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暮らしに寄り添う本当にいいもの。専門家が愛する文房具

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田邉愛理

暮らしに寄り添う本当にいいもの。専門家が愛する文房具

「鉛筆ならこれ、ノートはこれ、手帳はこれという具合に自分にとっての定番が決まっている。50代を目前に控え、もはやどれにしようかと迷っている場合じゃないぞ、そろそろ自分の定番を決めようじゃないかと思うようになった(『暮らしの文房具』86頁)」

そう語るのは、ステーショナリーディレクターの土橋 正さん。文具の商品企画やPRのコンサルティング、文具売り場のディレクションを行う文房具の専門家です。

新刊の『暮らしの文房具』(玄光社/税込1,728円)は、そんな土橋さんが選び抜いた定番をピックアップした一冊。「伝える」「考える」「集中する」など、15のシーン別に64点もの逸品が並びます。

どこまでも書ける一筆箋

kurashinobunbogu_01.jpg原稿は万年筆で、原稿用紙に書くのが決まりという土橋さん。『暮らしの文房具』の表紙や見出しも、ブルーのインクの万年筆で書かれた手書きの文字がそのまま使われていて、土橋さんからの手紙を読んでいるような温かみを感じます。

大充実のメモや筆記用具類のなかで、デスクに今すぐ常備したくなったのは、「伝える」の章で紹介されていた「椿原」の蛇腹便箋。一筆箋サイズの紙が蛇腹状につながっていて、「あ、書ききれなかった!」の失敗がなくなる優れもの。折り目にはミシン目がついているので、好きなところできれいにカットできます。

しかも一束で450枚、価格は500円とコスパ抜群。ブルーの横罫線だけのシンプルな見た目がまた、そそるのです。

どこまでも、いつまでも切りたくなるハサミ

kurashinobunbogu_02.jpgデスクに欠かせない文房具といえばハサミ。「集中する」の章で取り上げられていた「アドラー」のハサミは、あまりに気持ちよいので、いつまでもどこまでも切り続けていたくなるとのこと。

「いかにも切れ味鋭い研ぎ澄まされた刃と刃が触れ合う。その感触とともに余計なすき間なく作りこまれた金属同士が擦れていく。そして刃を閉じ切った時に、わっか同士がぶつかって『チョキン』という音がこぼれる。久しぶりに正しいハサミの音を聞いた気がする(『暮らしの文房具』70頁)」

土橋さんは、大切な刃先を守るために、万年筆を置くための枕にこのハサミを置いているのだそう。ふと自分の机の上を見ると、昔から使っている切り口のなまったハサミが、なんとなく恨めしそうな様子で立ててありました......。反省しきりです。

旅には、赤い皮のケースに入れた万年筆を

kurashinobunbogu_03.jpg旅のお供にも、万年筆を持っていくという土橋さん。ただし、ふだんは4本の一軍万年筆を持ち歩いているところを、1本だけに絞るのだそう。その1本を大切にいれておくのが、「カンダミサコ」の赤い皮のペンシースです。

両端にはフタがなく、筒状になっているだけのミニマムなつくり。よく見ると内側にもうひとつ、小さな筒がついていて、ペンをしまうときはこの内筒にクリップを差し込むようにします。筒状なのに抜け落ちない、さりげない工夫にグッときます。ペンを使うときは、反対側から押し出すだけ。

「旅には、日常という繰り返しの日々から強制的に引き離してくれる力がある。~(中略)~そうした印象も、2~3日も見続けていると次第に新鮮さが薄らいでいってしまう。だから、私は旅に行くときは必ず手帳を携えて、肌で感じた新鮮な印象を書き残すようにしている。それは、写真ではなかなか残せない(『暮らしの文房具』132頁)」

旅先にも、システム手帳を駆使した自分だけのガイドブックと、万年筆、深いグリーンの皮のケースにいれたカートリッジインクを持っていく。ホテルの一室を書斎に変える上質な文房具は、旅先というアウェーでも安心させてくれる、土橋さんの頼れる相棒なのでしょう。

書くといえばパソコン、急ぐときはスマホで代用してしまう慌ただしい毎日。学生のころ、あれほど好きだった文房具とのかかわり方が、気づけばすっかりおざなりになっていました。

いつもの文房具を「わたしの定番」と呼べるようになれたら、指先の感覚も、思考回路すらも新しくなりそう。土橋さんの眼を借りて、これからの自分の定番を見つけたくなりました。

暮らしの文房具

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