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  4. 群馬で出会う。草間彌生のかぼちゃケーキ【甲斐みのり「おやつの時間」】
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秋に京都へ移住する友人家族の送別で、伊香保温泉を旅しました。その友人とは、絵本、イラストレーション、小物制作などの分野で活動する夫婦ユニット・tupera tupera。子どもも大人も一緒になってむくむくむくっと想像力が広がる色とりどりの作品たち。それを生み出す本人たちも、いつもにこにこ優しく明るく頼もしく、仕事も暮らしも『生きること』をまっすぐ楽しんでいるのが分かるお人柄。

ツペラツペラのふたりの子どもも一緒に、ツペラツペラ一家を慕う人はあちらこちらに。今回の旅も総勢30名の大所帯で、温泉旅館の宴会場を貸し切って、笑いに満ちた送別の宴を過ごしました

160813_oyatsu42_02.jpg翌日は、宿の近くの「ハラミュージアムアーク』へ。東京・品川にある原美術館の別館で、厩舎を思わせる黒い建物は、建築家・磯崎新の設計。現代美術と東洋古美術をともに鑑賞できるうえ、小さな子どもも隣接する「伊香保グリーン牧場」で、牛や羊やうさぎなどの動物たちと触れ合うことができます。

160813_oyatsu42_03.jpgよく知られたコレクションのひとつが、草間彌生の「ミラールーム(かぼちゃ)」という作品。黄色地に黒の水玉が覆い尽くす展示室の中央には、作品名が表すとおりの、鏡張りの小部屋が。小窓から中を覗くと、万華鏡のように大小のかぼちゃが視覚の果てまで続きます。

そこで出会ったのは、現代美術などという概念のない子どもたちが、水玉とかぼちゃだらけの不思議な世界で、きゃっきゃと無邪気にはしゃぐ姿。大人の列に紛れて何度も小窓に顔を入れ、無限に近いかぼちゃの数を数えていました。私は、悲しみの体験を他人と交換しながら、心にできた傷を癒すその過程を、写真と刺繍文字で綴るソフィ・カルの作品「限局性激痛」の一部を見ることができて、自分の中にも常にある得体の知れない少しの痛みが和らいだような気がしました。

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収蔵作品や展示中の作品をイメージした「イメージケーキ」は、週末の限定。

美術館をひとめぐりしたあとは、美術館と放牧場を望むテラス付きのカフェ「カフェダール」で、草間彌生作品をイメージしたケーキをおやつに。まろやかなかぼちゃのムースは、口に含むとまもなく儚くシュワっととけて、青く甘いかすかな余韻を残します。

友人たちとの何気ない会話、聞き慣れた声、気負いない時間。いつまでも続いたらいいのにと、どこか切なく思うのでした。  

[tupera tupera,ハラミュージアムアーク,伊香保グリーン牧場,カフェダール]

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