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世代を超えて受け継がれる、食の知恵

世代を超えて受け継がれる、食の知恵

おいしく食べて、健康で美しくありたい。そう願えば願うほど、本当にいいものってなんだろう、何を選べばいいんだろうと頭を悩ませてしまいがち。

今回、こころもカラダも満足する食習慣と食材選びについてお話を伺ったのは、フードディレクターの川上ミホさん。素材のナチュラルな持ち味を生かした料理と、筋が通った食の哲学に多くの女性の支持を集めています。

母親の背中を見て学んだ、医食同源の知恵

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幼いときから食への関心は人一倍強かったという川上さん。祖父が農業を営んでいたそうで、畑からとってきたばかりの野菜を切ったり焼いたりして、本格的な"おままごと"をしていたそうです。台所に立つ母にぴったりくっついて、料理の工程が進むごとに変わっていく味や香り、音を感じるのも大好きだったとか。

「『冬だから大根がおいしくなってきたね』とか『しょうがを入れるとからだが温まるのよ』などと、料理をしながら母が話した言葉を今でもよく思い出します。旬の食材を体調も考慮しながら丁寧に選び、調理法を考えていた母の姿勢は、知らず知らずのうちに私にも身についていたのかもしれません」

川上さんが料理をするときに大切にしているのは「旬」。旬の食材はおいしくて、たくさん収穫されるのでお値段も手頃。その季節を元気に過ごすために必要な栄養がたっぷりとつまっています。食材の良さを生かせるように、調理はシンプルに。そして風邪っぽいなと思えば薬膳の要素を取り入れてみたりスパイスを加えてみたり。おいしく作るだけでなく、健康面でちょっとした工夫をするのが川上さん流。

「中医学の『薬食同源』から生まれた『医食同源』という言葉がありますが、日本には"毎日の食生活を整えることが健康につながる"という考え方が古くから根づいています。それは、漢方や薬膳といった食文化もまったく同じ。民族的にも近い韓国や中国の食の知恵は、日本人にも取り入れやすいですね」

身近にあるスーパーフードに目を向けて

kawakami_002.jpg川上さんにはもうすぐ2歳になる娘さんがいますが、小麦や大豆、乳製品のアレルギーを持っているため、川上さんの食への意識は大きく変わったそうです。

「私は好き嫌いやアレルギーとは無縁だったので、こんなに悩むとは思いませんでした。これなら食べても大丈夫かなと、日々おそるおそる試している状態。頼っているのは日本に昔からある食材です。娘は大豆アレルギーなのにお味噌は大丈夫。まだ幼いのでハチミツは食べさせていませんが、その代わりとなってくれるのが甘酒です。スムージーやスープに入れるとほのかな甘みが増すので、喜んで食べてくれています。おいしさがアップするだけでなく、健康への効果も期待できる発酵食品のすごさをあらためて感じますね」

最近つくづく思うのは「スーパーフードは、意外と身近にある」ということ。川上さんは、海外のスーパーフードにも造詣が深く、スーパーフードを使ったレシピ本を監修したり、イベントにゲストとして呼ばれたりするほどの知識の持ち主。高い栄養価と、スープやサラダに"ちょい足し"できる手軽さが人気ですが、身近にあるスーパーフードに目を向けるのも楽しい、と川上さん。

「日本にもスーパーフードと呼ぶに値する食材はたくさんあります。お味噌や甘酒のほか、しょうが、ねぎ、みょうが、七味に入っている陳皮、唐辛子、ごまなどもそう。たとえば、いつもの煮物にすりごまを振りかけて糸唐辛子を散らすだけで見た目もいいですし、栄養もあっておいしく、食感の変化も楽しめます。上手に生かしていきたいですね」

料理の幅が広がるスーパーフード活用術

natsume_recipe.jpg川上さんのキッチンには、さまざまなスーパーフードが常備されています。なかでも最近注目しているのが、もち麦、えごま、なつめといった韓国でも古くから食文化に根付いているスーパーフードの数々。スムージーやサラダにちょい足ししたり、じっくり煮込んで薬膳料理を作ったりと、さまざまな食べ方を楽しんでいるそうです。使い慣れない人でも簡単に取り入れられるヒントを聞いてみました。

野菜のスムージーに少量の「えごまオイル」を

意外と知られていないのが、野菜のビタミンには水溶性と脂溶性という2つの性質があるということ。オイルを入れることでビタミンAやビタミンEといった脂溶性ビタミンもしっかり摂ることができます。

「えごまパウダー」をオイルで伸ばしてペーストに

すりごま感覚で楽しめるえごまパウダー。トッピングだけでなく、えごまオイルで伸ばしてペースト状にすると料理の幅が広がります。ペーストをトーストに塗ってしらすをのせて食べるのが私のお気に入り。

「もち麦」は煎ってふりかけにしてもおいしい

サラダやスープに足してもおいしいもち麦ですが、ふりかけにするのもおすすめ。煎ったもち麦ととろろ昆布、海苔を粉末にして、もち麦ごはんに混ぜておにぎりにしておくと、娘も喜んで食べてくれます。

お茶、お粥、参鶏湯などのスープにも用途が広い「なつめ」

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左/なつめチップス 80g(ハンバンライフ)、右/なつめチップ 80g(棗専門店 なつめいろ)

数あるスーパーフードのなかでも、川上さんがもっとも長く食べているもののひとつが「なつめ」です。なつめは冷えや生理不順、貧血に悩む女性にやさしい食材として知られています。

胃腸が疲れているときは、なつめを入れたお粥を。ちょっと風邪っぽいなと思ったら、水になつめとしょうが、クコの実、黒糖を入れてグツグツ煮てお茶にします。あとは、種を取り除いた乾燥なつめをハチミツ漬けにしておくと、おやつにちょうどいいですよ。そのまま食べても、くるみやナッツを挟んで食べてもおいしいです」

川上家のクリスマスは、ここ何年もローストチキンではなく、なつめをたくさん入れて煮込んだ参鶏湯(サムゲタン)。年末年始を控えた忙しい時期でも簡単に作れて、からだも温まります。鶏を丸ごとではなく、骨付きの鶏肉で作ってもおいしくできるそうです。

なつめ好きは娘さんにも受け継がれているようで、おやつとしても「なつめチップ」がお気に入り。

「なつめチップは、サクサクした食感とほのかな甘酸っぱさが魅力で、歯が生えそろわない娘も喜んで食べています。ポリフェノールを多く含む皮の栄養も摂れますし、かぼちゃサラダなどのトッピングにも合うはず」

興味はあったものの、そのまま食べる以外にどうやって食べたらいいのかわからなかったなつめ。意外と手軽に取り入れられそうです。

食は感性を刺激する。娘に伝えたい思いとは

母からご自身へ、そして母となった川上さんから娘さんへ。「食生活や食習慣は、受け継がれていくものだと思う」と川上さん。

「娘がいつか私の手を離れたとき、自分で食べるものをきちんと選べるようになって欲しいですね。そのためにも今から食べ方の知恵を伝えたいと思っています。母がそうであったように、私が実践することで、娘にも自然に伝わるはず。さらに娘の次の代にまで伝えることができたら......。それはもう"財産"ですよね」

娘さんの食の選択肢を増やしたいと、さまざまな挑戦を試みる川上さんの気持ちを代弁するような動画があります。

【あらすじ】

女の子は野菜が苦手なのか、朝食に出されたサラダを残してしまいます。大好きなスナック菓子を食べる娘の様子を見て、お母さんは「あきらめない」と心を決めた様子。スマホでいろんな食材を調べて、たどりついたのはなつめチップ。サラダのトッピングにしてみたところ、女の子は――

「いろんなものが食べられるようになって、新しいことに次々と挑戦する娘を見ていて思うのが、『食は感性を刺激する』ということ。それは大人も同じです。栄養にこだわるだけでは"頭で食べる"ことになってしまいます。1日3食すべては難しくても、1日に1回でも心からおいしさや楽しさが膨らむような食べ方を心がけることが、こころとからだの満足につながり、健康と美しさを作るのではないでしょうか」

韓国農水産食品流通公社

kawakami_profile.jpg川上 ミホさんフードディレクター。国内外のレストランで経験を重ね、独立。イタリアンと和食をベースにしたシンプルながらストーリーのあるレシピとスタイリングが人気に。雑誌やCM出演などでも幅広く活躍。JSA認定ソムリエ、AISO認定オリーブオイルソムリエ、オーガニック・コンシェルジュ。2016年1月に長女を出産。産休のためクローズしていたプライベート・レストランもそろそろ再開の予定。

撮影/佐山順丸(インタビュー&なつめ)

image via shutterstock(TOP,料理)

大森りえ

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