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骨盤底の筋肉は一生の財産です。なぜだか知っていますか?

カラダ戦略術

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骨盤底の筋肉は一生の財産です。なぜだか知っていますか?

自分の体をきちんと知ろう!をテーマに、増田美加(女性医療ジャーナリスト)さんによる連載「カラダケア戦略術」。Vol.9のテーマは、骨盤底筋。骨盤底の筋肉がゆるんでくると、どんなことが起きるのでしょうか? 骨盤底筋チェックからスタート。

骨盤底筋がゆるんでいる可能性があります。

骨盤底筋チェックからスタート。下記に心当たりがある人は要注意です。

<骨盤底筋のゆるみチェックシート>

□ 慢性の便秘がある□ 肥満傾向である□ 重いものを持つ仕事に就いている。または就いていた□ 立ち仕事が多い□ 尿が出にくいことがある□ くしゃみや咳などで尿漏れを経験したことがある□ 湯船から出た後、腟から水が出る□ 難産で長時間の出産を経験したことがある□ 鉗子分娩、吸引分娩の経験がある□ 入浴をしたとき陰部に丸い物が触れる感覚がある□ 長時間立っていると陰部に不快感を感じたり、何かが下がってくる感覚がある□ 子宮摘出術を行った経験がある

このような項目に当てはまる人は、骨盤底筋がゆるんでいる可能性があり、注意が必要です。気になる症状がある場合は、婦人科か女性泌尿器科の医師に相談することをおすすめします

女性にとって大切な骨盤底筋とは?

女性の骨盤の底には、骨盤底筋群という筋肉がハンモック状に張られています。さらに、その奥にある深層筋が骨盤内の臓器(膀胱、子宮、直腸)を支えています。この筋肉が収縮することによって、尿道や腟、直腸が締まって、尿や便が漏れない仕組みになっています。骨盤底の筋肉群がゆるんでくると、尿もれ、尿失禁の原因にもなります。過活動膀胱や切迫性尿失禁も、骨盤底筋群の弱さがその一因です。さらに進むと、腟から骨盤内の臓器である子宮や膀胱が外に飛び出してしまうことも起こります。

筋肉や靭帯が緩むことで、子宮や膀胱が外に飛び出す!

骨盤内にある子宮や膀胱、直腸は、筋肉や靭帯などの支持組織に支えられて位置を保っています。これらの支持組織である骨盤底筋群が緩んでくると、だんだん子宮や膀胱、直腸などの臓器の位置が下がってきてしまいます。これが骨盤臓器脱です。つまり、子宮などの骨盤内の臓器が腟などから外に飛び出してしまうのです。尿や便が漏れ、支えを失った骨盤内の臓器が産道、つまり腟をめがけて落ちてくる。これが子宮脱などの骨盤臓器脱です。子宮脱などの骨盤臓器脱の原因は、出産や加齢、肥満によって骨盤底筋群の深層筋が傷つき、緩むことです。その他、チェックリストにも示したように、慢性の咳、重いものを持ち上げる仕事、慢性便秘など、腹圧をかけて骨盤底に強い負荷が加わることが原因となります。子宮脱などの骨盤臓器脱は、腟内に留まっているうちは気づきにくい病気ですが、気づかずに重症化してしまうと、外陰の外まで完全に脱出してしまいます。こうなると歩行にも支障をきたします。また、排尿や排便により、飛び出した子宮に、感染を起こすこともあります。そのため、臓器の表面が乾燥し、下着や皮膚と擦れて痛みを生じ、歩行困難になることや、排尿・排便が困難になるなど、日常生活に支障をきたし、生活の質(QOL)を著しく妨げます。出産や加齢で骨盤底筋は緩みますから、"脱"は多産の高齢者に多いとされてきました。

しかし! 今、若い世代でも"脱"が起こりやすい生活に...

ところが最近では、若い人や1、2回の出産でも"脱"が起きるようになってきています。それは生活様式の変化も関係しているようです。昔は、畳の部屋に着物、和式便所というスタイルが一般的でしたが、これは常に骨盤底筋を鍛える動作を促します。スクワットを自然な日常生活の所作で行っているようなものです。でも、椅子にテーブル、洋式トイレという生活では、下半身の筋肉を使うことはあまりありません。現代では、意識して運動しなければ、骨盤臓器脱は防げないということになります。現代の日本女性は、経腟分娩をした人の約3割が将来、子宮が腟から出てしまう"子宮脱"を引き起こす可能性があるとも言われています。そして、症状があっても、羞恥心から受診せずにいる女性が多いという現状があります。

だから腹圧をかけて骨盤底に強い負荷を加えてはいけません

骨盤内のどこを支える筋肉がダメージを受けたかによって、どの骨盤内臓器に脱が起こるかが異なります。腟の前方が弱くなると膀胱瘤(脱)と尿道脱。腟後方が弱くなると、小腸脱と直腸瘤(脱)に。腟の上部が弱くなると子宮脱が起こってきます。複数の骨盤臓器脱を同時に起こすこともあります。予防としては、生活習慣で骨盤底筋群の深層筋にダメージを与えないために、便秘をしないことが大事です。便意は我慢しないで。また、腹圧をかけて気張る姿勢は、絶対NGです。便座に座って前かがみでバンザイするような姿勢で、便だけスルッと出すような排便が理想的。座位姿勢が多い人は、骨盤を前に傾けて(立たせて)座ることも、ダメージを減らすことになります。そして、若いうちから正しく骨盤底筋群を鍛えておくことが大切です。

"脱"は自然には治りません!

骨盤臓器脱は、自然にもとに戻ることはありません。自分の手で腟口に触れる感じがあれば、婦人科や女性泌尿器科を受診することをおすすめします。クリニックでは、問診、内診、経腟超音波、尿検査などを行い、どの部位がどう下がっているのかを調べます。咳やいきんでみたりして、膀胱の出口や尿道が緩んでいないかも確認します。

治療は、骨盤底筋群の深層筋を鍛える体操などがあります。また、専用のメッシュやテープで骨盤内の臓器を固定する手術法もあります。どの治療を選択するかは、脱の進行度や症状の重症度、生活スタイルなどを総合的に考えて決めていきます。

"脱"を起こさないためにも、今から骨盤底筋群を鍛えることが大事。次回は効果的な骨盤底筋群を鍛える方法をご紹介します。

mika_masuda.jpg増田美加(ますだ・みか)さん女性医療ジャーナリスト。2000名以上の医師を取材。予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。公式ホームページ http://office-mikamasuda.com/

image via Shutterstock

増田美加

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