食べすぎ

ダイエットしたい、食べすぎるのをやめたいと思っているのに、食欲が止まらないのはなぜなのでしょうか?

これまで30年間にわたって3万人の肥満治療を行い、延べ3トン分の体重を減量させてきた左藤桂子先生が指摘するのは、「食べすぎを招く生活習慣がある」という事実。

チェックリストから「食べすぎタイプ」を導き出した前編に続き、後編ではそれぞれの特徴と、今の生活を変えるための簡単なステップを解説していきます。

  1. 「栄養が足りていない偏り子さん」の場合
  2. 「食品添加物を摂りまくりさん」の場合
  3. 「睡眠の質が悪い寝不足さん」の場合
  4. 「ストレス溜めてるお疲れさん」の場合

※「食べすぎタイプ」診断については前編をご参照ください。

「栄養が足りていない偏り子さん」の場合

サラダを食べる女性

「栄養が足りていない偏り子さん」は、栄養バランスの乱れが食べすぎにつながっているタイプ。とくに注意したいのがタンパク質不足です。

左藤桂子先生
左藤先生

2005年に、オックスフォード大学で「プロテインレバレッジ仮説」という研究が発表されました。簡単にいうと「人はタンパク質の必要量を満たすまで食事をとろうとする」というものです。

人間の体は、半分は水、残りの半分はタンパク質と脂でできています。体をつくっているタンパク質が足りないと、体は満たされるまで摂取カロリーを増やして「タンパク質を補おう」とし続けます。つまり、満腹感を感じにくくなり、食欲を我慢できなくなってしまうのです。

日本人は全世代で、慢性的なタンパク質不足といわれます。タンパク質は体内で貯蓄できないため、1日3食、20gずつ摂り続けることが基本です。

左藤桂子先生
左藤先生

よくダイエッターが「スープとサラダ」といった食事をよしとしていますが、絶対的にタンパク質不足。

一日60gのタンパク質を摂るためには、豆腐なら1丁=300gとして3丁納豆10パック鶏むね肉でも300g食べなければいけません。

かといってタンパク質を肉だけで摂ろうとすると、脂肪の摂りすぎになってしまいます。魚、肉、卵、乳製品、納豆、豆腐といったタンパク質含有量が多い食品を、うまく組み合わせて食べることが大切です。

タンパク質、炭水化物(糖質・食物繊維)、脂質、ミネラル、ビタミンの五大栄養素をバランスよく食べることこそ、「食べすぎ」を防ぐ基本。食欲が抑えられないときは、「栄養が足りない!」という体からのサインかもしれないと考えてみてください。

「食品添加物を摂りまくりさん」の場合

カップラーメン

「食品添加物を摂りまくりさん」も、上記の「偏り子」さんと同じく“たくさん食べても満腹感を感じにくい”タイプ。その原因となるのが、食品の保存期間や味わい、見た目をよくするために加えられる食品添加物です。

左藤桂子先生
左藤先生

食品添加物に関してはおもしろいデータがあります。

栄養価とカロリーはほぼ同じメニューを、片方は素材から調理して、片方は添加物入りのインスタントで用意して2つのグループに食べてもらったら、添加物入りのグループのほうがたくさん食べたんです。添加物いっぱいのお手軽料理は、なぜか満腹になりにくいんですね。

どうして添加物入りの食事だと食べすぎてしまうのか、その理由は完全には解明されていないと左藤先生。しかし、食品添加物の消化には多くの分解酵素を必要とするため、酵素の材料であるタンパク質が不足しやすくなる可能性があるといいます。

左藤桂子先生
左藤先生

調味料を買うとき、成分表示にこだわらずに価格重視で選んでいる人は、ぜひ昔ながらの手法でつくられた本物の調味料を使ってみてください。

味噌・醤油・酒・みりん・酢などは発酵食品。発酵は本来短縮できないので、作るのには時間もお金もかかります。あまりに安い調味料は、添加物で科学的な味付けをして、色素を入れているから安く作れるのです。

料理のベースに安すぎる調味料を使っていると、自炊しているのに添加物が多めになってしまう場合もあると左藤先生。食材を買うときは添加物を確認すること、できるだけ素材から自炊することが添加物のとりすぎを防ぎ、「食べすぎ」防止につながります。

「睡眠の質が悪い寝不足さん」の場合

不眠症の女性

「睡眠の質が悪い寝不足さん」は、睡眠不足が食べすぎにつながっているタイプ。睡眠と食欲の間に深い関係があることは、近年さまざまな研究で明らかになってきています。

左藤桂子先生
左藤先生

食欲のメカニズムには、「レプチン」という食欲を抑制するホルモンと、「グレリン」という食欲を増進するホルモンが関わっています。人間の体には、体脂肪が増えるとレプチンの分泌量を増やして肥満を防ぎ、やせすぎるとグレリンの分泌量を増やして食事量をアップさせるという、生きる仕組みが備わっています。

ところが睡眠不足やストレスのせいで自律神経が乱れると、体脂肪が減っていないのにグレリンの分泌量が増加し、食べすぎが抑えられなくなってしまうのです。

さらに、睡眠不足は“食の好み”にも影響するそう。米カリフォルニア大学バークレー校の研究では、睡眠の質が悪い人ほど高カロリーのジャンクフードを食べたくなるという、驚きの結果が報告されています。

左藤先生によると、睡眠を改善する主なポイントは次の5つです。

  • シャワーでなく湯船につかって体を温める。
  • スマホは眠る3時間前から使用をやめる。
  • 朝は眠くてもいったん起きて朝日を浴びる。
  • 休日に朝寝坊すると睡眠リズムが崩れるため、できるだけ平日と同じ時間に起きる。
  • 夕方以降は少しずつ照明の明るさを落とす。天井からの白い照明より暖色系の間接照明がおすすめ。

「ストレス溜めてるお疲れさん」の場合

疲れている女性

ネガティブになりやすい「ストレス溜めてるお疲れさん」の場合も、「寝不足さん」と同じく自律神経の乱れから食欲を増進するグレリンの分泌量が増加しやすいタイプです。

左藤桂子先生
左藤先生

ストレスの度合いによって、食欲との結びつきは変わってきます。人間は極度のストレスを感じると食べられなくなりますが、中程度のストレスは“イライラ食い”の原因になります。

とくに甘い物は、脳の報酬系を刺激して快感を与え、リラックスさせるので、ストレスから甘い物を食べ続けてしまうというケースは多いです。

糖分は腸内の悪玉菌のエサになるため、スイーツやアルコールの摂りすぎは腸内環境の悪化を招きます。「腸脳相関」といわれるほど腸と脳は密接に影響を及ぼし合っていることから、「ストレスに弱い人は、まずは“腸活”を行い便通を整えることから始めてみて」と左藤先生。

左藤桂子先生
左藤先生

つい忘れがちなのは、を十分に飲むこと。タンパク質をはじめとする五大栄養素をきちんと摂ることや、えごま油・亜麻仁油・青魚の油など、質のよい不飽和脂肪酸を摂ることも大切です。

甘い物やお酒のかわりに必要な栄養を摂ることで、それらを欲する頻度も下がります。

ムダな食べすぎを防ぐ一番の近道は、体のベースをつくる「基本の食事」の質を高め、睡眠不足やストレスの解消を心がけること。自分の「食べすぎタイプ」を参考に、思い当たることから改善してみてはいかがでしょう。

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佐藤桂子先生

左藤桂子(さとう・けいこ)先生
さとうヘルスクリニック院長、佐藤桂子ヘルスプロモーション研究所所長、30年で3万人の肥満治療をした肥満外来の専門医。多くの症例を診るなかで、糖尿病となる前に体重オーバーの時期があることに気づき、体重コントロールの重要性を指導。メタボリック症候群の概念を確立させた医師のひとりでもある。著書に『ダイエット外来の寝るだけダイエット』(経済界)など。佐藤桂子ヘルスプロモーション研究所

取材・文/田邉愛理、企画・構成/寺田佳織(マイロハス編集部)、image via shutterstock

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