緑茶(※1)が世界から注目を集める存在となっています。その人気を後押ししているのは世界的な日本食ブームであり、このブームの背景にあるキーワードこそ「健康」

緑茶が身体にいいとはよく聞きます。が、夏は特に積極的に摂取すべき飲料なのだそう。というのも、紫外線を浴びた肌ケアにも、水分補給にも、緑茶が効果的なのです。

海外ファン獲得に至った経緯や、緑茶に秘められた健康パワーについて、専門家にお尋ねしました。

各国でスター扱いされている緑茶

shutterstock_763343020
image via Shutterstock

緑茶が世界からどのくらい注目されているかというと、2017年、その輸出量は前年比13%増の4,642トンにのぼり、輸出額は144億円で前年比24.3%増と、1988年の統計開始以降、数量・輸出額とも過去最高を記録したほど(※2)。

ちなみに輸出先のトップ2は、アメリカと台湾。そして緑茶のなかでも特に伸びているのが、抹茶の輸出量です。日本茶の普及活動を行う日本茶インストラクターのブレケル・オスカルさんによれば、その理由は次のとおり。

「アメリカ発のスターバックスが抹茶スイーツを売りはじめたことなどによって、認知度が高まった可能性が示唆されています。一方、台湾の若者は、抹茶に対してクールでかっこいいイメージを持っているようなんです」(ブレケルさん)

ビタミンCによる高抗酸化作用

shutterstock_1073355512
image via Shutterstock

ヘルシードリンクとして親しまれるようになった緑茶が、夏に最適とされる理由は、大きくふたつあります。

ひとつは、ビタミンCの豊富さ。緑茶には体内で生成できないビタミンCを含む、13種のビタミンが含まれています。このビタミンCは、紫外線を浴びることによって生まれた活性酸素のはたらきの抑制をサポートし、シミやソバカスができにくい肌へと導きます

さらにコラーゲン生成過程でビタミンCは必要となり、その含有量が高い緑茶を飲むことは、血管壁が脆弱化して起こる壊血病などの原因予防にも効果が望めるのだとか。

なお、ウーロン茶や紅茶は、緑茶と同じ茶葉ではあるものの、製造工程の途中でビタミンCがほとんど失われてしまうため、抗酸化作用は期待できません。

テアニン効果でカフェインのはたらきを緩和

緑茶にはカフェインが含まれています。そのため緑茶は利尿作用を持ち、興奮作用をもたらす、あるいは水分補給に適さないとのイメージを抱かれがち。しかし緑茶に含有されるアミノ酸の半分以上を占めるテアニンが、それらのマイナス要素を払拭してくれます。これがふたつ目の理由。

伊藤園の調べによれば、テアニンは脳の神経細胞を保護するはたらきを持っており(※3)、テアニンを摂取した場合の人間の脳波を測定したところ、リラックス状態のときに多く出現するα波が上昇することがわかりました(※4)。お茶1杯あたり15〜30mgのカフェインであれば、テアニン効果で興奮作用は穏やかなものに。

またテアニンは、水分が吸収前に尿として排出されてしまうことをも防いでくれるのだとか。伊藤園の別の研究では、カフェイン:テアニン:アルギニンの比率が、1:2:2のお茶がもっとも水分補給に好ましいという結果が出ています(※5)。

生活習慣病予防にも期待できる

緑茶のメリットは、夏の悩み対策に限りません。前述のビタミンCのほか、抗酸化作用で知られるポリフェノールの一種であるカテキン血中コレステロール値を下げるクロロフィルも含まれており、生活習慣病の予防にも役立つのだそう。

ニーズに合わせた緑茶の抽出法

shutterstock_127599530
image via Shutterstock

暑い時期には冷茶でいただきたいけれど、緑茶パワーが損なわれないのでしょうか? この疑問について、茶葉の成分と身体に与える影響について研究をしている理学博士の物部真奈美先生にお答えいただきました。

「冷やしても、緑茶の効果はもちろん得られますが、抽出水温によってカフェイン量は変化します。農研機構の実験によれば、お湯での抽出と比較すると、水温10度では約50%、0.5度では80%近くカフェイン量が減少するというデータが(※6)。よって就寝前などカフェイン量を減らしたいときは、水出しまたは氷水出しをするといいですよ」(物部先生)

冷水を使用しても、1時間ほどで成分は抽出可能。ただし、冷水で抽出する場合は茶葉をよく開かせる必要があるため、ティーバッグや大きめの出汁パックを使うとベター。室温下では細菌の繁殖が危惧されるので、冷蔵庫保管が必須です。

一方、気分をシャキッとさせたい日中などは、お湯で淹れた緑茶がおすすめ。「好みもあるのでなんとも言えないところもありますが、茶葉2〜3gを水100〜200mlで抽出するのがおいしく淹れるコツ」 とのこと。

緑茶の種類によって効果に違いはある?

抹茶、煎茶、ほうじ茶によって水溶性成分に違いがあるのだそう。

「一般的に抹茶は、煎茶やほうじ茶と比べてカフェイン、テアニン、EGCg(エピガロカテキンガレート)が多いのが特徴です。ほうじ茶は、カフェイン量は元の茶葉の約40%減になっているものの、アミノ酸やカテキンがほとんどありません」(物部先生)

ということは、夏の健康を意識して緑茶を摂取するならば、抹茶や煎茶を選ぶとよさそうです。

日本人にとってなじみ深い緑茶。そのパワーを知り、抽出法による違いを踏まえたうえで、残りの夏を元気に乗り切りましょう。

もっとお茶を知ろう

※1 発酵、もしくは酸化させていないお茶の総称
※2 財務省貿易統計より
※3、4、5 伊藤園 お茶百科より
※6 農研機構 果樹茶葉研究部門による測定結果(茶研報122.13.2016)

Ranking

RELATED ARTICLES