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車椅子の医師が、医療を変える

The New York Times

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障害者カードを拒んだ妹

私の妹は、家族での外出時、決して青い「障害者」カードを車につけさせなかった。

3か月の早産により脳性麻痺を持って生まれた妹は、歩くのに松葉杖を使っていた。にも関わらず、ショッピングモール入口近くの障害者用駐車場ではなく、巨大な駐車場を歩きたがった(とくに、駐車場がものすごく混むクリスマスの買物シーズンには、私はイラついたものだ)。

私たち一家は、障害者に対する偏見が少なく支援もしっかりしていると聞いて、米国に移住した。私の妹は、米国障害者法(ADA)が可決した年に生まれた。ADAは、米国が平等にコミットし、実践することを再認識する法律だ。

医療は必ずしも平等ではない

米国民の2割、5,700万人近い人が、何らかの障害を持って生きている。そして、そのなかには8%の子供と10%の非高齢成人が含まれる。医療専門家は病人の世話をするのが使命だが、障害者のニーズには十分に応えられないことが多い。

(米国の場合)障害者は、たとえばがん検診、インフルエンザ予防接種、視力や歯科検診など、定期的な医療ケアを受けられないことが多い。また、肥満、喫煙、高血圧といった心血管系のリスクがあっても、治療や指導を受けていない割合が高い。メディケア加入者を見た場合、健常者に比べ、コストを憂慮して治療を受けない割合が2倍以上だ。さらに障害者のニーズに対応してくれる医師を見つけるのは、3倍難しい。

このような状況に応じるためには、医科大学のカリキュラムにおいて、問題に注意を払うよう呼びかけるのが一般的だ。それは解決策の一部にはなるかもしれないが、私自身が勉強した経験からいくと、限界があると言わざるをいえない。それよりも研修医や医師の心を動かすのは、特定の障害がどのように日常生活に影響するか(あるいはしないか)を理解する、障害を持った学生、同僚、メンターだろう。

米国の2割の病院が障害者を治療できない

受診の障害となるのは、障害そのものよりも、交通手段や使える医療機器がないなど、医療体制にあることが多い。こうした構造上の問題に加え、偏見、コミュニケーション上の問題、臨床医やスタッフの訓練不足など、文化的問題が絡んでくることもある。

最近、250以上の専門病院に電話をかけ、架空の患者の予約をとるという調査が行われた。「体に一部麻痺があるため、車椅子から診察台に自力で移ることができない」と伝えたところ、建物が車椅子に対応していない、高さを調整できる診察台がない、患者を移動させる訓練を受けたスタッフがいないなどの理由で、2割以上の病院が予約を拒んだという。また予約を受けた病院の中でも、患者を動かすのに必要な機器がない、診察の一部を割愛せざるをえないかもしれないと答えたところが多かった。

さらに憂慮されるのは、同じ病気にかかっても、障害者は同じ治療を受けられない場合があることだ。たとえばある調査によると、乳癌にかかった障害者は乳房温存手術を受ける割合がずっと低く、受けたとしても、その後の化学療法を受けないことが多い。結果として亡くなる割合が、3割も高かった。

また、子宮頸癌の検査や避妊に関する指導や、禁煙のカウンセリングを受ける割合が低いこともわかっている。

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自分の障害とリハビリのおかげで、患者への接し方が根本から改善したというグレゴリー・スナイダー医師。2017年6月30日、ボストンのブリガム・アンド・ウィメンズホスピタルで撮影(Kayana Szymczak / The New York Times)

ほとんどの人は、いつか何らかの障害を抱えることになる

米国民の2割が障害を持っているにも関わらず、障害を持つ医師の割合は2%に過ぎない。医大に入学できる身障者も少ないし、必要なサポートが受けられないために勉学を断念する率も高い。

マサチューセッツ・ゼネラル・ホスピタルでレジデントを務めるC. リー・コーエン医師は、両耳の聴力を一部失っているが、増幅聴診器を使って、患者の心臓や肺を診察している。医大ではFM送信機を活用して聴講していた。

コーエン医師は、耳の不自由な高齢の患者とのコミュニケーションが得意だという。「よく聞こえない時は、脳が一定のやり方で単語や音節を分析するんです。ですからもう一度同じことを言ってもらうのではなく、違う言い方をしてもらうようにしています。そうすることでどの音がよく聞こえないのかがわかりますから、自分の言い方もそれに合わせることができるのです」

ボストンのブリガム・アンド・ウィメンズホスピタルのグレゴリー・スナイダー医師は、医大生だった時に脊髄を損傷して下半身が麻痺した。車椅子を使っているが、時々患者に間違えられるそうだ。だからといって、それがマイナスなわけではない。「いずれは私たちの誰もが患者を経験するのです。それは、全く予期していない時かもしれません」

ほとんどの人は、生涯のある時点で何らかの障害を抱えることになる。80歳以上の米国人の2/3以上は、運動、感覚、認識機能いずれかの障害を持っている。

患者の隣に、同じ目線で座る

スナイダー医師は、事故後、長い回復への道をたどりながら、患者としての生活に慣れるのに苦労したことを覚えている。しかし自分の障害とリハビリのおかげで、患者への接し方が根本から変わり、それがよかったと言う。

「事故に遭わなければ、僕は長身、ブロンド、青い目で、白衣姿でベッドの近くに立つ白人の医師になっていたことでしょう。今の僕は、患者さんの隣に車椅子に座っている、親しみやすい人間です。患者さんは、僕が自分と同じようにベッドで過ごしたことを知っています。そこには、特別な意味があると思います」

障害を持つ医師を含め、多様な人が働くことは、患者にも医師にもプラスになるだろう。様々な背景を持つ患者は、自分に近い医師の方が安心するものだし、それは障害者も例外ではない。

私の妹は幸いにも、異なる能力や考え方を理解し、偏見を覆す環境を作ろうとするメンターや仲間に恵まれた。彼女は最近医大を卒業し、放射線腫瘍の研修医として働いている。

© 2017 The New York Times News Service[原文:Doctors with Disabilities: Why They're Important /執筆:Dhruv Khllar(ニューヨーク・プレビステリアン・ホスピタル医師)] (翻訳:スマキ ミカ)

MYLOHAS編集部

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