妊娠が発覚しどこで産むかを考えるとき、日本では「いま暮らすところで産む」のか「里帰り出産」をするのか、からスタートする方も多いと思います。この「里帰り出産」という考え方、私の知る限りでは日本独特の文化のよう。ドイツ語には、里帰り出産に値する単語もなければ、そういった考え方もありません。

出産後は基本的にパートナーが支える

ドイツでは、親や周りに頼るではなく、子どもは「夫婦2人で」育てていくという考え方が根付いている気がします。だからこその社会的制度の充実や男性側の育児休暇の取りやすさ、助産師制度が充実しているのかもしれません。

あるドイツ人男性に日本の「里帰り出産」文化について話したとき、うまれたての赤ちゃんのかわいい瞬間を見られず、貴重な時間を共有できない疎外感を日本の男性たちはどう処理してるの? 単純に悲しくないの? と聞かれたことがあります。産後の体の回復などを考慮すると、どうしても女性側の立場で判断してしまいがちなところだけれど、男性側から見るとそうなのか! とハッとさせられた一言でした。

里帰りなし、夫婦でがんばる価値

私は外国暮らしのため、里帰り出産が難しいということは確かにあります。ただ、外国暮らしだとか、実家が遠いとか、そういうことをすべて差し引いたとしても、私個人としては、どうしても必要でないなら、里帰り出産はしなくてもいいのでは、と思っています。確かにいまの日本では、夫が仕事で忙殺されている、育児休暇なんて制度だけ、など現実的に夫だけにサポートを頼むのは難しいことも多いのでしょう。でも、シンプルに出産・育児を「共有したいか」という、まずは気持ちの問題なのかなとも。

今はネットスーパーもあれば、時短家電もあり、家事の外注だってできる時代。長い人生のうちの数か月、多少家の中が散らかっていたっていいし、おかずが一品少なくても構わない。ただそういう時期をパートナーと一緒に受けとめ、乗り越える経験も悪くないはず、と思うんです。

生活の変化を共有する意義

女性は、長い妊娠期間のなかで、日々変化する体型や、それにまつわるトラブル、出産そのものの大変さも経験します。一方、特にこれといった変化のない男性。そのうえ、里帰りをして新生児と関わる機会(それに、眠れない日が続く妻を見て知ること)が減ってしまっては、すぐに父親の自覚を持つことが難しいのは当たり前なのかもしれません。

お産の苦しみや神秘もできる限り一緒に経験し、そばにいる。そして、赤ちゃんが生まれたあとの生活の変化をきちんと共有する。それだけで、夫として妻をねぎらう愛情も、父親としての自覚も一段とでてくるのではないかな? 期待も込めて、そんなふうに思います。

160416_germanmama_top.jpg領事館(外務省)を通じて受け取ることができる在外邦人向けの母子手帳。先日たまたま用事で在ハンブルク日本領事館に行った際、お腹の大きな私を見て、職員さんが渡してくださいました。

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