える、今すぐ実践したいこととは?

人を優先してしまうのは、他人軸で生きている人

はげます女性

人を優先して自分を後回しにしてしまう人の特徴として、いつも意識のアンテナが他人や外に向いていて、頭を忙しく働かせていることがあげられます。

「本当はこうしたいんだけど、相手はこうだろうから、自分はこうしよう」と、まず相手のことを考え、それから自分が何を言うか、どう行動するかを決めているのだそう。つまり、「他人がどう思うか」「他人がどう評価するか」を基準に自分の行動を決める“他人軸”で生きているということ。

他人軸だと、断れなくて頼まれるままにやってしまったり、場の調和を乱したくないので黙っていたり、遠慮して自分の希望を言えなかったり。思い当たる節があるなら、やるべきは自分の「内」を見つめることだと積田さん。

やってみよう! 深呼吸で意識をリセット

「こんな自分はダメだなあ」という思いが出てきても、否定したりせずにやさしく受け止めるだけでOK。まず、自分の思考の癖に気づくことが大事。本書では、よくある6つの思考の癖が紹介されています。

そして、思考の癖に気づいたら、次は忙しい毎日の中に意識を「外」から自分に戻す時間を作ることを始めましょう。そこでいちばん簡単なリセット方法として紹介されているのが、深呼吸です。

Point1
心地よいと感じる場所やお気に入りの場所にいる自分をイメージして行うのがおすすめです。ゆっくり息を口から全部吐き切る。続けて、ゆっくり7つ、頭の中で数えながら鼻から息を吸い込む。

Point2
吐く息とともに自分の中にある疲れが出ていくのをイメージして、吐き切ることを意識しましょう。ゆっくり7つ、頭の中で数えながら細く長〜く口から息を吐く。これを5〜6回繰り返す。

『「つい自分を後回しにしてしまう」が変わる本』41ページより引用

このように深呼吸をしているとだんだん心が落ち着いてきて、体が軽くなっていくのを感じられるようになります。

また、お茶やコーヒー、紅茶、ハーブティーなどの温かい飲み物をゆっくり味わって飲むのも、意識のリセットに効果的なのだそう。深呼吸もゆっくり味わって飲むことも、「その行為自体に感覚を集中すること、同時に自分の体がどう感じているかに意識を向けることがポイントです」と積田さん。

自分の価値を認める

元気な女性

本書には「自分を後回しにし続けると、心がいずれ枯渇してしまう」とあります。その一方で、自分の価値に気づいて認め、心を満たすことができれば、そのとき初めて自分の「本当の気持ち」に気づくことができるのだとか。

それには、他人に頼らずに自分自身で心を満たす必要が出てきます。というのも、人の心には、自分が考えるように相手も考えるだろうと思ってしまう「投影」という法則があるから。

現実はそうでないことも多々あり、自分の期待する反応がないと、相手に対して「自分ばっかりバカみたい」や「どんなにやっても報われないな」などの感情が湧いてきて、余計に疲れてしまうことも。だからこそ、自分で心を満たせることが大切になるのです。

やってみよう! 「自分なんか」の口グセをやめる

具体的には、「自分なんか」の口グセをやめるといいのだとか。「自分なんか」と思っていると、先述の投影の法則により、まわりの人も自分を「価値がない人」と思っているように感じて、人の目を気にして動けなくなってしまうのです。

「自分なんか(価値がない)」と思っているのは自分自身。そういう思いが出てきたら、「あ、また思っているな」と認めてあげるだけで十分だと積田さん。続けることで、いつしか自然と「自分なんか」という思い込みに巻き込まれなくなると言います。

また、「自分の時間がない」、「こんなにやってるのに感謝されない」など、足りないことばかりに執着しないのも大切。「こんなに“ない”私は、なんてダメなんだ」という思いを持ってしまうから。

積田さんが「ナイナイ症候群」と名付けたこの状態に対する特効薬は、感謝。本書では、意識的に感謝できることを探し、1日5個書き出す「感謝のワーク」がおすすめされています。

「ない」から「ある」へ視点をシフトさせていくのです。内容はその日にあったことで、自分が感謝できること、感謝したいことならなんでもOK。シンプルな方法ですが、多くのクライアントさんが効果を実感されています。「今日は特に何もなかったな」という日ほど、些細なことに目を向けて、探してみましょう。

『「つい自分を後回しにしてしまう」が変わる本』81、82ページより引用

書き出す内容は、「おいしいごはんを食べられたこと」、「今日も仕事ができたこと」、「1日、頑張った自分に(感謝)」など、毎日の小さなこと、自分にとって当たり前になっていることがおすすめ。

1か月続けると、「自分にはなにもない」と思っていたところから、「実はこんなにあったんだ」「こんなに人に助けられているんだ、人とつながっているんだ」と実感できるようになるのだとか。結果、「なにもない自分はダメなんだ」という思いが消え、自分を認められるようになるのです。「感謝のワーク」をしたら、気持ちよく1日を終えられそうですね。

他人との間に「健全な境界線」を引く

喧嘩をする子ども

自分と向き合った後は、他人との関わり方を見つめ直すステップに進みます。積田さん曰く、自分の気持ちを尊重しながら人と付き合うには、相手と自分の間に「健全な境界線」を自分で引くことが大切に。

自分を後回しにしてしまう人は、人に頼まれると断るのが苦手。ときに、自分のキャパシティを超えて引き受けてしまい、相手へのイライラや疲弊感も増す結果になることもあります。そうならないためにも、時にはNOと言わなくてはなりません。

NOと言ったとき、自分と相手の間には、健全な境界線が引かれます。普段、あなたが誰かに対して自分を犠牲にしたり、我慢をしたりしているとき、二人の間の境界線は真ん中ではなく、あなた側に偏っている状態です。この状態は、あなたにとっても相手にとってもアンバランスで、健全ではありません。
誰かがあなたに頼みごとをするとき、あなたがYESと言ってくれることへの期待はあるにせよ、あなたが無理をしたり、あなたに負担が大きくかかったり、我慢をしてまで要望に合わせて引き受けてくれることを、相手も望んでいません。

『「つい自分を後回しにしてしまう」が変わる本』127ページより引用

お互い気持ちよく過ごすためにも、距離を確保するべき。このように健全な境界線を引くためには、「先に自己完結しない」こともポイントになります。人にお願いしようとしても「迷惑なんじゃないか」、「きっと相手も忙しいだろう」など、自分の中で勝手に結論を出してしまうのをやめ、人に助けを求められるようになると自分を優先できるようになるようです。

また、相手が察してくれることを期待しない、「我慢」と「犠牲」にさよならをする、「すみません」よりも「ありがとう」と言うなど、ほかにもさまざまな実践法があります。こうして考えや行動を変えていくと、自分軸で人と付き合えるようになっていくのだとか。

このほか、本書には心の中で思っていることをノートに書き出し、思いっきり吐き出してみる「感情解放ワーク」、好きなことやしたいことを1日1個実践してみる「自分ファーストのワーク」など、心を整えるためのユニークな方法も紹介されています。日々の生活に取り入れていけば、自分の心に従い、自分らしい人生を遠慮なく生きていけるようになりそうです。

ストレスから開放されたい!

「余計な習慣をやめるだけ」自律神経を整える基本のルール

「余計な習慣をやめるだけ」自律神経を整える基本のルール

朝のたった2~3分でできる、心を磨く最高のマインドフルネス

朝のたった2~3分でできる、心を磨く最高のマインドフルネス

「つい自分を後回しにしてしまう」が変わる本]image via shutterstock