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更年期の女性が「もしかして認知症?」と病院へ。記憶力低下の理由とは

The New York Times

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ブレインフォグ

CREDIT: Gracia Lam/The New York Times

米『ニューヨーク・タイムズ』の「パーソナル・ヘルス」のコーナーより、ジェーン・ブロディさんの健康コラムをご紹介します。ジェーン・ブロディさんは、ベストセラー『Jane Brody’s Good Food Book』をはじめ12冊以上の著書をもつ、健康系コラムニストです。

医師の元を訪れた50代女性が告げられたこと

診断

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ある日、ガイヤトリー・デヴィ医師のもとを訪ねた55歳の元校長先生。彼女が取り乱しているのには、納得する理由がありました。

彼女は、この1年ほど記憶力が低下してゆき、行動面での問題も生じていました。神経科専門のデヴィ医師に紹介されたときには、前頭側頭型認知症の可能性があったそうです。

デヴィ医師が『Obstetrics & Gynecology』誌で報告したように、この女性がかつて誇った記憶力はかなり衰えており、すぐに苛つくようにもなっていました。タスクを整理したり、持ち物を確認したり、目標を設定したり、プランを立ててやり遂げるのが困難に。しかし、医学的、神経関連の検査や脳スキャンの結果は“正常”だったのです。

エストロゲンの低下が記憶低下に関係している?

この女性が1年前に閉経したことに気づいたデヴィ医師は、脳へのエストロゲンの刺激の低下が、この女性の症状に関係していることを突きとめました。エストロゲン刺激の低下は、程度の違いはあれ、更年期の女性には起こっていることなのです。そのことに、とても影響を受けやすい女性もいます。

更年期に関連した認知機能障害という納得の診断で、デヴィ医師はこの女性にホルモン補充療法を処方しました。1年と3か月の間に患者の行動面の症状は消え、学習能力や記憶力も通常レベルに戻りました。彼女は厳しい博士号プログラムを終えて、教育界で新しいリーダー職に就くことができたのです。

更年期の半数以上の女性に起きている

ブレインフォグ

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この女性の場合は極端でしたが、デヴィ医師は「更年期に関連して認知機能障害を経験する女性は6割います」と話してくれました。医師に見てもらうぐらい重篤な場合、認知症の前段階である「軽度認知障害」とまちがって診断されることがしばしばあるそうです。

更年期に関連する認知障害は、前立腺がん治療中の男性や、乳がん治療中の女性が経験する「ケモブレイン」ととても似ています。これらのがん治療ではエストロゲンのレベルがはげしく低下することがよくあるからです。

霧がかかったように頭がもやもやする

がん治療によっていわゆる「ブレインフォグ(霧がかかったような脳)」になる人には、「短期間の記憶、マルチタスク、言葉を思い出し適切な考えをまとめることに支障がでてきます」とは、デヴィ医師の言葉です。

彼女は、ニューヨークにあるレノックス・ヒル病院の神経科担当医で、ブルックリン在ニューヨーク州立大学ダウンステート・メディカル・センターの神経科臨床教授でもあります。

更年期に関連した認知障害は、40〜50代の女性に起こります。人生の充実期に、突然支えを失ってしまったように感じるんです」と言うデヴィ医師は、誤診されることのほうが多いと考えています。

インタビューの中でデヴィ医師は、「更年期に絡んだ認知障害のある女性は、なんらかの認知症になっているのではと不安になりますが、記憶障害の専門家のところへいくと正しい診断を受けられないかもしれません」と述べています。内科医にいくと甲状腺の病気、ビタミン欠乏症や感染症を疑われるかもしれず、女性の月経歴と認知的な症状が結びつけられることはめったにないそうです。

医師もあまり把握していない女性特有の症状

薬

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デヴィ医師が自分の報告を産婦人科の医学誌に発表することにしたのは、婦人科医を主治医にしている中年女性が多いからだったそうです。「この症状が存在することを知ってもらいたかったことと、短期間のエストロゲン治療で症状が良くなり、脳の機能を戻すことができると知って欲しかったから」

イリノイ大学シカゴ校の精神医学と心理学の教授、ポーリーン・M・マキ教授は、デヴィ医師の記事に伴う論説の中で、「閉経前期から閉経後へと移行する女性から認知障害が多く報告されているだけではなく、心理神経学の標準テストでは、とくに言語記憶のテストや執行的機能面や処理速度面でのテスト結果もよくありません」と述べています。

「ブレインフォグ」は更年期にありがち

女性たちはこの状態を「ブレインフォグ」と表現しています。患者本人や医師らは、ほてりや寝汗と関連して、睡眠不足になることが原因だと考えることもあります。ほてりや寝汗は「脳を疲れさせるものだから」とマキ教授は述べています。

しかし、これら更年期にありがちな症状が重篤な記憶問題に加わる場合、マキ教授によれば、更年期障害の症状は記憶障害の主な原因ではないそうです。

1903人の中年女性を6年に渡って調査したところでは、うつ、不安、睡眠障害、ほてりなどの更年期障害の症状は、記憶や学習の低下や、閉経期における脳の情報処理の速度などを説明するものではありませんでした。

マキ教授いわく「一番役立つのは、更年期にある女性たちがそんな経験をするのはふつうのことであると知ってもらうこと、そして、認知と気分両方の面で女性の脳はエストロゲン量の変化に影響されるということを、皆さんに知ってもらうことですね」

実際、更年期の女性が経験する症状は、エストロゲンが短期間でも減少するときには閉経前でも経験するものです。しかし、通常の生理周期とは異なり、更年期の移行はゆっくりで、ふつうは何か月、ときには何年にもわたるものなので、認知問題と結びつけて考えるのは難しくなります。

エストロゲン量は45歳ごろから減り始めますが、50歳またはそれ以降にならないと閉経が終わらない場合もあります。つまり、生理の出血が1年以上なく、卵巣からのエストロゲン量がほとんどなくなるということです。

更年期の女性が知るべきもう一つの重要な事実は、認知と気分の変化は一時的であるということだと、ゲイル・A・グリーンデール医師は述べています。グリーンデール医師は、カリフォルニア大学ロサンゼルス校デイヴィッド・ゲフィン医学部の老人病学と女性医学の専門家です。閉経後の脳は、エストロゲンの減少に対応できるようになっているようです。

更年期が終わるとブレインフォグもなくなる

快適

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グリーンデール医師は、2362人の女性を4年間追跡したある研究を指揮しました。そこで判明したのは、更年期を経験している女性の記憶と学習力は低下しましたが、更年期が終わると戻ったのです。「これによって更年期に関連した認知障害は一時的なものだと考えられます」と、グリーンデール医師と共同研究者らは結論づけています。

「脳が最適に機能していないようなブレインフォグは、一時的なものです」とグリーンデール医師はインタビューで述べています。「更年期にはなんだか頭がちょっとずれていて、もやっとしているように感じます。でも、更年期が終わるとそのもやは晴れ、霧もなくなります。ブレインフォグはいつか終わるということを女性に知ってもらいたいですね」

対処法もいろいろあります

しかし、そんなふうに更年期をやりすごしたくない人やそれが無理な人には、ホルモン補充治療のほかにも、地中海式ダイエット、早歩きのウォーキングやアルコールの消費を最低限に減らすことなど、治療の選択肢があるとマキ教授は言っています。

更年期の女性を調べた政府のWomen’s Health Initiativeに参加した中で、50代になって無作為にホルモン補充治療を受けた女性たちは、18年後の追跡調査によると死亡率が低く、またアルツハイマー病で死亡する可能性が低かったということです。このことは、エストロゲンを安全に摂取できる人は知っておくとよいでしょう。

2015年、North American Menopause Societyは、ほてりに対する非ホルモン治療法を再調査しましたが、その治療法のなかには認知関係の症状を和らげるものもありました。そのひとつは、抗うつ薬パロキセチン(パキシル)を低量摂取するものでした。もうひとつは、抗てんかん薬で、脳のエストロゲン受容体に結びつく痛みの緩和剤のガバペンチン。

マキ教授によると、重要なメッセージは、更年期に関係した認知問題は「女性の人生の質を下げなくてもいい」ということ。ただし、女性本人が正しい診断と治療のために、症状への前向きな姿勢と行動を取ることは必要になるでしょう。

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©2018 The New York Times[原文:The Brain Fog of Menopause/執筆:Jane E. Brody](翻訳:ぬえよしこ)

ぬえよしこ(翻訳)

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