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睡眠専門医に聞いた、5つの眠りの新常識

疲労回復 ー疲れとうまく付き合うためにー

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大森りえ

睡眠専門医に聞いた、5つの眠りの新常識

寝苦しかった今年の夏も、もう少しの辛抱。そろそろ本気で眠りについて考え、暑さに疲れたからだをケアしたいものです。とはいえ、「理想的な睡眠」とはいったいどんな眠りのことを言うのでしょう。教えてくれるのは、日本睡眠学会認定医の白濱龍太郎さんです。

世界と比べても、眠れていない日本人女性

白濱さんのクリニックを訪れる患者さんの悩みは2つのタイプに分かれます。

ひとつは、仕事中に居眠りをしてしまって上司に指摘されたり、運転中に事故を起こしかけたりという、仕事や命までをも脅かすような深刻な悩み。相談に訪れた他の病院で睡眠外来を紹介される人がほとんどだそうです。

そしてもうひとつは、日常生活に何らかの不調を感じる、仕事などで自分が思うようなパフォーマンスが得られないといった悩み。「後者は、仕事に集中できない、肩こりや頭痛が日常生活に支障をきたすといった不調を感じている方が、その原因を"眠り"に求めていらっしゃいます。実は、こうした悩みの解決策が『睡眠』にあると気づいてくださる方は、意外と少ないのです」

日本人は、先進国のなかでもとくに睡眠時間が短いことで知られています。統計を取ると、睡眠時間が短い国のツートップは日本と韓国。とくに男性に比べて、筋肉の少ない女性のほうが睡眠時間が短くなりやすいのは生物学的にも言われているそうです。つまり、日本人女性は世界で一番眠れていないと言っても過言ではありません。

「とくに30代の女性は、仕事や家事、子育てといったタスクのボリュームが増える世代。睡眠時間を削って無理をしてしまいがちです。しかも、日常生活で感じる不調を睡眠不足のせいだとは気づかず、仕事の忙しさや生理前後の不調、季節の変り目などが原因だと考えて、放っておいてしまう人も少なくありません」

ちゃんと眠れてる? 睡眠の質をセルフチェック

自分は質のいい睡眠を取れているのか、とても気になります。そこで、白濱さんが3つのセルフチェック項目を教えてくれました。

チェック その1「午前中に眠くなる」

交感神経のスイッチが入って、頭が冴えているべき午前中に眠くなるのであれば要注意。ちなみに、14時頃に眠くなるのは体内時計の仕組みからして正常だそう。

チェック その2「好きなことをしていても眠い」

つまらない会議で眠くなるのは、みんな同じ。でも、自分が夢中になれる趣味に興じているときや、ずっと観たかった映画の途中で寝てしまうことはありますか?

チェック その3「思考がネガティブになる」

週末はどこへ行こう。あれがしたい、これがしたい、とポジティブだった人が、とにかく家に引きこもって寝ていたいと思うようであれば、明らかな睡眠不足です。

睡眠時間をじゅうぶんに確保できず、不足した睡眠時間を「睡眠負債」といいます。睡眠負債を返すために、週末に寝だめしたい気持ちもわかりますが「せいぜいプラス2時間にとどめてください」と白濱さん。昼寝や仮眠を上手に取り入れることも有効です。

「睡眠負債は返せるうちはまだいいのですが、不眠症や睡眠障害などを引き起こすと、脳や心臓の病気につながりかねません。チェックリストにひとつでもあてはまる項目があれば、さっそく今日から睡眠を見直してみてください」

もしも睡眠負債が積もって「眠れない、眠れない」と睡眠のことで気持ちが一杯になってしまったら、睡眠外来を訪ねるのもよいでしょう。「睡眠外来のハードルは高いかもしれませんが、寝酒や市販の睡眠薬はあまりおすすめしていません。誰かに眠れないと話すだけで心が落ち着くこともありますよ」と白濱さんも言ってくれました。

理想的な睡眠を手に入れる5つのヒント

私たちが目指すべき"理想的な睡眠"とは、どのようなものをいうのでしょうか。「22時~2時までのシンデレラタイムにしっかりと眠り、レム睡眠とノンレム睡眠をきちんと繰り返し、睡眠時間は8時間しっかり確保する」などという一般的な"定義"がありますが、「それに惑わされる必要はない」と白濱さん。

遅い時間に眠っても、睡眠時間が少し短くても、人間は深い睡眠を得る力を持っています。教科書のような定義に自分をあてはめるのではなく、自分が求める生活を送れるような充電をおこなうことが、その方にとっての理想的な睡眠。眠りを改善すれば不調の改善につながりますし、とくに悩みのない方でもちょっと睡眠を意識するだけでパフォーマンスを上げることができます」

睡眠の質を高めるには、朝日をしっかり浴びる、睡眠前に入浴する、照明を暗くする、寝室環境を整えるといった事柄はきほんの「き」。さらに日常生活で今日からできるヒントを教えてもらいました。

睡眠の質を上げるヒント その1「24時間の棚卸しを」

「できれば6時間半は睡眠時間を確保したいもの。24時間のなかにムダがないかを考えてみてください。家に帰ってから眠るまでの数時間、スマホでネットサーフィンをしながら、ついつい不要な情報収集をしていませんか? 睡眠の質が高まれば日中のパフォーマンスも上がり、仕事が早く片づくようになります。そうすれば棚卸しももっとやりやすくなりますよ」

睡眠の質を上げるヒント その2「適度な有酸素運動を」

「眠る前のストレッチやヨガをして副交感神経を高める大切さは知られていますが、有酸素運動をするとノンレム睡眠が増えやすいということもわかってきました。睡眠に必要な適度な疲労感も得られますし、頭もすっきりしてリセットできます。ランニングでもウォーキングでも何でもOKですが、激しい運動は眠る前は控えましょう。習慣にすることが大切なので、無理なく週一度からでも始めてみてください」

睡眠の質を上げるヒント その3「理想的な3時のおやつは」

15時~17時の仕事が佳境を迎える時間帯には、チョコレートを。原料のカカオには抗ストレス作用があるGABAが含まれています。チョコレートを食べてリラックスすれば、夜にはちょうどいい睡眠モードにつながります」

睡眠の質を上げるヒント その4「夕方のうたた寝に注意」

「快眠には、適度な"眠気"が必要です。したがって、帰りの電車でのうたた寝はNG。夕食後にソファでゴロンと寝てしまうのもやめましょう。ちなみに、眠る直前の食事は眠りの質を低下させます。食事後は消化するまでに3~4時間かかりますから、食事は早めに済ませることが理想的です」

睡眠の質を上げるヒント その5「スッキリ目覚める新常識」

アラームが鳴ったら、スヌーズ機能は使わず一度で起きましょう。最近の研究では、起床時に日本語(日常的に使う言語)の歌やニュースを聞くと、脳が理解しようとして覚醒することがわかってきました。テレビやラジオ、音楽をアラーム代わりに使うのも有効だと言えるでしょう」

白濱さんが教えてくれた「睡眠の質を上げるヒント」はどれも簡単なことばかり。まずは、しっかり眠って体力を養う"夏バテ解消"として、さっそく取り入れてみたいですね。

「睡眠時間が取れていないというだけなら、睡眠外来を訪れて睡眠薬を処方してもらう必要はまだありません。朝起きたときから次の睡眠準備は始まっています。日常生活のなかで少し意識するだけで、眠りは確実に変わってきます。眠りが変わると生き方も変わります。私たちにとって、優先順位を1位にすべきは睡眠なのだと、身をもって感じていただけるはずです」

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白濱 龍太郎RESM新横浜/睡眠・呼吸メディカルケアクリニック院長。クリニックでは睡眠の悩みを抱える方に1日でも早い「心から満足できる睡眠」を取り戻すために診断・治療にあたる。また、経済産業省海外支援プログラムに参加し、インドネシア等の医師たちへの睡眠時無呼吸症候群の教育や医療のシステムの構築に携わるとともに、丸八真綿睡眠センター所長として睡眠環境の提案等も行う。著書多数。日本睡眠学会認定医、医学博士。

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