「1日10分も走れない」――そんな超初心者の状態から、たった1年半でサブスリー(3時間を切ってフルマラソンを完走すること)を達成した鈴木莉紗さん。じつは25歳でマラソンを始めるまで、運動部に所属したこともなく、体育の時間が大嫌いだったといいます。思わず親近感がわくビギナー時代の鈴木さんの失敗談や、初心者ランナーが楽しくランニングを続けるコツをうかがいました。

suzuki_01.jpg鈴木莉紗さん

SBIアラプロモRC所属。陸上未経験者にも関わらず、走歴1年半の時点でサブスリーを達成。ランニング専門誌『ランナーズ』の表紙モデルを務めたことで注目を集め、その後多くのメディアに登場。現在は加圧トレーナーとして働く傍ら、市民ランナーとして活躍中。フルマラソンのパーソナルベストは2時間39分56秒。著書に『1日10分も走れなかった私がフルマラソンで3時間を切るためにしたこと』『フルマラソンを最後まで歩かずに「完走」できる本 一番やさしい42.195kmの教科書』(ともにカンゼン刊)がある。

ランニングのきっかけは「山登り」

suzuki_02.jpg現在は加圧トレーナーとして働く鈴木さんが、ランニングと出会ったのは25歳のとき。当時は丸の内で受付嬢をしていたそうです。

「もともと趣味がまったくなくて。定時で上がれる仕事だったので、趣味がないことに焦りをおぼえ(笑)、ボディボードとかいろいろチャレンジしましたが、続かなくて......。そのなかで続いたのが山登り。でも、下山しているときに膝をひどく痛めてしまって......。筋トレは大嫌いだったので、ランニングなら足を鍛えられるかなぁと、ごく単純な発想で始めたんです」(鈴木さん)

小学1年生のころから趣味でクラシックバレエを続けていたものの、陸上競技は未経験。運動神経にはまったく自信がなかったという鈴木さん。

「書店で平積みになっていた雑誌『Tarzan』のラン特集を読んで、ひたすら忠実にやりました。10分のウォーキングと10分のランニングを交互に繰り返していたら、少しずつ走れる距離が伸びてきて。ゆっくりではなく、けっこう息が切れるくらいまで、リズムよく走っていましたね」(鈴木さん)

天狗になって...初マラソンで大失敗

suzuki_03.jpg鈴木さんにとって、ランニングはあくまで体力づくり。当初はフルマラソンなんてまったく興味がなかったといいます。

「ほかに楽しいことがたくさんあるのに、なぜお金を払ってまで苦しい思いをするの?って。でも、走り始めて3か月くらいたった頃、ふと自分の力を試したくなったんです。皇居で行われていた5キロマラソンに参加したところ、なんと6位入賞。最後は5位の女性とデットヒートを繰り広げ、負けたのがものすごく悔しくて......。その悔しさが、逆にマラソンの楽しさに目覚めるきっかけになりました」(鈴木さん)

その後、中・上級者向けのランニング教室に飛び込み、現在も教えを請う平塚コーチと出会うも、教室は真っ黒に日焼けした猛者ばかり。しかも初回のクラス分けはフルマラソンのタイム別。まだスタート地点にも立てていなかったことにショックを受け、とにかくフルマラソンに出ようと直近の大会にエントリーすることに。

「フルマラソンの前に10キロ、ハーフマラソンと経験して、そこそこいいタイムで走れていたんですよね。それで、ちょっと天狗になってたんでしょうね(笑)。誰にも相談せず、練習もせずに臨んだ初のフルマラソンは散々でした」(鈴木さん)

当日は緊張感がなさすぎて、大会のために新調したラン用ソックスを忘れ、友達が履き替え用に持ってきていた100円均一のソックスで走るはめに。

「この日のために買った高級ソックスだったのに! しかもソックスは忘れたのに、プロテインバーだけはしっかり持ってきているというメチャクチャさ(笑)。走り出すと序盤からお腹が痛くなってきて、最後は健脚のおじいちゃんに『がんばれよ』と励まされながら追い越され......。すごく情けなかったです」(鈴木さん)

ランニングを始めて変わったこと

suzuki_04.jpg初マラソンでの手痛い失敗を経て、ランナーとして一皮むけた鈴木さん。その後は効率的なトレーニングを積み、なんと走り始めて1年半で、女性では数パーセントしかいないサブスリーを達成するまでに成長しました。その間の詳細なトレーニング方法や気持ちの変化は、自著で詳しく紹介されています。

「とりあえず直感で行動するタイプなので、あれこれ思い悩まずにハードルを上げていけたのが良かったのかもしれません。

ランをはじめて、とにかく生活が健康的になりました。歯磨きと同じような感じで、走らないと気持ちが悪いんです。基本甘党で、チョコレート菓子のファミリーパックを一度に食べちゃうくらいでしたけど、不思議とそういう欲求もなくなった。それとお酒を飲んだ翌日のコンディションが悪くなるので、お酒の量も激減しました」(鈴木さん)

メンタル面の変化では、ストレスマネジメントがうまくなった気がすると鈴木さん。ちょっと落ち込むことがあっても走って発散できるので、人間が丸くなった気がすると語ります。

ランニングビギナーのお悩みQ&A

suzuki_05.jpg鈴木さんの生活を大きく変えたランニング。さまざまな不安を感じて一歩を踏み出せないビギナーのために、その対処法を聞いてみました。

悩み1.
走り続けられないんじゃないか、と不安になります

精神的なものなのか、身体的なものなのかで変わってきますが、もし精神的なものであれば、「無理して長い時間走ることはない」と思います。健康維持やダイエットが目的なら、細切れに走っても効果は同じ。もちろん途中で休んでも大丈夫です。

悩み2.
息が切れて苦しくなります

速度を落として走ると息が切れにくいです。練習では心肺機能を高める意味で、短めの距離をダッシュするのがおすすめです。ただしあまりにも苦しいときは、不整脈など病気の可能性もあるので医師の診断を受けたほうがいいでしょう。

悩み3.
膝や腿がすぐ痛くなります

片方の膝が痛くなったりするのは、走り方の問題。左右のバランスが悪くなっているので、フォームを見直してみてください。

ランニングの後の痛みを緩和するには、セルフマッサージをしたり、整骨院などでプロの手を借りるのがおすすめ。ちょっと面倒ですがテーピングも有効。ただ、これらはあくまで対処療法なので、根本的に解決するには筋トレが必須です。

悩み4.
脚が太くなりそうで心配です

ダイナミックなフォームで走ると、脚は太くなりません。むしろ引き締まります。あとは流し(ウィンドスプリント)といって、呼吸を止めずに気持ちよくダッシュする練習をすると、ハムストリングや内転筋が鍛えられて、脚が細くなります。
逆に脚が太くなるのは、ゆっくり、ひざ下でちょこちょこ走るようなフォームです。

悩み5.
練習がつらくなったときのモチベーション維持のコツは?

私の場合、「これをやると美脚になる」とか、「ここをがんばれば脂肪が燃える」と思うと、すごくヤル気がでます。このトレーニングをやりぬけば、きれいになった自分に出会えるとイメージしてがんばってみてください。

また、かわいいウエアを着たり新調したりするのも、とても効果があります。明るいアップテンポな音楽を聞くのもおすすめ。私はクラシックバレエをやっていたので、『ドン・キホーテ』、『眠りの森の美女』、『くるみ割り人形』あたりはランに合う気がします......一般的ではないかもしれませんが(笑)。ラン仲間には「GReeeeN」の曲のファンが多いですね。

お悩み6.
生理のときも練習したほうがいい?

初日や2日目はコンディションが悪いので、無理せず休みましょう。紙ナプキンだとかぶれてしまう方がいるので、紙よりは布ナプキンを。タンポンに抵抗がない方はタンポンをおすすめします。
ランニングは、休まず走り続ける必要はありません。休む時間を作るのは大切なこと。心拍数を管理して、安静時の心拍数が高いときは体が相当疲れているということですから、休息をとりましょう。

お悩み7.
初心者におすすめのフォームや練習法は?

初心者ほど癖をつけないほうがいいので、私が心掛けていたのは上下動を少なくすること。上半身の前に額縁があるようなイメージで走ります。また、肋骨から上半身が引き上げられているようなイメージもいいですね。こうすると、背筋が曲がったり、姿勢が崩れたりしにくくなります。

呼吸のリズムや腕の振り方は、自分にとって自然な方法でOK。「スースーハー」とか、一定のリズムにする必要はなく、意識しないほうが楽に走れます。会話できるくらいのペースがベストです。もし息が切れてきたら、吐くのを意識するとちょっと楽になりますよ。

ランニング長続きのコツは「無理しない」

suzuki_06.jpg3カ月続ければ、誰でも必ず「走る力」が身につくし、やがてはフルマラソンも完走できると話す鈴木さん。これからランを始める人へのアドバイスをもらいました。

ゼロか10かじゃなくて、60%、70%くらいのがんばりを継続することが大切。できないときは無理せずに、マイペースで取り組むのがいいと思います。

大人のランは、学生時代の勉強と違って、押し付けられてするものじゃない。自分が楽しいからやるのが大前提なので、「走らなきゃ」と自分を追い詰める必要はありません。無理しないのが、長続きの最大のコツです」(鈴木さん)

鈴木莉紗さんのランニング初心者講座、次回は使い込んで見極めたおすすめのシューズをご紹介いただきます。お楽しみに!

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