イーハトーブとは、岩手県を代表する作家・宮沢賢治による造語で、賢治にとって理想郷のこと。賢治自身がイーハトーブについて具体的に書き記しているわけではありませんが、『注文の多い料理店』の広告チラシで、

「イーハトヴとは一つの地名である。強て、その地点を求むるならば、大小クラウスたちの耕していた、野原や、少女アリスが辿った鏡の国と同じ世界の中、テパーンタール砂漠の遥かな北東、イヴン王国の遠い東と考えられる。実にこれは、著者の心象中に、この様な状景をもって実在したドリームランドとしての日本岩手県である」

と書かれています。ときに牧歌的で、ときに圧倒される、岩手県の大自然に触れるたび、賢治が思い描いた理想郷を思わずにいられません。

岩手県は、日本の都道府県の中でも、北海道に次ぎ2番目の広さ。太平洋沿岸の海岸線は入り組んだ形でリアス式海岸と呼ばれ、魚介類に恵まれた地域は、NHK連続テレビ小説「あまちゃん」のメインのロケ地として話題になりました。

面積が広大な分、県北、県央、県南、奥羽山系、三陸海岸と、地域によって食文化が異なり、岩手県のアンテナショップ「いわて銀河プラザ」にも、たくさんの食材が並んでいます。全体的に冷涼な気候なので、古くから米に代わり雑穀中心の食文化が根付いてきましたが、北上川流域の平地には稲作地域が広がり、餅料理が充実しています。

以前、盛岡を旅したとき、戦後まもなく発足した歴史ある自然食品店で、明治時代に建てられた黒漆喰の土蔵造りの風格ある建物「盛岡正食普及会」に立ち寄りました。今のように食生活が豊かでなかった時代に、より自然に近いもの、より体に優しい食べものを提唱してきた老舗。そこに並ぶ、丁寧に作られた食料品を眺めながら、岩手県が、食べることに対して、実直な考えを持つ土地柄・人柄であることを感じました。

「いわて銀河プラザ」には、旅のパンフレットコーナーもあります。大自然や人の温かさに触れたくなったときは、岩手県へ。その前に、「いわて銀河プラザ」にも。

「サクサク有機玄米と雑穀」尾田川農園

20171228_local_01.jpg日本一の雑穀生産量を誇る「雑穀王国」岩手県では、古くから米に代わる日常食として、アワやヒエをはじめ、さまざまな種類の雑穀が栽培されてきました。岩手県を代表する作家・宮沢賢治の作品にも、アワやキビなどを使った雑穀だんごが登場します。

炊飯用の雑穀や、雑穀を使った食品が多く並ぶ「いわて銀河プラザ」。ミネラルや食物繊維をたっぷり含む雑穀商品を求めて来店する、健康志向やダイエット中の人も増えてきたそう。

数ある雑穀商品の中でも、普段の食生活に手頃に取り入れやすいのが、尾田川農園が作る、せんべい状のシリアル「サクサク有機玄米と雑穀シリーズ」無添加・無調味(油・塩不使用)で、雑穀以外食品添加物を一切使用しておらず、低カロリーです。

「サクサク有機玄米と雑穀」の原材料は、アイガモ有機農法で育てられた有機玄米と、タカキビ、大麦、イナキビ、アワ、ヒエ、アマランサスのみ。ほんのり甘いので、そのまま食べることもできますが、ひと工夫でさらに違った味わいに。

スープに加えればリゾットに。野菜、ジャム、チーズ、惣菜を上にのせるだけで、おやつやおつまみに早変わり。このあと紹介する、「ドライトマトオリーブオイル漬」とも好相性です。他に同シリーズで、「サクサク有機玄米とはと麦」や「サクサク有機玄米と赤米・黒米」などもあります。

「岩泉ヨーグルト」岩泉乳業

20171228_local_02.jpg2016年の8月、台風10号の豪雨で工場が浸水し、一時期生産ができなくなっていた、岩手県で人気のヨーグルト・岩泉乳業「岩泉ヨーグルト」。2017年の11月から、「いわて銀河プラザ」でも、販売が再開されました!

岩泉乳業が所在するのは、1000メートル級の山々に囲まれ、面積の93%が山林という、岩手県岩泉町。豊かな森と、世界一の透明度と言われる龍泉洞の地底湖の水をはじめ、湧水や沢水が豊富な土地です。そこで120年の歴史があるのが、岩泉酪農。牛に無理をさせることなく、家族のように同じ屋根の下でともに暮らし、大切に育ててきました。今でも、住宅と畜舎が一緒になった家屋が多く残されています。

添加物を一切使わず、高品質の生乳を低温長時間発酵製法させて作る「岩泉ヨーグルト」。大きなアルミ袋に入っているのが、まろやかな味わいで、レアチーズケーキのようにもちもちとした食感の秘密。アルミの袋にゆっくり伝わる熱で発酵が進む後発酵製法を取り入れ、アルミ袋が「ヨーグルト工場」の役割を果たしています。

袋にはチャックが付いているので、岩手の家庭では袋からそのままスプーンでヨーグルトをすくい、お皿に移し替えるのが一般的だとか。もちろん最初に、フタ付きのタッパーなどに入れ替えても。1000g入りはちょっと多いかな……と感じても、まさにフタを開けて見れば、数日でぺろり。さらにひと回り大きな、2000gの袋入りもあります。

「ドライトマトオリーブオイル漬」大西ファーム

20171228_local_03.jpg岩手県二戸市で、トマト、ねぎ、にんにく、きゅうりなどの野菜を家族で育てる大西ファーム。趣味でドライトマトを作り始めたのをきっかけに、全く別の業界から農家に転身してまだ日は浅いながら、すでに料理人からも高い評価を得ています。

オレイン酸が主成分で、ビタミンEなどの抗酸化物質を多く含有し、加熱による脂肪酸の酸化が起こりにくオリーブオイル。白ワインとお酢で煮た無添加のドライトマトを、ニンニクとともにイタリア産のエキストラ・バージン・オリーブオイルに漬け込んだ「ドライトマトオリーブオイル漬」。パスタ、サラダ、煮込み、オイルごと料理に使えます。

いわて銀河プラザ
住所:東京都中央区銀座5-15-1 南海東京ビル1F
電話:03-3524-8282
営業:10:30~19:00(毎月末日~17:00)

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