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芸人NON STYLEの井上裕介さんが語る「人がいることのありがたさ」

感謝する、ということ。スペシャルなギフト。

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芸人NON STYLEの井上裕介さんが語る「人がいることのありがたさ」

感謝」とは口当たりのいい言葉ですが、暮らしのすべてに感謝して生きることは、人生が平凡であればあるほど(実はそれが一番の幸せかもしれませんが)難しいことのような気がします。

事故に遭った。大病を患った。大切な人を亡くした。大変なことが起きて初めて日常に感謝することができるのかもしれません。

2016年12月から約3カ月の自粛期間を経て、今年3月末から芸能活動を再開した芸人のNON STYLEの井上裕介さんに、「感謝」について話を聞きました。

あの時痛感した「当たり前」の大切さ

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「休んでいる期間は本当につらかったです。相方はもちろん会社にも仕事先にも、いろんな方にご迷惑をかけましたし。仕事についてもプライベートについても、何も考えることができませんでした。

『何かを考える』のは心にゆとりがなければできません。心のゆとりがまったくなかったんです。逆に言えば、一人で何かを考えると、自分が起こした事故のことを思い出してしまうんです」

そんな自粛期間にも、変わらぬ態度で接してくれた知り合いや後輩たちにとても感謝しているそうです。

「僕がひとりにならないように、頻繁に自宅を訪ねてきてくれました。以前と変わらずいろんな話をしてくれる。その配慮がありがたかったですね。もちろん相方の石田(明さん)も、一人でNON STYLEの看板を背負って、テレビや舞台で活動してくれていましたし」

今年3月末から活動を再開した井上さん。そのときどんな気持ちだったのでしょうか。

「感謝しかなかったです。もうその言葉がすべてですね......。当たり前に仕事ができるということのありがたさ。デビューから17年、ただひたすらに走ってきたので、仕事があるというのはいわばルーティンだったんです。そのルーティンがなくなって初めて"当たり前の大切さ"を知ったんだと思います」

休んだことで気づいた本当に大切なこと

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仕事はもちろん、両親が健在であることや普段どおり街に出掛けることまで、今まで当然だと思っていいたことが、実はかけがえのないことだと感じたのだそうです。活動を自粛していた期間は、井上さんにとってどんな影響を与えたのでしょうか。

「冷静に振り返るにはもう少し時間がかかると思いますが、休んだ期間があったからこそ、本当に大切なものに気づけたのではないでしょうか。そして自分のなかの"悪いもの"を落とすことができました

井上さんが言う"悪いもの"とは何だったのでしょうか。ある意味で「嫌われキャラ」によってネガティブな気持ちもあったと言います。

「2015年、2016年は『嫌われキャラ』で走り続けていました。いま思えばですが、周りの人が全員鬼に見えていたような気がします。もちろんキャラクターとして作っているんですが、なぜ毎日毎日、いろんな人から『気持ち悪い』『嫌い』と言われなければならないのかと......。

もちろんそれでお金を頂いているので、自分のなかでプラスマイナスゼロになるように考えていたのですが、結局マイナスだったのかもしれません。負のパワーが大きくなってしまった。だからきっと神様が『一度休みなさい』と言ってくれたんだ、と思うようにしています

そこにいなくても、隣に石田はいた。それに気付けたことは大きい

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『悪いもの』が落ちて、漫才や芸風には変化があったのでしょうか。

「実はそこだけは変えないようにしていますし、変えるつもりもないんです。先輩方にも『丸くなるなよ』とアドバイスされましたし。自分の一番の恩返しは笑いを提供すること。そして僕ができるお笑いのスタイルは決して行儀のいいものではありませんから、そこは今まで通りに。もちろん、ウケなくなったら変える必要はありますけどね」

お笑いに関してとてもストイックな考え方を持っている井上さん。若い頃は自分自身の将来のポジションを築くために必死だったそうです。

「若い頃はめちゃくちゃトガっていたと思います。マネージャーとも、仕事現場でも、何度も揉めたことがありますから。もちろん信念を持ってトガっていたんですけど。ただ若さゆえ表現方法の種類が少なかったので、今なら『もっと言い方を変えれば丸く収まったな』と思うこともありますね」

活動を再開して約8カ月を経た現在。仕事にひた走っていた時期の考え方と、一番大きく変わった部分とは何でしょうか。

以前はただ前だけを見て走っていたので、周りのサポートに気づかなかったんです。気づきにくかったというか。例えば、井上裕介として一人でテレビに出ることも多かった。そんなときは『NON STYLEの看板を自分一人で背負っているんだ』『一人のときこそ相方の石田にも迷惑はかけられないぞ』と、気合を入れて。

でも、現場にいなくとも隣に石田はいたんですよね。休んだ期間を経て視野が広がって、そのことに気付けるようになったんです。『人がいること』のありがたさを改めて知りました。それが、自分の人生においてとても大きかったと思っています」

井上裕介さん

1980年、大阪府大阪市生まれ。中学・高校の同級生である石田明さんとともに、2000年5月に「NON STYLE」を結成。06年に「上方漫才大賞」で優秀新人賞を獲得。08年より東京をベースに活動を開始し、同年「M-1グランプリ」で優勝を果たす。現在、テレビや舞台で多くのレギュラーを務め活躍中。

撮影/内山めぐみ 文/加瀬友重

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