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エクササイズで記憶力は高まるという最新研究。では、適した運動は?

The New York Times

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脳

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エクササイズ中に分泌されるホルモンが脳の健康を増進し、認知症のときに起こる損傷や記憶喪失を緩和することが、新しい研究によって判明しました。

2019年1月『ネイチャーメディシン』誌に発表された、ネズミ(ラットおよびマウス)を使った研究です。しかしこの研究は、エクササイズがどのように脳を保護し、記憶を失いつつある人でも記憶や思考力を保てるのではないかということを、細胞レベルで解明する一役を今後担うかもしれません。

エクササイズは思考に影響を与えている

ランナー

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エクササイズが脳を作り直し、思考に影響を与えることは、すでに多くの科学的根拠から示されています。

ネズミ(ラットおよびマウス)を使った研究では、走ることで海馬に新しい脳細胞が形成されることがわかっています。海馬は、記憶形成と記憶維持に特化した部分です。また、エクササイズによって脳の神経細胞間のシナプスの健康と機能が向上し、脳細胞間のやりとりがよくなります。

人間においては、肉体的に活動的だとアルツハイマー病やほかの認知症のリスクを下げ、また病気の進行を遅らせられることが疫学調査によってわかっています。

しかし、エクササイズがどう脳内の働きを変えるのか、(エクササイズで)身体の他の部分が変わることがたまたま脳にも良い影響を与えているのか、または脳そのものに変化が起きているのかなど、いろいろな疑問が残ります。

これらの論点は、科学者の国際団体、神経科学者や細胞生物学者ら——とくに、アルツハイマー病の理解、予防と治療に専念している人たち——の注目を集めました。

ホルモン「イリシン」が鍵を握る

イリシン

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これらの論点から、イリシンというホルモンが注目されることになりました。

2012年に初めて確認されたイリシンですが、これはギリシャ神話に登場する神の伝令者、イリスにちなんで名付けられています。このホルモンは、エクササイズをしているとき筋肉によって生成されます。イリシンは身体中に多くの生物科学的反応を引き起こし、その反応の大部分はエネルギーの代謝に関係しています。

アルツハイマー病は、脳細胞のエネルギーの使い方をある程度変えると考えられているため、科学者たちは、エクササイズによって脳内のイリシン量を増やすと脳が保護されるのではと考えました。

しかし、もしそうだとしたら、イリシンは人間の脳に存在しているはずです。それを確認するために、ブレインバンクから組織を集めて精密な検査を行ない、脳内にイリシンが存在することをつきとめました

これらの組織の中の遺伝子発現パターンからも、イリシンの大部分は脳内で生成されることが示されました。イリシンの量は、死亡時に認知症がなかった人の脳にはとくに高く、アルツハイマー病で亡くなった人の脳にはほとんど見つかりませんでした

イリシンがあるとシナプスの機能が向上する!?

シナプス

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これらの検査は、興味深いとはいえ、脳内でのイリシンの役目を説明するものではありませんでした。そこで、科学者たちは、健康なネズミと、げっ歯類版のアルツハイマー病を発症するように育てられたネズミに頼ることにしました。

認知症を発症するように育てられたネズミの脳に、高濃度のイリシンを染み込ませました。ネズミはじきに記憶テストでよい結果を出すようになり、シナプスの健康が向上した兆候を見せたのです。

一方、健康なネズミの脳には、イリシン生成を抑制する物質を染み込ませてから、アルツハイマー病になっているネズミの脳にあるプラークを形成するタンパク質アミロイドβの一種も注入しました。つまり、ネズミに認知症を与えたのです

すると、最初は健康だったネズミは脳にイリシンがないため、じきに記憶力の低下を見せ、また海馬にある神経細胞間のシナプスの機能も衰えました

科学者たちが健康なネズミの個々の神経細胞の中を調べてみたところ、イリシンを細胞に加えたときには、アミロイドβからの損傷が緩和されるのではと思える遺伝子発現の変化が確認できました。

エクササイズをしたら記憶力がよくなったんです!

エクササイズ

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最後に、これがおそらくもっとも重要だと思うのですが、健康なネズミを5週間にわたりほぼ毎日1時間泳がせてみました。その中には、あらかじめイリシンの生成を抑制する物質で処理されたネズミも含まれていました。

この処理をされていなかったネズミの脳のイリシン量はエクササイズ中に高まり、のちに脳がアミロイドβに晒されてもその影響を退けることができているようでした。記憶テストでは、これらのネズミは、同じようにアミロイドβに晒されて不活動だった対照群のネズミと比べて、ずっと良い成績だったのです。

しかし、イリシンを生成できなかったネズミには、エクササイズの効果はあまりありませんでした。アミロイドβに晒された後では、記憶テストの結果は脳にアミロイドβのある不活動なネズミと同じぐらい悪かったのです。

動けるならどんどん活動しましょう

ランニング

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これらの実験をまとめて考えてみると、脳のイリシン量を増やすことによって、エクササイズはある程度、認知症の予防になると言えるでしょう。そう語るのは、コロンビア大学の病理学と細胞生物学の教授、オッタビオ・アランシオ氏です。彼は、ブラジルのリオデジャネイロ連邦大学とカナダのクイーンズ大学など他の研究所からの24名とともに、実験を行ないました。

これらの実験は、入念かつ多方向から行なわれましたが、なにせネズミを使ったものなので、ネズミと同じように人間にもエクササイズとイリシンが作用するのか、またはどのぐらいの量でどんな運動が脳の健康にとって最善かは判明していません。

また、実験結果は、エクササイズとイリシンがアルツハイマー病を予防できるのかどうかについても示すものではありませんでした。ただ、ネズミに関しては、アルツハイマー病が発症したときある程度その影響は緩和できるようです

アランシオ教授によると、この研究に携わった科学者たちは、イリシンを医薬品形態にしたものを認知症の治療のひとつとして、まず動物に、最終的には人に対して検査したいと望んでいるそうです。特に、エクササイズする能力を失ってしまった人たちに。

いまのところは、アランシオ教授いわく、「もし散歩に行けるようだったら行きましょう」。これがこの研究の包括的な教訓のようです。

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©2019 The New York Times[原文:How Exercise May Help Keep Our Memory Sharp/執筆:Gretchen Reynolds](翻訳:ぬえよしこ)

ぬえよしこ(翻訳)

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