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毎日の食事で何気なく摂取している栄養。健やかな体を保つために、日々必要な栄養素をバランスよく摂るなんて、ちょっと難しすぎる!?

まずは栄養の基本的な知識に関わるさまざまな疑問を、女子栄養大学 川端輝江教授監修のもと、解決していきます。

まずはココから!知っておきたい栄養の話

Q1. 体に必要な5つの栄養素って何?

人間が生きていくために必要な栄養素、炭水化物、脂質、たんぱく質、ミネラル、ビタミンという5つの栄養素のことです。このうち、炭水化物、脂質、たんぱく質は、体を動かしたり体温を維持するためのエネルギーとなる栄養素

また体を構築する材料となったり、体内機能を調整したりするのが、たんぱく質、ミネラル、ビタミンです。

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5つの栄養素、それぞれの特性とは?

01.炭水化物

体を動かすエネルギー源となる栄養素。消化、吸収されて主にブドウ糖となり、体中に供給されます。ブドウ糖だけが脳のエネルギー源となるので、不足すると脳の活動が低下するおそれが。

炭水化物といえば、真っ先に思い浮かぶのは米、小麦粉などの穀類ですが、これらに多く含まれる炭水化物はでんぷん。このほか、砂糖に含まれるショ糖、牛乳に含まれる乳糖、果物に含まれる果糖も炭水化物です。

02.脂質

おもに中性脂肪、コレステロール、リン脂質があります。中性脂肪は、体内に貯蔵できるエネルギー源。同じ量の炭水化物やたんぱく質と比べると、多くのエネルギー量を得ることができるのが特徴です。摂りすぎると体脂肪を増やす原因となるので注意が必要。

コレステロールは、細胞膜の構成成分となる物質ですが、体の中に増えすぎると動脈硬化の原因に。卵類、肉類、魚介類、乳類など動物性食品から摂取されます。

03.たんぱく質

エネルギー源となるとともに、筋肉や血液などの体の構成成分になる栄養素

たんぱく質は20種類のアミノ酸でできていて、消化吸収されたアミノ酸は人間の体の中に入ったあと、必要なタンパク質に再合成されます。

20種類のアミノ酸のうち11種類は体内で合成できますが、残りの9種類は合成できないので、必ず食物から摂り入れなければなりません。これらを必須アミノ酸といいますが、一般的に、動物性食品に含まれるたんぱく質は必須アミノ酸をバランスよく豊富に含んでいます。

04.ミネラル(無機質)

骨や歯の成分になるもの(カルシウム、リン、マグネシウムなど)、体内の水分中に溶けて浸透圧を調整するもの(ナトリウム、カリウム、塩素など)、酵素、ホルモン、核酸、血色素などをつくるもの(鉄、亜鉛、銅、セレンなど)の3つの役割があります。

カルシウムが不足すると骨粗しょう症や神経過敏、カリウムが不足すると血圧上昇、鉄が不足すると鉄欠乏性貧血など、さまざまな欠乏症を引き起こします。

05.ビタミン

微量で体の生理作用を調整する物質その多くは体内で合成できないので、食物から摂り入れなければならず、不足すると欠乏症を引き起こします

脂に溶ける脂溶性ビタミン(ビタミンA、D、E、K)と、水に溶ける水溶性ビタミン(ビタミンB1、B2、B6、B12、ナイアシン、葉酸、パントテン酸、ビオチン、ビタミンC)があり、脂溶性ビタミンは体に蓄積し、摂りすぎると過剰症の心配も。いっぽう水溶性ビタミンは、余剰分は排出されるとともに、加熱して損失される分も多いので、必要量が不足の状態にならないよう、注意が必要です。

また、五大栄養素には含まれませんが、消化吸収を行う腸の働きを助ける食物繊維も、必須の食物成分として重視されています。その大部分は消化できない炭水化物です。

「毎日バランスよく食べる」、がむずかしい!

Q2. バランスのよい食事を心がけたい。どう実践したらいい?

日々の生活の中で実践できる食事法として知られているのが、女子栄養大学の創始者、香川綾が考案した「四群点数法」。私たちが日々食べている食品を、栄養成分の似たもの同士で4つのグループに分類、各グループから偏りなく食品を選ぶことで、必要な栄養素をバランスよく摂ることができる食事法です。

【4つの食品群グループ】

第1群 乳・乳製品、卵

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生命の根源ともいえる、栄養を完全に補う食品です。

牛乳、ヨーグルト、チーズなどは、カルシウム、ビタミンB2、ビタミンA、良質たんぱく質、脂質が豊富に含まれています。ビタミンB2は、成長の促進作用や健康でみずみずしい肌を保つ働きが。感染にかかりにくくするビタミンAも豊富。も栄養たっぷりの完全栄養食品の一つです。

第2群 魚介、肉、豆・豆製品 

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体を作り、活力となる食品が分類されています。

魚介、肉は良質のたんぱく質を豊富に含む食品群です。豚肉はとくにビタミンB1が豊富です。豆・豆製品は、良質たんぱく質、鉄、カルシウム、食物繊維を含み、低エネルギー・低脂肪なのでヘルシー食品としても大注目です。

第3群 野菜(きのこ、海藻を含む)、芋、果物

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体の働きを円滑にする栄養素を多く含む食品群です。

緑黄色野菜は、β-カロテンのほか、ビタミンC、B1、B2、葉酸、鉄なども豊富に含みます。キャベツやだいこん、白菜、きゅうりなどの淡色野菜には食物繊維やビタミンC、B1、B2、カリウムが、きのこにはビタミンB1、B2、海藻にはカルシウムや鉄、β-カロテンが含まれています。からはビタミンCや食物繊維、果物からはビタミンCを摂ることができます。

第4群 穀類、油脂、砂糖、その他

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炭水化物や脂質などを含み、エネルギー源となる食品を分類。

穀類はでんぷん(炭水化物)が主成分で、体内でエネルギーとなる食品。油脂も同様です。砂糖や菓子、嗜好飲料、調味料などもエネルギー源であることから、第4群に分類されます。また穀類には、骨の構成成分となるマグネシウムや、生体内の調節作用に必要となるマンガン、銅、亜鉛などのミネラルを含んでいます。

Q3. 各グループからバランスよく選ぶ方法とは?

バランスよく選ぶコツは、以下の「四群点数法」の3つのポイントにありました。

01.食品に含まれるエネルギー80kcal=1点が基本

どれくらい食べると80kcalになるかというと、ちょうどバナナ1本(95g)。95gがバナナの1点実用値です。また、食パンの1点実用値は30gなので、6枚切り1枚(60g)では2点となります。

1点80kcalあたりの重量(g)の例:

第1群)普通牛乳120g、プレーンヨーグルト130g、卵Lサイズ1個55g、スライスチーズ24gなど

第2群)鶏胸肉(皮つき)55g、鶏ささ身75g(小2本)、牛肩ロース肉(脂身つき)25g、豚ヒレ肉60g、豚バラ肉20g、シロサケ45g、ミナミマグロ85g、マアジ65g、納豆40g、もめん豆腐110g、など

第3群)ほうれん草400g、にんじん210g、トマト420g、キャベツ350g、玉ねぎ220g、じゃがいも110g、さつまいも55g、りんご130g、いちご240g、キウイフルーツ150gなど

第4群)胚芽精米ごはん50g、精白米ごはん50g、玄米ごはん50g、食パン30g、スパゲティ(乾)21gロールパン25g、バター11g、油9g(大さじ3/4)、アーモンド(乾)14g、ビール200g、ワイン110gなど

各食品の1点実用値は、『食品80キロカロリー成分表』(女子栄養大学出版部)などで確認できます。

02.1日必要なエネルギー量を点数に置き換えて

1日に必要なエネルギー量が1600kcalの場合、これを点数に置き換えると合計20点相当になります。第1群から第4群の各グループから食品を選んでいき、合計点数が20 点になるように食べます。

30〜49歳の女性で、身体活動レベルがI(低い)の場合では、1日に必要なエネルギーは1750 kcal(「日本人の食事摂取基準(2015年版)より」)。これは21.8点となるので、合計がこの点数になるように食べるというわけです。

03.第1群から第3群は「3・3・3」、第4群で点数を調整!

成人女性の場合、第1群、第2群、第3群からそれぞれ必ず3点を食べることで、1日に必要なたんぱく質、ビタミン、ミネラルを摂取することができます。残りの点数は第4群から摂りますが、毎日体重を測定し、その変動によって点数を調整することができます。例として、

第1群  第2群  第3群  第4群
3点  3点  3点  11点 =  20点

Q4.1日に、何をどれくらい食べたらいいの?


四群点数法の基本となる1日20点(1600kcal)は、活動量の少ない成人女性でも必ず摂るべき量! 以下の数値を見れば、1日にどんなものをどれくらい食べるべきかがわかります。

『実践で学ぶ 女子栄養大学のバランスのよい食事法(第2版)』P35図3−1 エネルギー量点数配分バランス(1日にこれだけ食べよう(1日20点の目安量)より。
『実践で学ぶ 女子栄養大学のバランスのよい食事法(第2版)』P35図3−1 エネルギー量点数配分バランス(1日にこれだけ食べよう(1日20点の目安量)より。

【第1群(3点)】乳・乳製品(2点):牛乳コップ1杯とヨーグルトを小鉢に1杯。
卵(1点):卵1個

【第2群(3点)】魚介・肉・その加工品(2点):魚と肉料理合わせて2皿。
豆・豆製品(1点):絹ごし豆腐1/2丁弱

【第3群(3点)】野菜(1点):緑黄色野菜120g以上と淡色野菜で計350g
芋(1点):じゃがいも1個。
果物(1点):りんご約1/2個。

【第4群(11点)】穀類(9点):ごはんめし茶碗に軽く2杯、食パン1枚、うどん(ゆで)1玉。
油脂(1.5点):油大さじ1強。
砂糖(0.5点):砂糖大さじ1強。

Q4.四群点数法は、どんなメリットがあるの?


エネルギー摂取量を自由にコントロールするために開発された食事法ですから、エネルギーコントロールが比較的簡単にできるというメリットがあります。

まずは、第1群から第3群までは、各グループからかならず3点ずつ、計9点を優先的に摂取することで、必要なたんぱく質、ビタミン、ミネラルなどを確保。そのうえで、第4群の食品を選び、エネルギー量を調整してけばいいわけです。

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たとえば、BMI(Body Mass Index)が30以上の人が、1カ月に2kgの減量を目標とする場合
減らすべき体脂肪2kgに含まれるエネルギー量、14000kcalを30日で割ると、1日当たり466kcalとなります。
これを点数に置き換えると、466÷80=およそ6点ですから、第4群から摂る食品を、6 点分減らせばよい計算になります。第4群のうち、油脂、砂糖、菓子、嗜好飲料を中心に減らしてみましょう。

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川端輝江(かわばた・てるえ)教授
女子栄養大学教授。栄養学博士、管理栄養士。1986年女子栄養大学大学院栄養学研究科栄養学専攻修士課程修了。2007年より現職。著書に『しっかり学べる!栄養学』(ナツメ社)、『基礎栄養学ーー栄養素のはたらきを理解するために』(共著 アイ・ケイコーポレーション)、『なにをどれだけ食べたらいいの?』(共著、女子栄養大学出版部)ほか多数。

参考著書:『実践で学ぶ 女子栄養大学のバランスのよい食事法(第2版)』

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