夕方、屋上に置いてあるキャンプチェアに腰を下ろすと、あたりからいい匂いがしてきた。近所の焼き鳥屋さんが、炭に火を入れ始めたのだ。のれんを掛け、赤提灯を灯す時間。かと思えば、煮物の醤油っぽい匂いもしてきて、今夜のおかずを作り始める家々の営みを自由に想像すると、その匂いだけでビールが飲めそうだ。

屋上では、時間によっていろいろな匂いが流れてくる。町の黒糖工場からの甘ったるい焼き芋を焼くような匂い。魚を焼くような匂い、下水の匂い、草刈り後の青草の匂い。どれもが人間が放った匂い。高江に住んでいるときは、森の匂いがあまりにも濃厚だったせいで、こうした人工的な匂いの存在を忘れていた。だから、「懐かしい」とも感じるし、「これはまずいなぁ」とも考えたりで、そういう匂いに感情を掻き立たせられることがままある

とくに下水をはじめ、腐敗した類いの匂いはなんとかならないか、と思う。森ではしなかった。なぜかと考えると、ちゃんと分解されていたからだろう驚くべき土のちからを見せつけられた高江での暮らし、5年間をどう活かせばいいか。しばらくはまたあれやこれや試行錯誤の日々です。

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