喫茶店や歴史的建造物を取材で巡っていたとき。たまたま別の場所で、同じような話を伺いました。「創業者(もう一方は建築家)が、[角]を嫌っていたために、ここの家具のほとんどは、まるみを帯びているのです」。そう言われてみると確かに。その場所に身を置く間、不思議と安心感を得られたのは、視界にほとんど角ばったものがないからなのか。それ以来、普段の暮らしの中で、「まるみ」と「角」を妙に意識するようになりました。

3月の年度末に突入し、するべき仕事が山積みの日々。気がせかせかと落ち着かぬ時ほど、おやつの時間を大切に。一度、小休止をはさむことで、すべきことを落ち着いて建て直し、朝からむくむく広がりつつあったストレスもリセット。おやつのあとに、あとひと仕事するための、力が再び蓄えられます。

「泉屋東京店」の「リングターツ」

そうだそうだと、思い出します。おやつ箱に、まるいクッキーが入っていることを。昭和2年に、日本ではじめてのクッキーを京都で売りだした「泉屋東京店」の「リングターツ」。

泉屋東京店は、夫婦ふたりで創業した店。夫を亡くし、母子でこれからどうして生きていこうか人生の苦難に直面したとき。「このクッキー、浮き輪に似ているね」。子どもの一言に、夫人はほっと救われたそう。浮き輪は「人の和」を表し、たとえ嵐の中でも沈まぬ安心感があります。そうして会社のシンボルマークとして、浮き輪が描かれるようになりました。

まるいおやつを味わいながら、みるみるふっくらまるい気持ちに。赤いゼリーがちょこんとのったチョコレートクッキーまで、笑い顔のように見えてきました。

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[泉屋東京店]

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