家からほど近い行きつけの海岸は、午前中は波が立ち、午後は引いていることが多い。月の満ち欠けと同じく、日によって潮の満ち引きも異なるという当たり前のことだけど、せわしなく毎日をやり過ごし、なかなか海に行けない日々が続くと、そういうこともすぐに忘れてしまう。だから自然のサイクルを思い出すためにも、海に行ったり、夜空を眺めたりすることはとても大切なのだ。なんだろう、気持ちがすく。

沖縄もいよいよもって、確実にあの夏に近づいているそんな気配が充満すると、ますます海に行きたくなる。付き合いのいいうちの子どもたちといっしょに、午後の海に行った。

案の定、ずっと沖の方まで引いている。普段は波で隠れている岩礁も、まるで日向ぼっこするかのように藻でエメラルドグリーンに覆われた岩肌を陽にさらしている

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岩と岩を器用に渡り歩きながら、獲物を狙うハンターのような低姿勢で移動する子どもたち2時間くらいのハンティングの成果は、数匹のシャコだった。拾った塩ビ缶を容器にして、「持って帰る」と言い張る。「だけど、そのシャコどうするの?飼うの?」と聞くと、「もちろん食べるに決まってるじゃん」とその気満々。それも、自分で調理すると言うから頼もしい。家に帰り、早速インターネットで「シャコ 食べ方」と検索し、読めない字をわたしに聞きながら作業工程を頭に入れている様子。

湯を沸かし、3%の塩を加え、シャコを数秒茹でる。ざるにあげ、殻をむき、好みのタレで食べる。以上!台所で真剣にシャコと向き合う兄妹は、やがて「出来た、出来た」とひとりごとくらいの小声でそそくさとわたしの前をしれっと通過し、ベランダに出て自分たちの陣地である外のテーブルに向かった。まずは「あぢ!」とか「いて!」とか聞こえてきて、そのうち「うんまー」と賞賛の声。そこでやっとお母さんの出番。「どれどれ」と言いながら、ちょっと味見……。茹でたてのシャコは思ったよりおいしくて、蟹と海老とあさりを混ぜたような濃厚な味がした。「うまく茹で上がってないと、殻がきれいにむけないみたいだけど、上手くいった!」と嬉しそう。

思いがけず、海にごちそうになってしまった。ありがたいことです。

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