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乳がんになった人は、卵巣がんになりやすい!?

カラダ戦略術

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増田美加

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自分の体をきちんと知ろう! がテーマの連載「カラダケア戦略術」。前回は「乳がんの遺伝について」について、お届けしました。今回は、「遺伝性乳がんと卵巣がん」を女性医療ジャーナリストで乳がん経験者の増田美加がお伝えします。

乳がんと卵巣がんにかかりやすい遺伝子があります

今、わかっている遺伝性の乳がんと卵巣がんの代表は、“遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)”。HBOCは、BRCA1とBRCA2という遺伝子の病的変異があるがんです。

米国女優のアンジェリーナ・ジョリーさんは、HBOCということを自ら告白しています。

BRCA1、BRCA2は誰もが持つ遺伝子です。その遺伝子に病的変異がある場合、“遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)”となります。

このHBOCは、乳がんにかかるリスク、卵巣がんにかかるリスク、あるいは、乳がんと卵巣が両方にかかるリスクが一般より高くなることがわかっています

日本では、乳がんにかかった患者さん全体の約3~5%がHBOCと言われています(*1)。

*1 国立がんセンターがん情報サービス がん登録・統計 2017

乳がんと卵巣がんにかかるリスクはそれぞれ異なります

今、日本で乳がんにかかる人は、11人に1人。卵巣がんにかかる人は82人に1人となっています(*1)。

一般の日本人が乳がんにかかる可能性を9%とすると、BRCA1、BRCA2の遺伝子に病的変異がある遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)の人の場合、乳がんにかかる確率は、41~90%で、一般の人の6~12倍。

HBOCの人が卵巣がんにかかる確率は、8~62%と言われていて、一般の人の8~60倍とされています(*2、3)。

遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)に、そのほかの家族性の乳がんを加えても、遺伝性、家族性の乳がんはそんなに多くはなく、乳がんにかかった人全体の約20%以下です。しかし、自分は乳がんにはかかっていないけれど、血縁に乳がんや卵巣がんの人がいて不安に思っている人もいます。

けれども仮に、遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)であったとしても、乳がんや卵巣がんを必ずしも、発症するとは限りません。

*2 NPO法人日本HBOCコンソーシアム広報委員会編『遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)をご理解いただくために』
*3 『実践! 遺伝性乳がん・卵巣がん診療ハンドブック』(編集・メディア出版)

遺伝子検査で陽性だったら、乳がんと卵巣がんになるの?

「乳がんにかかりました。次は卵巣がんになる…と不安です」
「母が乳がんだから、妹も私もいつかは乳がんか卵巣がんになる…」
「複数の血縁が乳がんと卵巣がんにかかっているから、うちの家族は遺伝子検査をしたら、みんな陽性のはずだ…」
「遺伝子検査でBRCA1、BRCA2に変異があると、100%乳がんか卵巣がんになる…」

というような”間違った情報”を信じて、不安を抱え続けている方がいます。

さらに、このような疑問、不安をもつ方も大勢います。

「乳がんに罹患したことで、娘に遺伝しているかどうが心配です。遺伝子検査を受けて、もし陽性だったらどうなるの?」
「姉が卵巣がんに罹患しました。今後、姉の乳がん、私の乳がん、卵巣がんが心配です」
「乳がんにかかった母が遺伝子検査を受けて陽性だったら、私や姉は予防のために乳房や卵巣をとったほうがいいの?」
「乳がんに罹患したのですが、今後、卵巣がんにも罹患するリスクがあるの?」
「遺伝子検査をするか、あるいはしないか、その結果、陽性だったらどうしたらよいのか……。」
「アンジェリーナ・ジョリーさんのように、乳がんや卵巣がんになる前に乳房や卵巣を事前に切除するなど、なんらかの治療をするのかどうか……。」

遺伝子検査をめぐっては、不安や疑問、迷いが渦巻きます。

不安を感じたら、まず遺伝カウンセリグを

気になる人は、まず、【遺伝性乳がん・卵巣がん症候群の特徴チェックリスト】を行ってみましょう。

その結果、不安があったら、「遺伝カウンセリング」で相談して、正しい情報を得てください。

遺伝子研究が急速に進み、今後、遺伝子(ゲノム)医療が主流になってきます。自分の健康を守るために、自分の体の情報を詳しく知ることはよりいっそう大切です。正しい情報を知って一歩前に前進しましょう。

遺伝カウンセリングを受けたからといって、必ず遺伝子検査を受けなくてはならない、ということはありません。カウンセリングで相談してから、遺伝子検査を受けるかどうかは、そのあとでじっくり考えて決めることができます

遺伝子カウンセリングでは何をするの?

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遺伝カウンセリングでは、患者さんやその家族が抱えている遺伝子に関する不安や疑問に対して、詳しい情報を提供しながら、今後どのように過ごしていくかをサポートしてくれます。

遺伝カウンセリングでわかること
・遺伝子検査でわかることは何か
・検査の限界はどこにあるのか
・検査結果によって得られるメリット、デメリットは何か
・検査結果を知った後に予想される心理的、社会的な問題など
を事前に情報提供します。

遺伝カウンセリングで多くの情報を与えて不安を募らせるのではなく、相談後は医療者が寄り添って、今なにができるかを一緒に考えるために行うのです。

遺伝子検査には、がん本人用と家族用があります

遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)の遺伝子検査は、どのようなものでしょうか?

自分が乳がんになった場合の検査と、その血縁者の検査があります。

ここでいう遺伝子検査とは、通信販売で購入して自分で検査するような簡易なものではありません。また、美容やアンチエイジングの遺伝子検査とも異なります。医療者のカウンセリングの後に、がん専門の医療機関で行う遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)専用の遺伝子検査です。

遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)が疑われる場合に行う遺伝子検査は、BRCA1、BRCA2遺伝子を分析、解析して、病的な変異があるかどうかを調べます。

遺伝性乳がん・卵巣がん症候群の特徴チェックリスト】で疑わしく、遺伝カウンセリングを受けたうえで、納得して選択した方が受ける検査です。

この検査には、“発端者向け検査”と“血縁者向け検査”があります。“発端者向け検査”は、乳がんや卵巣がんを発症し、家族歴などをみて、HBOCであることを疑うきっかけになった人への検査です。

まず、その人が“発端者向け検査”を受けて、その結果が陽性だった場合に、その血縁者が“血縁者向け検査”を受けるのが一般的です。

検査方法は、採血です。もちろん日帰りで、採血前の食事制限などもありません。血液は検査会社に送られ、約1か月で結果が出ます。

費用は、自費診療で“発端者向け検査”は、約25万円。“血縁者向け検査”は約4~5万円が目安です。

遺伝カウンセリングと遺伝子検査が受けられる全国の病院のリストは、【日本HBOCコンソーシアム】にあります。

遺伝子検査の結果は3通り

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検査結果は “陽性”“陰性”“未確定”の 3通りです。

“陽性”は病的変異が見つかったもの。“陰性”は病的変異が見つからなかったもの。“未確定”ははっきりしないものという結果も出ます。検査には限界があって、絶対はありません。

遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)が強く疑われても、“陰性”の場合もあります。しかし、だからといって、がんに関係する遺伝子すべてに、病的変異が絶対ないとはいいきれません。

がんにかかわる遺伝子は、わかっているだけでも40種類以上あります。現在の検査では見つけられない遺伝子の病的変異がある可能性もあるのです。

ですから、遺伝子検査で陰性だからといって、乳がんに決してかからないわけではありません。

また、“陽性”でも、必ず病気を発症するわけではありません。そして、いつごろ発症するかも、検査ではわからないのが現状です。

遺伝子検査を受ける前に知っておくべき重要なこと

検査を受ける前に、大事な選択を決めておく必要があります。「家族に伝えるべきかどうか?」です。家族には「伝えない」という選択をする人もいます。家族への相談は大切です。結果も、伝えれば、有効に活用できます。しかし、“伝えない”という選択肢も。

遺伝子検査は、ほかの検査と違って、結果が自分だけでなく、親族に広く影響を及ぼします。結果が陽性だった場合、親や兄弟姉妹、子どもに同じ遺伝子がある可能性が50%(2分の1の確率)になります。おじ、おば、いとこなどにもすべて可能性があります。すでにがんを発症している、がんを発症していない、男性、女性かも関係なく、可能性が生じます。

その意味でも事前に、家族に相談しておくことは大切です。

もし結果が陽性ならば、血縁者にはその結果を伝えて、“血縁者向け検査”を受けたり、病気の予防をするなど、結果を有効に活用してもらうことができます。

遺伝子検査の結果を家族に伝える? 伝えない?

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ただし、事前に遺伝子検査をすることを話すことで、反対する家族や血縁がいる可能性も考えられます。また、血縁者に不安を与えたり、その人の将来などを考えて、陽性と結果を伝えることを躊躇する場合もあります。

その血縁者との関係性によっても違いますし、誰に結果を伝えるか、いつ結果を伝えるか、そのタイミングなども、事前に考えてから検査を受けることが大切です。

自分ではうまく話せない場合、家族にも遺伝カウンセリングに一緒に来てもらって、話を聞いてもらうのもいい方法でしょう。

もちろん、家族の心の負担を考えて悩んだ末に、自分は検査を受けたが、血縁者には“伝えない選択”をする人もいるといいます。

大切なのは、どんな結果が出たとしても、その結果を自分のため、家族のために有効に生かせると思えるかどうかです。結果で得られるメリットが少ないと考えるなら、カウンセリングを受けて、検査をしないという選択もあるのです。

一度、遺伝子検査を断っても、時間が経ってから検査を受けることもできます。

たとえば、遺伝子検査を考えた末、一度は断念。しかし数年後、血縁者に乳がんや卵巣がんが発症し、家族歴が変わり、遺伝子検査を選択したケースもあります。

乳がん、卵巣がんを経験して不安に思っている方へ

2人に1人ががんになる時代。すでに乳がんや卵巣がんを経験し、遺伝性や家族性に不安を持っている人は少なくありません。自分の体の情報を得て、知識を増やすことで、今後の治療や人生の選択に役立つのではないでしょうか。

くり返しますが、不安に感じている人は、家族性や遺伝性の乳がんである可能性が高いかどうかをまず、自分で【遺伝性乳がん・卵巣がん症候群の特徴チェック】を行ってみましょう。そして、もし当てはまる項目があるようなら、主治医に相談してみてください。

その結果で、遺伝カウンセリングを受け、遺伝子検査のことも考えてみることができます。

遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)か、そうでないかがわかることで、新たな知識が増え、今後の治療方針が変わり、治療の選択肢が広がることもあります。より自身に合った治療を選ぶことも可能です。自分の体を知ることは、人生の力になるのではないでしょうか。

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増田美加・女性医療ジャーナリスト 予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。公式ホームページ http://office-mikamasuda.com/

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