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暑い夏、ひときわおいしく感じるのがレモンフレーバー。健康的な食事として評価が高まる地中海食にもレモンは不可欠。肉、魚介、野菜など、どんなメニューにもレモンが組み合わせて食べられています。

最近ではビタミンCによる美容効果だけでなく、骨密度の低下やメタボ対策食材としても注目されるレモン。レモンが持つ知られざる可能性を、世界の研究成果からご紹介します。

10世紀から愛されるスーパーフルーツ

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レモンといえば「ビタミンC」というイメージがありますが、それだけではありません。レモンの「すっぱい」の元になるクエン酸は、疲労回復に欠かせない成分。カルシウムなどのミネラルを溶けやすい形にする“キレート作用”にも注目が集まっています。

レモンに含まれるポリフェノールの一種、エリオシトリンやヘスペリジンは優れた抗酸化作用を持ち、生活習慣病の予防に効果的と言われています。また、レモンの酸味は塩味を引き立てるため、減塩時に使うと塩分をより感じることができ、満足度もアップ。

さらに、レモンの香り「リモネン」にはリラックス効果があると言われ、忙しい女性の“食べるアロマテラピー”にもおすすめ。まさにレモンは、10世紀半ばから人類に愛され続けるのも納得のスーパーフルーツなのです。

レモンがカルシウムの吸収率を上げる? 骨密度がアップ

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さまざまなメリットのなかでも、先進レモン効果研究の専門家であり、県立広島大学保健福祉学部 理学療法学科教授・レモン健康科学プロジェクト研究センター長である飯田忠行先生が注目するのが、クエン酸が持つキレート作用です。

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「クエン酸はカルシウムを“カニばさみ”のように挟み込む性質があり、腸からのカルシウム吸収を促進してくれます。牛乳やヨーグルトとレモン果汁を混ぜ、効率よくカルシウムを摂取することで、体内のカルシウム濃度を一定に保ち骨密度の低下を抑制できる可能性があります」(飯田先生)

ある調査では、閉経後の中高年女性40名を中心に、レモン果汁30ml(レモン1個分)とカルシウム350mgを含むレモン果汁飲料を6ヶ月間継続摂取してもらったところ、骨密度は摂取後3ヶ月に有意に増加。摂取6ヶ月後においても、よい数値が維持されていました。また、骨からのカルシウム溶出も、摂取一ヶ月後より減少し、6ヶ月後より有意に低い値を示したといいます(※1)。カルシウムを含むレモン果汁飲料を継続摂取することにより、中高年女性の骨密度を改善する可能性があることがわかったのです。

1日1レモン。貧血やメタボ対策にもレモン

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意外なことに、貧血気味の女性にもレモンがよいそう。鉄欠乏させた貧血ラットを用いた調査では、鉄のみを与えるよりも、鉄とクエン酸、あるいはレモン果汁を同時に与えることにより、鉄吸収促進の効果が見られたといいます(※2)。

県立広島大学保健福祉学部の堂本時夫教授(2013年当時)は、レモンに含まれるフラボノイドには脂質の代謝を改善する働きがあり、メタボの予防・改善に大きな期待が持てると述べています(※3)。

また中高年女性111名を対象に、レモンの摂取量と各検査項目の数値変化を解析したところ、レモンをもっとも多く摂取しているグループ(1日平均0.7個以上)の最高血圧が、全グループの中でもっとも低かったとのこと。レモンの摂取量が多い人ほど食欲コントロールもしやすく、糖や脂肪の代謝に関わる善玉ホルモン「アディポネクチン」濃度の変化量も大きいことが判明しました(※4)。

女性にも「隠れメタボ」が増えている現代。1日1個以上を意識してレモンをとることでメタボ予防が期待できるということは、覚えておいて損のない知識です。

レモンで血管を丈夫に、高血圧予防をサポート

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いっぽう血管力の研究をしている医学博士であり、心臓、血管、血液のエキスパートの池谷敏郎先生によると、ビタミンCが豊富なレモンには血管を丈夫にする効果が期待できるとのこと。

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「レモン水にタマネギを入れると、タマネギの辛み成分が抜けやすく、かつ抗酸化物質ポリフェノール類の流出を抑えることがわかっています。レモンを毎日の生活に取り入れて丈夫な血管を作り、若く健康な体作りを心がけたいですね」(池谷先生)

さらに高血圧の予防対策にも、レモンの可能性が示唆されています。別の調査で5%に希釈したレモン果汁を、90日間、高血圧自然発症ラットに与えたところ、血圧が低くなる傾向がみられたそう。また、レモンフラボノイド類を16週間にわたって与えた結果、血圧の上昇が抑制される結果が出たといいます(※5)。

血圧が気になる人には、ウォーキングとレモンの組み合わせもおすすめです。県立広島大学保健福祉学部の研究者が広島県の中高年女性101名を対象に調査したところ、レモン摂取量と歩数には、最高血圧の変化量と負の相関が見られ、「レモン+ウォーキング」が血圧の低下に影響を及ぼす可能性があると発表しています(※6)。

世界の研究機関で、さまざまな検証が進むレモンの栄養効果。今後も新しい知見がいろいろと出てきそうです。

表皮をチェック。おいしいレモンの選び方

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栄養豊富なレモン、せっかく選ぶなら新鮮でおいしいものを選びたいですよね。おいしいレモンを見極める達人、JA広島果実連の及川正明さんによると、「形が整っていて、表皮がつるんとキレイ、皮に張りとツヤがあり、ずっしりと重みのあるレモンは果汁が豊か。表皮がボコボコしているものは内部の白い皮が多く、果汁が少ない場合がある」とのこと。

フレッシュなレモンは、さっと絞って飲み物に混ぜたり、調味料がわりに使うなど、応用範囲が広いのも魅力。後編では「塩レモン」ブームを作った管理栄養士の柴田真希さんが開発した「さっぱりレモンレシピ」をご紹介します。

特集:疲労回復 ー疲れとうまく付き合うためにー

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※1 The Effects of a Calcium-Fortified Lemon Drink on Bone Metabolism in Postmenopausal Women International Medical Journal 2017,Vol24,No.3,pp279-283 より
※2 Effects of Critic Acid and Lemon Juice on Iron Absorption and Improvement of Anemia in Iron-Deficient Rats,IFood Science and Technology Research 2012,Vol.18 No.1 pp127-130 より
※3 「レモンと健康」に関する研究の動向 人間と科学:県立広島大学保健福祉学部学部誌 13(1),1-9,2013-03 より
※4 日常的なレモン摂取によるメタボリックシンドローム関連指標への影響 Health Sciences,26,4,2010,Vol.26 No.4 pp210-218 より
※5 Suppressive Effect of Components in Lemon Juice on Blood Pressure in Spontaneously Hypertensive Rats,Food Science and Technology International,Tokyo 1998,Vol.4,No.1 p29-32 より
※6 Effect on Blood Pressure of Daily Lemon Ingestion and Walking Journal of Nutrition and Metabolism 2014,Vol.2014,Article ID 912684,6 pages より

文/田邉愛理、企画・構成/寺田佳織(マイロハス編集部)、image via shutterstock

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