子どもの頃は光り輝いて見えた未来も大人になると環境汚染、エネルギー問題、食糧難などがおおいかぶさってきて、かげって見えることがあります。そんな現状を打開する姿勢のヒントを、あるドキュメンタリー映画で見つけました。

ニューヨークからインドへ

それは、人生の意味を探して旅に出たフランス人青年の記録です。

彼の名は、マルク・ド・ラ・メナルディエール(Marc de La Ménardière)。学業を終えたのち、マルクは、フランスのミネラルウォーターをあつかうビジネスマンとして、ニューヨークに暮らし、刺激の多い享楽的でトレンディな毎日を過ごしていました。

ところがある時、脚の怪我がもとで2か月半の安静が必要となり、暇つぶしにドキュメンタリー映画に手を伸ばしたことが、彼の人生を変えることになりました。

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マルクが見た映画のひとつは、幼馴染であるナタナエル・コスト(Nathanaël Coste)が制作したもので、インドの水問題を取りあつかった内容でした。

水を、世界の人々に共有の財産と考えるのか、限られた裕福な者だけが得られるぜいたく品と考えるのか。その2つの相反する考えを目の前にして考えこんだマルクは、ぜいたく品として水を販売する自分の仕事に疑問を抱き、辞職して、インドのナタナエルのもとへと飛んだのです。

二人三脚でたどった自己再生の旅

10年ぶりの再会を果たした旧友2人は、そこから二人三脚で「意味を求める旅」をはじめることになります

インドから、サンフランシスコ、フランス、グアテマラと舞台を移し哲学者、経済学者、作家、ジャーナリスト、生物学者、思想家、歴史学者らと膝を交えて語り合いました。そして、ナタナエルはその思考と認識が深まる過程をドキュメンタリー映画『En quête de sens (意味を探して)』にまとめました。私が見たのはこの映画です。

記録された現代の賢人たちの言葉には、多くの思考の種が埋めこまれていて、一度の視聴では受け取りきれず、何度も見直しました。また、この旅を終えた2人が今どうしているのかも気になり、コンタクトを取りました

2人はこの旅を通して、自己再生のような濃い体験をしたそうです。また、「世界は私たちに属しているわけではなく、私たちが世界に属している」という実感を得て、旅の前と後では、世界を見る目が全く変わったと話してくれました。

私たちは世界の一部である

「自分がこの世界の一部であると感じることは、大きな力を与えてくれる。なぜなら世界はすばらしい創造力で満ちているから」

(『En quête de sens』より翻訳引用)

ドキュメンタリーの中でこう説くのは、その力強いビジョンが圧倒的だったとマルクが振り返るインドの哲学者Vandana Shivaです。

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私たちはみな世界を形づくる細胞のひとつ。そうしてマルクたちが悟ったように「世界を変えたいのなら、まず、その一部である自分を変えること」がたいせつな一歩なのです。

現在、マルクとナタナエルは、上映や講演会を通して、このメッセージを人びとに伝える活動に専念しています。日本を含む外国での上映も検討中です。フランスでのフィードバックは、本人たちがおどろくほど肯定的だそうで、人びとの関心の高さも感じます。

旅のあと、この上もなく「生き生きと、安定し、力がみなぎるように感じた」というマルクとナタナエル。彼らの旅路はまだはじまったばかりです。

[『En quête de sens 』]

image,label,walk via Shutterstock

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