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「帰ってきたくなかった」ネパール地震直後、現地滞在の記録

「帰ってきたくなかった」ネパール地震直後、現地滞在の記録

2015年4月25日、ネパールを襲った大地震。覚えている人も多いでしょう。

そのとき、私の住むフランス北部の国際学校の学生20人が、引率の先生3人とネパールに滞在中でした。混乱のなか、なかなか連絡がつかず心配の声があがりましたが、数日後、全員無事に帰国しました。

自分たちだけ、帰りたくなかった

彼らは当時15~16歳、日本でいえば高校1年生。ネパールへは、人道的支援目的で訪れ、カトマンドゥから32km北東に位置する集落で子どもたちに英語を使った授業や活動を提供していました。

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帰国直後、さぞかしほっとしているだろうと思いきや、メディアの取材を受けた学生が、「ネパールの人たちを(復興もできていない)あの場において、帰ってきたくなかった」と答えたのが印象的でした。あとで聞いたところ、空港で「帰りたくない」と涙を流した学生は、取材を受けた学生ひとりではなかったそうです。

そんな彼らが、最近、ネパール滞在の記録で、小さなドキュメンタリー映画『Thanks A Million』を制作しました。

人と人がつながること

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約40分のドキュメンタリーの4分の3は、地震以前の彼らの活動を追っています。引率のひとり、グリーンウェイ先生が、人道支援目的の活動をコーディネートする団体Himalayan Voluntourismとめぐり合ったことから実現にこぎつけたこの旅行。

出発前の学生のインタビューから始まる映像は、空港やバス移動の景色などを追ったあと、Nagarkotの学校にたどり着きます。近隣の子ども約50人が集まる学校で、クラスは6つあるのに、政府が割り当てた教師は3人だけという場所です。

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子どもたちの両親は、都会に出稼ぎに行っていたり、地元にいても、早朝から農作業に出るため、多くの子どもたちは、朝も昼も食べずに学校に来ています。

それでもインタビューされた子どもたちは、みな学校が大好きだと言い、将来は「医者になりたい」「教師になりたい」と明るい表情で答えています。

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フランス出発前の募金活動で準備した筆記具を配り、絵を描いたり、縄跳びをしながら数を数え、算数の授業にしたり、踊ったり、世界地図を広げて、遠い世界の話をしたり、理科の実験をして見せたり、高校生たちがそれぞれ、子どもたちと絆を結んでいく様子が流れます。

Himalayan Voluntourismを2008年に立ち上げたPrabin Gautamは次のように語っています。

ボランティアの学生たちが、数日で何かを変えられるとは思っていないよ。

一番大切なのは、人と人とをコネクトすることだと思うんだ。パーソナルな感情による結びつきをね。

(『Thanks A Million』より翻訳引用)

Prabinが望むような強い絆を結んだ、子どもたちと学生たち。最後のお別れ会では、送る側と送られる側、どちらも胸いっぱいな表情になっています。愛情がないと捉えられないようなネパールの子どもたちの表情を、カメラが追っていきます。

新しいiPhoneより、サングラスより大切なもの

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その夜インタビューに答える学生たちは、みな禊(みそぎ)を終えたあとのように、すっきりと輝く表情を見せていて、圧倒される思いがしました。

この1週間を終えて、いままでの人生で感じたことのない感情を味わっているわ。(中略)この世でいちばん素敵な感情って、誰かの役に立ったときの気持ちなのね。(中略)この旅行で、私の人生も、人生を見る視点も変わったと思う。ここに来る前は、こんなにも影響を受けるとは思わなかった。いままで大切だと思っていたのはみんなただのマテリアル。新しいiPhoneだとか、かっこいいサングラスだとか、そんなものには何の意味もないのよ。だって、必要ないもの。(中略)それを教えてくれたことに、100万回ありがとうって言いたいわ。

(『Thanks A Million』より翻訳引用)

子どもたちに食堂と給食を

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そしてこのお別れ会の翌日、地震が起こりました。そのとき学生たちは、集会所で子どもたちと最後の活動の真っ最中。幸い、すぐにその建物から脱出でき、ひとりのけが人も出ませんでした。集会所は地震が起きた2日目に余震の影響で崩壊したそうです。

集落の家々にも被害があり、出稼ぎに出ている家族の行方が分からない人も多いなか、フランスから来た学生たちのために、畑に仮のテントを張り、食料品の手配もしてくれたといいます。

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ネパールへ発つ前から、学生たちはミニ会社NEPAL, Inc.を立ち上げ、様々な手段で募金活動を行ってきました。このドキュメンタリーの制作、DVD販売も、支援方法のひとつとして、もともと計画されていたことで、いまも映画の上映会や、コンサートなど開き精力的に活動しています。

彼らの目標は、学校に子どもたちの食堂をつくり、5年間まかなえるだけの金額を集めること。しかしながら、地震に遭ったことで、活動の意義は更に深くなったと、学生たちは話してくれました。

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「最初は、NEPAL, Inc.のプロジェクトを、それほど長いタームでは見ていなかったんだ。卒業までのつもりだった。でも地震によって、僕たちの意志もプロジェクト自体も変わったよ。だって、地震で多くを失くして、みな前よりさらに援助を必要としているからね」。

学生たちは現在高校2年生。あと1年半で卒業です。卒業後のNEPAL, Inc.の活動については「僕たちが卒業する前に、下の学年にバトンタッチできたらと思っているんだ。それに、僕たちも、みんなそれぞれ違う国や町に行っても、将来、全員そろってまたネパールを訪れたいと思ってる。何人かは、高校卒業後1年のサバティカルイヤーを考えていて、ネパールで1年間ボランティア活動をするつもりなんだ」。

将来は社会に貢献する仕事がしたい

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ネパールへ行ったことで、彼らの将来の計画も、影響を受けました。

「複数の学生が、人道的あるいは社会目的を持った職業に就きたいと考えるようになりました。例えば、リコは、将来はUNICEFで働くと心に決めたらしい。僕自身はまだ決められていないけれど、直接的にせよ間接的にせよ、社会的な目的を持っている職に就きたいと思っています。社会に何も貢献しない職業には就きたくないですね」。

つくづく、このネパールへの旅行は、彼らの価値観を底から覆すほどの大きなインパクトを持っていたのだと思いました。目的を持ったことで、学生たちは一回りも二回りも大きくなったように見えます。

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引率のグリーンウェイ先生は、地震後間もない避難所で、既に、下のように語っています。

今の状況は、陰となる経験かもしれないけれど、それでも、この旅行は、私にとっては「大成功」だったと思っています。あなたたち、この一週間で、本当に変わったわ。誇りに思うわ。教室では決して学べないことを生きたんですもの。教師の役割は、人生に漕ぎいでる準備をさせることだと、私は常々思っているの。コンフォートゾーンを出ることは大切よ。困難な状況でしか、自分の限界も可能性も知ることはできないのだから。

(『Thanks A Million』より翻訳引用)

心の柔らかいうちに、塀を越え、異なる環境に身を置くことで、輝くような成長を遂げた高校生たち。彼らの人生をおそらく変えたに違いない旅を間近に見て、私もしばらくドキドキが止まりませんでした。

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NEPAL, Inc.,Himalayan Voluntourism

Writing by冠ゆき

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