トマト

調子が悪い、胃腸の具合がよくない、むくみやすい、頭痛やめまいがある……。思い当たる不調の原因は、隠れ栄養失調かもしれません。

隠れ栄養失調とは、腸内環境の悪化や酵素不足、だ液や胃液の減少などにより、食べているのに体に栄養が行き渡っていない状態のこと。予防内科医の関由佳(せきゆか)先生は、「体の栄養吸収力をアップするには、やさい麹が有効です」と言います。

ニューヨークの料理専門学校でディプロマを取得し、野菜ソムリエ、味噌ソムリエの資格も持つ関先生。メディカルフード研究家としてメディアで活躍する一方、「薬やサプリメントではなく食べもので病気を予防する」という考えのもと、栄養療法や予防医学に力を入れた診療に取り組む日々。

そんな関先生の知識が詰まった著書『腸と胃を整える食べるくすり やさい麹』(アスコム)より、自宅にあるいつもの食材で作れる“最強の発酵食”、やさい麹について紹介します。

「米麹」は、日本人の体質に合っている

麹

まず、麹のメリットのおさらいを。そもそもとは原料となる米や麦、大豆などの穀物に麹菌を付着させ、繁殖しやすい温度や湿度の中で発酵させて、有効なカビを繁殖させて培養したもの。「発酵食品の中でも最も日本人の体質に合っていて、食べ続けることで健康への効果が期待できる」と関先生。

なかでも手軽に摂取しやすく、効果が高いのが米麹。「米麹の豊富な酵素やビタミン、ミネラルなどの栄養素は、おいしく食べるだけで体の中の乱れた状態を整え、健康のベースとなる体の栄養吸収力を高めてくれます」。加えて、麹には主に、栄養の消化吸収の効率アップ、善玉菌で腸内環境を改善、ビタミンB群で滋養強壮+疲労回復の3つの効果があると言います。

また麹にはビタミンB群をはじめ、多種類のビタミン類を生成する働きのある酵素が含まれるため、疲労回復や美肌などに効果的。酵素とビタミンB群の代謝促進作用で、エネルギーの燃焼力もアップ。ダイエット効果も期待できます。

『腸と胃を整える食べるくすり やさい麹』34ページより引用

健康リスクを減らすだけでなく、美容効果が期待できるのもうれしい話です。

トマト、玉ねぎ、にんにく、しいたけが最適食材

野菜

この麹の自然のパワーを活用し、野菜のビタミンやミネラルなどの栄養をおいしく取り入れやすくしたのが、やさい麹です。具体的には、トマトや玉ねぎ、にんにく、しいたけといった、野菜の中でもとくにパワフルな健康効果(栄養成分)を持つ素材と麹を合わせて発酵させます。

医師であり料理人でもある関先生が開発したもので、先生は「やさい麹は米麹が発酵するときに、合わせた野菜も発酵させ、うま味と栄養価が高まる“食べるくすり”」だとも話します。

発酵させる野菜は、1 栄養価が高く健康効果を発揮、2 発酵するとうま味が増す、3 料理への活用範囲が広い、4 保存しても安全、5 いつでも手に入るもの。この条件を満たす、トマト、玉ねぎ、にんにく、しいたけの4種類がもっともオススメです。

『腸と胃を整える食べるくすり やさい麹』40ページより引用

本書によると、4種類のやさい麹に期待できる効果はそれぞれ違います。

  • トマト……高い抗酸化作用を持つリコペンの力で動脈硬化予防や抗炎症作用
  • 玉ねぎ……フラボノイドの一種、ケルセチンを含み、骨の形成の活性化やビタミンDの吸収力アップによる筋肉強化、認知機能の向上
  • にんにく……辛味成分のアリシンで抹消の血管を拡張させて血行促進し、ビタミンB1の吸収が高まるため疲労回復や滋養強壮をサポート
  • しいたけ……豊富に含まれるビタミンDによりカルシウムの代謝を促し、吸収率を高めて歯や骨を丈夫に。腸内環境や腸管免疫機能を調節する効果も。

不調に合わせてやさい麹を選ぶ。そんな使い方ができそうです。

ひと晩でできるお手軽さがいい

サラダ

作り方もとても簡単です。「やさい麹は簡単な仕込みの後、発酵&熟成を待つだけ。発酵プロセスはどれも同じ方法なので、覚えてしまえば手軽に仕込めます」と関先生。

ここでは、うま味と豊富な栄養が時間とともに熟成される、トマト麹の作り方を見てみましょう。材料は、無添加・無塩のトマトジュース200cc、水大さじ2~3、乾燥米麹50g、塩10gの4つだけ。

  1. 下準備……ボウルに米麹、塩を入れ、混ぜる。
  2. 発酵……トマトジュースを加え、ラップをして20〜25℃程度の室温にひと晩(8〜10時間くらい)おく。とろっととろみがでてきたら完成。
  3. 保存……清潔な保存容器に移し、麹が浸かる程度の水(大さじ2~3)を調節して加え、ふたをして密閉保存する。冷蔵庫で保存し、1日1回底からよくかき混ぜる。日を追うごとに甘みととろみが増す。

『腸と胃を整える食べるくすり やさい麹』43ページより引用

できあがったら、毎日最低1食、ひと品にやさい麹をプラスして食べましょう。納豆のたれやマリネ液、ドレッシング、しょうゆ代わりに置き換えてもOKです。

また、やさい麹は味に深みとコクを足すだけでなく、麹の効果で素材のうま味を引き出すから、下味つけにもひと役買ってくれます。そのほか、味噌汁に入れたり、パンに塗ったり、使い方はさまざま。これなら飽きずに取り入れられそうです。

ひとさじで健康効果とおいしさをプラスしてくれるやさい麹を、習慣にしていきたいですね。

野菜の栄養をしっかり摂ろう

腸と胃を整える食べるくすり やさい麹 ]image via shutterstock

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