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ネットの時代にあえて紙面で。独立系フードマガジンの新潮流

The New York Times

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米料理雑誌の新潮流を作っているフードマガジンの数々。(Patricia Wall/The New York Times)

いかにも異国情緒たっぷりで、お決まりのビジュアルをあわせた単純な紹介記事ばかり。料理雑誌でのアジア料理の取り上げられ方にうんざりしていたイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校のシェーン・チャマバニジャクルさん(20)。そこで一念発起、自分で料理雑誌を立ち上げることにした。

大学1年目が終わった昨年の夏、タイにルーツを持つ彼女はメキシコ料理チェーンでアルバイトをし、原稿を書いてくれる人たちのためにバイト代を貯金。友人や家族からも資金面、編集面で支援してもらい、料理雑誌「Dill」の創刊号1万部を発行した。インドネシアのソトアヤムからフィリピンのパンシット・プソまで、麺料理の特集だった。

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イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の学生、シェーン・チャマバニジャクルさんが創刊した新フード雑誌「Dill」。(Patricia Wall/The New York Times)

「私たちの見せ方は、奇をてらったものではありません」とチャマバニジャクルさん。「食べ物って風変りでもなければクールでもないし、特に気を張るものでもない。異国風に描くことには関心がないんです」

新しいフードマガジンが続々登場

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元ソムリエのスティーブン・サターフィールドさんが手掛ける料理季刊誌「Whetstone」。(Patricia Wall/The New York Times)

古くからある料理雑誌は売れ行きが落ち、スタッフを削減しているこのご時世にあって、アメリカで元気なのが「Dill」のようなフードマガジン。若いエディターたちが少ない資金でやりくりし、発行部数も限られているが、あくまで紙媒体としての雑誌にこだわり、洗練されたビジュアル、力強い視点、そしてテーマへの情熱を打ち出している。

ここ数年の間に「Ambrosia」、「Compound Butter」、 「Jarry」、 「Kitchen Toke」、「Peddler」、「Kitchen Work」といった新しいフードマガジンが続々と登場。全米の料理雑誌が集まる「フードブックフェア」の共同ディレクター、キンバリー・チョーさんによると、同フェアの中で独立系マガジンを集めたイベント「フーディエオディカルズ(Foodieodicals)」への参加はここ6年で、約10誌から30誌に増えたという。

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料理とクィアカルチャーをつなぐ年2回発行の「Jarry」。(Patricia Wall/The New York Times)

こうした料理雑誌の多くは美しくて魅力的。カラー刷りの豊かな誌面にはオリジナルアートや、時間をかけて読みたくなる味のある記事が満載だ。価格は20ドル前後と高めのものが多いが、内容はそれだけの価値がある充実ぶり。インターネット配信はせずに100%印刷メディアだけという雑誌もある

こうした新しい料理雑誌の編集部は小さく(たいていは1~2人)、発行部数も150部程度から多くて1万5,000部と少ない。けれどオリジナリティと野心にあふれ、従来の料理雑誌では取り上げられないテーマや、伝え方に誤解があったテーマに焦点を当て、独自の言葉で語っている。

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毎号、異なる街の食文化にフォーカスする年2回発行の「Ambrosia」。(Patricia Wall/The New York Times)

「インディーズ系のフードマガジンの多くは自分たちが読みたい記事、語りたいストーリー、自分や友人たちの経験を伝えるものを作りたいという気持ちから始まっています」とチョーさんはいう。「『ボナペティ』や『サブール』のようにものすごく数が出なくてもいいし、何よりもそうしたことを試みてもいません」

こだわりの世界にあう読者層に焦点

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2014年、高級料理雑誌として創刊した後に食関連のエッセイや詩、アートを取り上げる実験的な雑誌に変身した「Compound Butter」。(Patricia Wall/The New York Times)

「Dill」を創刊したチャマバニジャクルさんは、読者が少ないことはかえっていいことだと思っている。「他の雑誌はとにかく広い範囲の読者に合わせようとするから、内容が限られてしまいます。私たちにしてみれば、とにかくすべてが古風。私たちは遠慮なくやっています」

例えば、最近までサンフランシスコの有名レストラン「コイ」で働いていたパティシエのニック・マンシーさん(29)は、自らデザインソフトを駆使して年に2回、「Toothache」というフードマガジンを発行している。コンセプトは、料理人が作る料理人のための雑誌。だから「専門用語を説明なしで使える」し、レシピ紹介は「プロのキッチンにいるみたいに」簡潔だ。

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パティシエのニック・マンシーさんが編集する年2回発行の「Toothache」。(Patricia Wall/The New York Times)

ニューヨークでマック・マリコウスキーさん(30)が発行するフードとゲイカルチャーをつなぐ雑誌「Mouthfeel」も、独自のこだわりを貫いている。2015年から毎年1回、オンライン版で最大1,000部を発行。ドラァグクイーンのディナーパーティなど、メインストリームの料理雑誌では取り上げられることのなかったカウンターカルチャーなフードストーリーを掲載している。マリコウスキーさんはライター業や彫刻家のアシスタント、舞台デザイナーなどをしながら出版資金をまかなっている。

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ベジタリアンのためのレシピについて多文化的にアプローチする年2回発行の「Peddler」。(Patricia Wall/The New York Times)

ニューヨークの独立系出版社に勤務するクラウディア・ウーさんによれば、こうした新しいフードマガジンはビジネス面ではなかなか厳しいようだ。新しい雑誌が2、3年で消えてしまうこともよくある。だが、いくつかの雑誌はそうした苦労を乗り越えて生き延び、成長している。アーティスティックなスタイリングと写真でレシピを見せる2012年創刊の「Gather Journal」や、料理に関するエッセイやコミック、詩を集めた文芸誌「Put a Egg on It」などだ。

創刊から約10年の「Put a Egg on It」でも書き手に原稿料を払えるようになったのは2年前。今年の夏の号で初めて2件広告が入るという。今はタイアップ・コンテンツの他、パフォーマンスやアートと出店を組み合わせた新しいイベントにまで手を広げようと模索している。

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元ソムリエのスティーブン・サターフィールドさんが手掛ける料理季刊誌「Whetstone」。(Patricia Wall/The New York Times)

フードサイト「Nopalize」を運営していたサンフランシスコ在住の元ソムリエ、スティーブン・サターフィールドさん(33)は、従来の料理雑誌にない多様な視点とコンテンツを求めて昨年、季刊誌「Whetstone」を創刊した。世界中のフリーランス・ライターの協力で、グルジアやメキシコ、エクアドル、コロンビアなどからも記事が届き、トウモロコシやコーヒーの由来からワイン醸造まで幅広い話題を深く掘り下げている。

メディアの新しいデモクラシーっていうのは、フラッグシップとなる媒体があってその周りにファンが育ち、それを活かしてさらに野心的で大きなプロジェクトが可能になる、っていうことだと思うよ」

© 2018 The New York Times News Service[原文:A New Generation of Food Magazines Thinks Small, and in Ink/執筆:Tejal Rao](抄訳:Tomoko.A)

MYLOHAS編集部

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