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トスを上げてもらえる絶対的なエースになるために〜元バレーボール選手・大山加奈インタビュー

元アスリートの意識改革

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SPORTSカテゴリーでは、「元アスリートの意識改革」をお届けします。結果を出してきたアスリートが、現役時代を振り返り意識が変わったターニングポイントは何だったのか?引退したいま、その意識はどう変化したのか。

vol.6でお話を伺うのは日本代表としても活躍した元バレーボール選手の大山加奈さん。バレーボールを始めてから、いわゆるエリート街道を進み、順調に見えた現役時代。そんな彼女でもアスリート時代にさまざまなことがあったと言います。その時どう乗り越え、どのように意識が変わったのでしょうか。

* * *

大山加奈の言葉

「本当に信頼されるエースになりたい。そのために自らを変え、チームメイトからの信頼も得られた。バレーボールに出会えたことで、人間的に成長できた」

私は「バレーボールしか」がんばってない。

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――大山さんは成徳学園高校(現・下北沢成徳高校)時代の2001年に全日本に初選出され、2002年5月に全日本デビュー。以来、全日本のエースとして長く活躍されました。2010年6月に引退するまで、いくつものターニングポイントがあったのではないかと思います。

大山:そうですね。振り返ってみると、やっぱりいっぱいあって……。いちばんの転機というと、どっちかな……。

――もちろん、ふたつ挙げていただいても大丈夫ですよ。

大山:あ、良かった(笑)。ひとつは、中学生の時。中1、中2と目標の日本一になれなかったんです。3年生が引退して、中2の自分が新チームのキャプテンになった時に「どうして日本一になれないんだろう」と真剣に考えた時期がありました。何を変えたらいんだろう、どう変えたらいいんだろうって。

――その話だけで、中学生にしてものすごく高い意識を持っていたことが伝わってきます。

大山:いえいえ。その時に思ったんです。私はバレーボールしかがんばっていないなって。正直なところ、授業態度とかも本当にひどくて。

――それは意外です。大山さんは、いかにも「勉強も運動も」という優等生に見えるので。

大山:小学生で日本一になって、たぶん調子に乗っていたんだと思います。そのまま中学生になって、「バレーボールだけやってればいいんでしょ」という感じで先生に反抗したり、授業中にずっとマンガを読んでいたり。不真面目でした。ホントに不真面目。

――簡単には信じられません(笑)。

大山:ホントなんです。やり直したい過去ですね(笑)。もちろんバレーボールに対しては「一生懸命に」という意識は持っていたけど、それでもトレーニングは“うまくサボる”ような子でした。中1、中2とそういう時期があって、自分がキャプテンになった時に「それじゃダメだ」と気持ちを改めたんです。それは、私の人生においてもすごく大きかった。

――自分の力で、自分自身を変えられた、と。

大山:はい。もし、あれを先生や両親に言われていたら、反抗していたか、先生の目があるところだけがんばっていたと思うんです。自分で気づいて、自分で変わらなきゃと思って行動に移せた。それはすごく大きかった。

妹とは真逆。前には出たくないタイプ。

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――ところで、どんな子どもだったんですか?

大山:もともと前に出たくないタイプでした。ちやほやされている妹(1歳下/大山未希・ビーチバレー選手)の横でおとなしくしている感じというか。なのに、小学6年生で日本一になって、テレビに出て、それでちょっと変わっちゃって。中学生特有の反抗期みたいなものもあったかもしれませんけど……。

――どうして変われたんでしょう?

大山:どうしても日本一になりたかった。その思いだけでした。中1の時は2位、中2の時は3位。それが本当に悔しくて、日本一になるためには「これじゃダメだ」と本気で思えました。

強い信頼関係は、能力を超える。

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――でも、小学6年から考えると、1位、2位、3位という成績ですよね。ものすごい好成績ですが(笑)。

大山:私、日本一じゃなきゃ意味がないと思っていたんです。なんでなんだろう……。

もともと運動が嫌いで、苦手な子でした。でも、小学6年で日本一になって、世界がガラリと変わって。それまでは本当に何の取り柄もない子でした。妹(大山未希/2010年に引退後、ビーチバレーに転向)は可愛くて、運動ができて、活発な性格なのに私は真逆。

ずっと比較されてきたので、いつも「自分なんか」と思っていました。だから、日本一になれたことがうれしかったんだと思います。だからこそ、中学生になってあと一歩のところで日本一を逃したことが、心から悔しかった。

――普段の生活態度もガラリと変わったんですか?

大山:ガラリと。本当に真面目に、寝ることもなく授業をちゃんと受けて。まぁ、それが普通なんですけどね(笑)。それによって、チームメイトのみんなが信頼してくれるようになりましたし、何より学校の先生たちが応援してくれるようになったのが大きかった

だって、卒業した後も「大山さんは本当に真面目に授業を受けていたんだよ」と語り継いでくれているんですよ。あのまま卒業していたら、ホントにヤバかったと思います。

トスが上がってこない。信頼されていない見せかけのエース。

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――ふたつ目の転機は?

大山:高校生の時でした。1年生の頃から試合に出ていて、エースの自覚もありました。でも、本当に大事な場面でトスが上がってこなかったんです。3年生にとっては最後の大会で、負けたら引退。セッターは3年生だったんですけど、私じゃなく、同じ1年生の選手にトスが上がり続けました。それがすごくショックで……。

――どうしてなんでしょう。大山さんは1年生時から絶対的なエースだったと記憶しています。

大山:小学生の頃からずっと、最後は私のところにトスが上がってきていましたし、高校1年の時も「エースは私だ」と思っていました。それなのに、最後の大会だけ違う選手にトスが上がる。信頼されていないんだなと思いました。すごくショックでした。

セッターの先輩と、同じ1年生だったライトの選手は、ずっと一緒に自主練習をしていたんです。私はそうじゃなく、自分のことだけを淡々とやっていて……。その1本を「託したい」という先輩の思いは理解できました。私は「このままじゃダメだな」と思いました。

――そのショックは決して小さくないですよね。特に高校1年生、16歳という年齢を考えると。

大山:コミュニケーション不足だったんです。人とべったりずっと一緒にいることが苦手で、自分から話しかけることもできませんでした。孤高のエースじゃダメ。仲間の信頼を得なきゃいけない。そのためには何が足りないんだろうと考えました。

それからは、練習は常に120%。絶対にサボらない。誰よりも真剣にやる。声を出し続ける。これを徹底しようと心に決めました。

――バレーボールのセッターとアタッカーの関係として、実力にかかわらず信頼関係が強いほうにトスが上がるものですか?

大山:間違いありません。やっぱり、セッターとしては「この大事な1本を託す」という思いが強いんですよね。勝ち負けに対する意識も、もちろんあると思います。ただ、「この人に託して負けたなら」と思えるアタッカーじゃないと、最後の最後にトスは上がらない。そこで信頼されてこそ、本当の意味でのエースだと思うんです。

強い信頼関係は、能力を超えます。だから、上手いとか下手とか、そういうこととは関係なく、“打ちやすいトス”があるんです。そこにどんな思いがこもっているかで、“打ちやすさ”が全然違う。それって、トスが上がった瞬間にわかるんですよ。

だからこそ、アタッカーとしては最後に信頼してもらえる選手にならなきゃいけない。高校1年の時にそのことを強く思って、考え方が大きく変わりました。

私も、その感覚を知りたかった。

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――実は、僕自身はバレーボールをちゃんとやったこともなければ、一般のファンと同じくテレビで観戦するくらいの知識しか持っていません。失礼かもしれませんが、大山さんに対しては性格が「優しすぎる」というイメージを持っていて。

大山:よく言われました。精神的に「弱い」って。自分の性格としては、こだわりは強いほうだと思うんです。でも、こだわっていない部分については特に気にならない。そうは言っても、周りの目は気にするタイプです。妹や荒木絵里香(成徳学園高校時代からの同級生/トヨタ車体クインシーズ所属・全日本)からは、いつも「ねくら」と言われていました(笑)。

だから、初めて全日本に入った時もすごく不安でした。喜びよりも不安。案の定、最初からついていけなくて、正直なところ「もうムリ!」という気持ちになってしまったこともありました。

――当時は同学年の栗原恵さんと並んで「メグカナ」と称され、日本を代表する2大エースとして注目されました。

大山:最初はすごく嬉しかったです。メグとも仲が良かったし、みんなが覚えてくれて、応援してくれて。でも、どちらかがコートに立たないと思うところがいろいろあるし、常に比較されてしまうことで「私はメグと一緒じゃないと価値がないのかな」と思うこともありました

20歳で出場したアテネ五輪までは無我夢中でした。ただ、それが終わってからは少し心がついていけない時期がありました。そういう状態で取り組んでいれば、ケガをしてしまいますよね。腰、それから肩。全日本を離脱して、所属していた東レ・アローズにも戻れず、逃げ帰るようにして実家に戻りました。

バレーボールと正面から向き合えない。バレーボールが嫌いになってしまいそうな時期でした。2006年。世界選手権がある大事な年だったんです。でも、やっぱり出場できませんでした。

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――その時期の大山さんの表情が苦しそうだったことは、何となく記憶しています。

大山:そこが私の精神的な弱さなのかもしれません。私の場合、「人を蹴落としてでも生き残る」という感覚には、どうしてもなれませんでした。全日本って、やっぱりそういうところだと思うんですよ。みんながライバルで、生き残るために必死。そうでなきゃいけないんだけど、私はそれについていけなかった。

でも、悔いはありません。最後は苦しくて、もがいて、本当にもうダメだと思うところまでがんばって引退しました。ただ、自分の中では揺れる思いもあるんです。

正直なところ、メグや(荒木)絵里香がいまもコートの上で輝いている姿を見ると、私も「ケガがなければ」と思うことはあります。日本一になって、オリンピックにも出場しましたけど、もし「あの時、頑張りすぎなければ」「あの時、違う結果だったら」と考えてしまうこともある。最近になって、そう思うことが増えました。だから、「悔いはない」と言いながらも、後悔している部分もあるのかなって。

――栗原さんは度重なる大ケガを乗り越えて、荒木さんは結婚、出産を経て復帰し、33歳にして2人とも素晴らしい存在感を示しています。

大山:あの2人を見ていると、ああやって経験を重ねて、“今の自分”でコートに立てたらどんな感じなんだろうなと思うんです。コートから離れたからこそわかることもたくさんあって、あの頃はできなかったけど、今ならできると思えることもある。たぶん、絵里香はそういう感覚でコートに立っているんだと思います。十分な経験があって、心に余裕があるから楽しめる。

だって、本当に楽しそうなんですよ。本人はいつも「楽しい」と言っていて。私も、その状態でプレーしてみたかった。その感覚を知りたかった。

ただ、コートを離れた今の私だからこそ、できることもあると思っていて。子どもたちにバレーボールを教えることもそう。中学生と高校生の頃に大事なことに気づいていなければ、誰かに教えることなんてできなかった。

だから、バレーボールには心から感謝しています。子どもの頃の弱かった私を、人間的にちゃんと成長させてくれたスポーツですから。

連載「元アスリートの意識改革」はこちらから

大山加奈

小学校2年生からバレーボールを始め、全日本バレーボール小学生大会で全国制覇。以来 "バレー界の金の卵"と注目され、成徳学園高校(現・下北沢成徳高校)では主将として春高・インターハイ・国体の3冠を達成し、小中高全ての年代で全国制覇を経験。2001年に全日本代表に初選出、翌2002年5月の日米対抗でデビュー。同年世界選手権とアジア大会では、唯一の高校生プレーヤーとして出場。2003年4月に東レアローズ女子バレーボール部に入部(東レ入社)。同年開催のワールドカップでは栗原 恵とともに『メグカナ』と呼ばれ、「19才コンビ」として注目を浴びた。この年の第10回Vリーグでは新人賞を獲得、翌2004年にはアテネオリンピックに出場するなど、力強いスパイクを武器に日本を代表するプレーヤーとして活躍。2010年6月、現役を引退。現在は公益財団法人日本バレーボール協会の広報委員ならびに国内事業本部委員、公益財団法人日本体育協会の情報誌"Sports Japan"編集部会員を務めながら、全国で講演活動やバレーボール教室に精力的に取り組み幅広く活動している。

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グッドモーニングカフェ品川

ランチメニューで人気は「GMCサラダプレート」(税込1,000円)。新鮮な野菜と惣菜をトッピングしたボリューム満点です。

住所:東京都港区港南1-2-70 品川シーズンテラス 2F

TEL:03-5715-3515

営業時間:11時〜L.O.22時30分(土曜8時〜、日曜8時〜L.O.21時30分)

休:定休日は施設に準ずる

写真/千葉 格 文/細江克弥 撮影協力/グッドモーニングカフェ品川

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