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世紀の料理人、亡きポール・ボキューズが夢見た最後の晩餐とは?

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冠ゆき

2018年1月20日、満92歳を前にして亡くなったポール・ボキューズ。もはや説明も必要ないほど有名なフランス料理のシェフ。いまの「フランス料理」の地位とイメージを確固たるものとした人物と考えて間違いありません。

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image via Shutterstock

世紀の料理人ムッシゥー・ポールが亡くなった

具体的な業績はいろいろありますが、中でもミシュランで獲得した三ッ星を50年以上も維持。ゴー・ミヨーなどでは「世紀の料理人」、「ガストロノミーの法王」とも形容されました。1月26日リヨンで行われた葬儀に駆け付けたシェフの数は、なんと1500人。白いコックコート姿が一堂に会した葬儀の映像は圧巻で、実に印象的なものでした。

フランス料理界を背負い、自らも美食家で知られた「ムッシゥー・ポール」。実は、死後の公開を条件にルポワン誌の記者のインタビューを受けていたことが、その内容とともに、このほど明らかになりました。

読むと、あくまで明るくユーモアのあるムッシゥー・ポールの受け答え。つい、亡くなったばかりだという湿っぽい状況も忘れてしまいます。

ポール・ボキューズが最後の晩餐に食べたいものは?

例えば、最後の晩餐に何が食べたいか? という質問へは、まず、招待客にこだわっています。

「それにこたえる前に、まず、同席する招待客を選ばなくてはね。だって、レストランで一人で食べるのは寂しいものだからね!料理は友人と分け合わなくては。そうだねぇ、思い切ってこういこうか。一緒に食事をしたいのは、アントナン・カレームと、オーギュスト・エスコフィエ、フェルナン・ポワン。女性は、ウージェニー・ブラジエ。フランス料理のパンテオンに残る名前ばかりだよ」

L’Expressから翻訳引用)

パンテオンというのは、フランスの偉人を祀る場所です。それからもわかるように、上に挙げられた名前はみな故人で、ポール・ボキューズは、返答を考えること自体を楽しんでいたことが感じられます。

ちなみに、アントナン・カレームは、フランス料理の創始者と言われる人物。そのフランス料理を体系化したのがエスコフィエ。フェルナン・ポワンは、ミシュランの三ッ星を最初に獲得したレストランのひとつ、ラ・ピラミッドのシェフ。ポール・ボキューズの師でもあります。紅一点ウージェニー・ブラジエも、1933年最初のミシュランの三ッ星を獲得したレストランのシェフで、長い間三ッ星を保持するだけでなく、二軒目のレストランでも三ッ星を得ています。

最後の晩餐はシンプルで繊細な味「ポトフ」を

ポール・ボキューズともなると、一緒に食事をしたい人は、同レベルで料理談義のできる人ということなのでしょう。この錚々たるメンバーで味わうとなると、アントレも、メインもさぞかし凝ったものに違いない! と確信しながら続きを読むと......

「料理はメイン一品だけ。美味なポトフだよ。それも、招待客たちと一緒に作ったものさ。ワインはコンドリユー(白)とコート・ロティ(赤)だね。で、ちょっとずるをしてみたいな。残り物を活用してね、翌日の昼ごはんに使いたいんだ。トマト・ファルシ(トマトの肉詰め)をコトコト煮るんだよ。うーん、そりゃぁ旨いだろうな」

L’Expressから翻訳引用)

料理と食事の愉しさを熟知した口調に、思わず微笑んでしまいます。ポトフは、フランスの家庭料理の定番。すね肉など骨付き牛肉を冬野菜と一緒に煮込んだものです。味付けは塩コショウ以外、ブーケガルニと丁子だけというシンプルさ。私のイメージでは、日本のおでんやお鍋に通じる料理で、我が家の冬の食卓にもよく登場します。

もちろん、上に挙げたシェフたちのポトフと我が家のポトフとでは、材料の吟味からして比べ物にならないでしょうが、こんな気さくな料理を最後の晩餐に望んでいたというのは意外なような気もします。

けれども考えてみれば、誰でも、最後の晩餐に望むのは、奇抜なものよりも懐かしい味なのでしょう。また、どんな分野でも、その道を究めた人は、最後には、シンプルさを尊ぶものだとも考えられます。

期せずしてポトフを食するのにピッタリな季節に亡くなったポール・ボキューズ。今頃は、雲の上で、望んだとおりのメンバーと、ポトフを囲んで料理談義に花を咲かせているかもしれません。 [Le Point, L’Express

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