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今増えている女性のアルコール依存。なぜ?

Prevention カラダや心を健康にする予防習慣

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MYLOHAS編集部

アルコールの健康被害が広く知られるようになり、社会的な関心が高まっているにもかかわらず、女性のアルコール使用障害は2002年から2倍近くも増えています。いったい、どのような背景があるのでしょうか?

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ジュリー・ピッツさんは、自分が飲むお酒の量について、ごく普通の程度と思って今までの人生の大半を過ごしてきました。彼女は47歳、前職は家具デザイナー。大学時代を振り返ってみると、お酒は頻繁に飲んでいたそうですが、「つぶれるまで飲んだことは一度もない」とのこと。卒業後、ピッツさんはニューハンプシャーからボストンへ移り、『セックス・アンド・ザ・シティ』の登場人物のごとくジミー・チュウの靴で街を闊歩し、友人たちとよくバーをはしごしていたそう。彼女は自分の飲み方に特に問題があるとは思わなかったそうですが、人間関係をよくするためにお酒の力を借りていたことは認めており、「私はいつも、人付き合いのためにお酒を飲んでいました」。

その後、ピッツさんは結婚し、二児の母となりました。お酒の量も減り、週末のディナーやご近所の懇親会でも、グラス1杯か2杯のワインを飲むくらい。でも、上の娘が幼稚園に行きはじめて家具販売の仕事に復帰すると、母親業とフルタイムの仕事との両立に苦労するように。いつしか、ワインをおかわりして飲むことが日々の習慣となりました。「仕事と家庭の両立というプレッシャーから逃れるために、どうしても必要だったのです。仕事も、ふたりの娘の子育てもなかなかうまくいかなくて。たとえ一時でも、そのすべてから解放されたかったのです」

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ジュリー・ピッツさんと長女のケイリー(12歳)、次女のクロエ(9歳)。ピッツさんはお酒についての考え方を改めたそう。

昨年の夏、ラジオ番組を聴いていたピッツさんは、週に15〜16杯ドリンク飲むと「問題飲酒」とされることを知りました。「私は、自分も気をつけなくてはいけないと思いました。」彼女は、飲酒の習慣を変えることを決意。ピッツさんは今、在宅勤務をしていますが、最近では週末やつきあいでお酒を飲むときでも、ワインをグラス1杯飲む程度で、それ以上はほとんど飲まなくなりました。

アメリカの国立アルコール乱用・依存症研究所(NIAAA)が2017年に公表した大規模な研究によると、全米で女性のアルコール中毒および依存の患者数は2002年から2013年のあいだに83.7%も増えたとのこと。医療現場では、「アルコール依存症」という言葉にかわって「アルコール使用障害」という用語が使われるようになりましたが、どちらも同じ状態を指します。アルコール中毒、そしてアルコールが原因で起こる強迫的、非適応的な行動が主な症状です。アルコール切れたときに起こる身体的な離脱症状、いわゆる禁断症状も、アルコール中毒の症状のリストに加わります。(適切な飲酒量をコントロールできなくなること、感情の平衡を保てなくなること、お酒を飲むことを強迫的に考えてしまうことなど)

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国立アルコール乱用・依存症研究所の研究の共著者のひとりで、疫学・生物測定学部門でチーフを務めるパトリシア・チョウさんは、公衆衛生の危機であるととらえ、女性に注意を呼びかけています。ハイリスクな飲酒は国立アルコール乱用・依存症研究所の定義によると、1日に3ドリンク、あるいは週に7ドリンクより多く飲む場合は、約200の病気に関連するそう。その病気には、がんや精神障害も含まれます。(また、同じ研究によって、ハイリスクな飲酒をしている人の割合が、11年間で男女ともに30%近く増えたことが明らかに)

アルコール障害を抱える女性の数が着々と増えていることについて、研究者と医者は憂慮しています。「私たちがいくつかのデータを見てきたなかで、アルコールの消費量とアルコールに関わる問題が歴史的に増加していることが分かりました。現在、アルコール障害を抱える女性の数の増え方は、男性の増え方をしのいでいます。このような急激な増加を目の当たりにすると、今後女性がますます多くの病気を抱えていくのではないかと心配せざるを得ません」と、疫学の専門家でコロンビア大学の准教授を務めるキャサリン・キースさん。

ダブルの負荷

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女性の飲酒が急増している背景には、ピッツさんのケースのように、ワークライフバランスのストレスと不安が原因のひとつになっていると指摘する専門家も。ウォートン校ビジネスエコノミストの二つのレポートによると、現在の労働年齢の女性は、40年前の母親世代と比べると、より不幸になっているとのこと。また、男性と比べた場合でも、女性はより不幸であるとの結果が。1972年の調査で「とても幸せである」と回答した女性は男性より4%多かったのに対し、2006年に「とても幸せである」と回答した女性は男性より1%少なかったそう。

さらに、アメリカ進歩センターによると、1976年から2006年にかけて、アメリカの典型的な中所得家庭の労働時間は、1週間あたり11時間ほど増加したそう。それから5年後、仕事と家庭のためのセンター(The Center for Work and Family)の報告によると、全米で両方の親が育児にかかわるべきであると考えている父親が65%いるにもかかわらず、実際にたった30%の父親しか育児を手伝っていないとの結果が。現在、女性の飲酒が増えている背景に、仕事と家庭の両立の難しさが浮かびあがってくることが、国立アルコール乱用・依存症研究所の研究によって裏付けられると考えられます。

また、女性をアルコールに向かわせるストレス要因のトップとして、まったく別の理由もあります。それは、強力なマーケティングの力。この20年、お酒がストレス解消にすばらしい効果を発揮すると、アルコール飲料業界は女性を説得し続けてきました。「特に若い女性はかっこうのターゲットとされ、ポーションタイプの甘い発泡性のお酒や“初心者向けカクテル”が販売されてきました」と、ジョンズ・ホプキンズ・ブルームバーグ公衆衛生大学院で准教授を務めるデイビット・ジェルニガンさん。

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ピッツさんがディナーのときに飲むワインは、1杯だけ。

アーティストのタミ・サラスさん(47歳)は、2002年から2008年まで、カリフォルニア州ソノマ郡でグルメ・オウ・ベイ(Gourmet au Bay)というワインバーのオーナーをしていました。最初の3年間、サラスさんはお酒を飲みませんでしたが、そのうち友人たちとお酒のボトルを囲むように。「女性は、マティーニ・ナイトなどのイベントで中心となっていました」とサラスさん。「そのような仲間がいたことは今でも懐かしいです。でも、イベントを懐かしく思う気持ちはありません。」

サラスさんがバーのオーナーを務めていた頃、ワインやビールの新しいブランドは「スキニーガール(Skinnygirl)」、「マミージュース(Mommy Juice)」といったような名前で売られていたそう。今でも、似たような名前を持つブランドがソーシャルメディアで幅をきかせています。ある産業レポートによると、2011年アメリカの飲料ブランドで最も急成長したのは「スキニーガール」で、前年比最高388%の売り上げを記録。その後、国際的な飲料メーカーに買収されたとのこと。

飲んだのは、逃げるため

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アルコールはケリ・ウィギントンさんが不安に対処する助けとなった。彼女にその自覚がなかったとしても。

女性の飲酒の増加に影響を及ぼす要因は、他にもあります。ケリ・ウィギントンさんはコロラド州に住む、36歳のジャーナリスト高校時代に慢性うつ病と診断され、20代のときに全般性不安障害と診断されました。そんな彼女がはじめてほろ酔いになったとき、「こんな幸せを感じたのは初めて、と思ったことを覚えています」と言います。ウィギントンさんは、友達と一緒にウォッカとワインを飲んで、一日中ため込んだ不安をなんとか処理していたそう。無意識のうちに、ストレスとうつをアルコールによって解消していたわけです。最初は週末だけだったのが、やがて毎日の習慣となり、最終的にはひとりでも頻繁に飲むように。そこで彼女は事実と向き合いました。

昨秋、ウィギントンさんは飲酒習慣を自分でコントロールすることを決意。そして、瞑想とマインドフルネスのトレーニングをすることで、お酒をやめることができました。「夕食を作るときは、ジンジャーティーを飲んでいます。そして、デザートのときは、カフェインフリーのチャイティーを。前だったら、カクテルかグラスワインでした」とウィギントンさん。

ウィギントンさんが禁酒に成功したことを、友人たちは諸手を挙げて喜んでいたわけではなかったそう。「みんな、一緒に飲んでほしいと思っています。自宅で1〜2杯飲むくらいは本格的な飲酒に入らないと思う人が多いですよね。だから、お酒を飲まない理由を自分自身に対して常に言い聞かせなければなりません」。でも、しばらく経った後は、彼女の友人たちも、お酒の量を控えることに関心を持つようになったとのこと。

女性は違っている

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40歳から60歳までの女性を対象とした2015年の世論調査によると、65%を超える人が程度の多少はあれ、ローリスクな飲酒ガイドラインに沿った飲み方をしていない、との結果が。ガイドラインを無視した飲み方は、非常に高いリスクを伴います。昨年の11月に発表されたアメリカ臨床腫瘍学会の研究によると、大量のアルコールを摂取すると、頭部および頸部のがんの発症リスクが500%以上も高くなる可能性があるとのこと。その報告では、現在お酒を飲まない人は飲みはじめないほうがよい、と警告されています。

なぜなら、女性がお酒を飲んだ場合、アルコールに関係する健康問題を非常に抱えやすいからです。ハゼルデン・ベティ・フォード財団(Hazelden Betty Ford Foundation)の青少年部門のメディカルディレクターを務めるジョセフ・リーさんによると、「ホルモンや代謝の面で、男性と女性の体は異なっています。そして、長期にわたるアルコール摂取に対する耐性も違います」とのこと。

女性と男性を比べると、平均して女性のほうがたくさんの体脂肪を抱えています。体脂肪に含まれる水分の量は少ないので、女性がアルコールを飲んだ場合、アルコールを薄めるための水分の量が少ないことになります。そのうえ、女性はアルコール脱水素酵素という重要な代謝酵素の量が少ないため、体内のアルコールを分解、除去しにくいのです。その結果、血中にとどまるアルコールの濃度が高くなります。また、ホルモンの量の変化もお酒を飲んだときの酔いやすさに影響し、エストロゲンの量が多いときには、酔いやすくなります。

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ウィギントンさんは現在、ウォッカを飲むのではなく、瞑想することでネガティブ思考から抜け出します。

アルコールによる死者の数は、アメリカ国内だけでも毎年、8万8千人。死因は膵炎、肝硬変、離脱症状、多量飲酒によるその他の健康被害。アルコールに関連して救急にかかった女性の数(特に、25〜34歳まで)は増え続けています。学術雑誌『アルコーリズム・クリニカル・アンド・エクスペリメンタル・リサーチ(アルコール依存症:臨床的、実験的研究)』誌に最近、論文を発表した研究主任のアーロン・ホワイトさんによると、慢性的なアルコール飲用で救急救命室に来る人の男女差が小さくなっているとのこと。「慢性的なアルコール飲用と関連した救急患者に、若い女性が特に大きく増えているので驚いています」とホワイトさん。「誤ったアルコールの飲用を何年も続け、典型的な健康被害を抱えてしまったのです」。

それだけではありません。一日に4ドリンク以上のアルコールを飲む女性は、心臓病による死亡リスクが高まります。大量のお酒を飲む男女で、致命的な脳出血のリスクを抱える人を比べると、女性は男性の5倍も高くなっています。コロンビア大学のキースさんによると、「アルコールへの依存性についての臨床的なデータによると、初めてお酒を飲んだときから依存するまでの時間は、女性のほうが短いことが示されています」。

チューさんによると、男女差は1966年以降に生まれた年代で一番小さいとのこと。「女性のアルコール飲用、多量の飲酒、アルコール使用障害の着実な増加には、注意が必要です。男女差の減少にも、大きな関心が寄せられています」。アルコールによる社会的、医学的、経済的影響を減らすことを目標とした世界保健機関(WHO)が目指す方向と、今の状況は、正反対の状況だそう。

新しいガイドラインが必要

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クレア・ジョーンズさんは、現在22歳になった息子が大学進学のために家を出ると、毎晩ワインのボトルを開けるようになりました。ジョーンズさん(仮名)はニューヨークに住む52歳のライターです。友人たちと出かけるときは、皆と一緒に飲んできますが、帰宅後に改めてもう一本ワインの栓を抜きます。数カ月の間、ひそひそと飲酒を続けているうちに、孤独を感じるようになりました

「空の巣症候群には気を付けるようにと散々言われていたのに、実際にそうなってみると、全然うまく対処できませんでした」と、当時を振り返って言います。「家の中は突然、シーンとしてしまいました。雑音や音楽が聞こえないのが寂しくて。ボートの合宿で午前5時に出発するとか、そういう面倒なことでさえ懐かしかった」。飲酒の問題をなんとかしなくては、という自覚はあるのですが、医師に相談するのをためらっています

このように、アルコールという落とし穴にはまってしまうケースはよくみられます。「同じ量のお酒を飲んでも、男性よりも女性のほうが、アルコールによる影響が大きいです」とキースさん。「そして、不適切なアルコール使用について、周囲からより非難され、排除されるのも、女性です」。つまり、別の言葉で言い換えると女性にはたくさんの社会的プレッシャーがある。そして、社交の範囲でグラスワインを飲むうちは許されても、それがひとたび問題のある飲み方になると、罰せられる、ということ。

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ジョンズ・ホプキンズ大学院のジェルニガンさんによると、アルコールを販売する際は、消費者向けの基本的な情報をラベルに明記すべきだそう。お酒についての特別な警告のほか、成分、カロリー量、内容量が必要です。特に、内容量は重要。なぜなら、自分が飲んでいるお酒の量が、アメリカの食事のガイドラインで規定されている「1杯」ではなく、「2杯」に該当するのだということを人々がきちんと理解できていないと、ローリスク飲酒のガイドラインの意味が損なわれてしまうからです。他にも、ローリスク飲酒のガイドラインをそれぞれの容器に明記するべき、という意見も。

ジュリー・ピッツさんのケースを考えると、注意書きを増やすことで状況が改善する可能性があるかもしれません。彼女は、前のようなお酒の飲み方をやめてよかったと思っています。「でも、人がつい、お酒を飲んでしまう気持ちは、分かります」。

飲酒のもたらす危険を理解すれば、「あともう一杯」をやめられるかもしれません。

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Ann Dowsett Johnston/Why Are More Women Than Ever Addicted to Alcohol?
訳/STELLA MEDIX Ltd.

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