ここ2、3年、フランスで静かな人気を呼んでいるのが「Anciens légumes(昔の野菜)」。「Légumes oubliés(忘れられた野菜)」とも呼ばれ、大量生産に向かなかったり、戦時中の食料だったことからイメージが悪くなり、手に取られにくくなってしまった野菜たちです。

なぜ「昔の野菜」がいま注目されているの?

じつはこれらの野菜、農薬も肥料も少なく栽培できるため、流通しているほかの野菜よりもビタミンやミネラル、繊維質が多く含まれているのだそう。

また、ほかの野菜にはないそれぞれの個性的な風味も、昨今のブームの原因のようです。私もいつもの料理にちょっと毛色の違う一品を加えたいときに、これらの野菜を使っています。

具体的に挙げると「ポティマロン」「トピナンブール(キクイモ)」「ルタバガ」「パネ(パースニップ)」といった種類のものなのですが、「ポティマロン」は、「ポティロン(かぼちゃ)」と「マロン(栗)」が合体した名前になっているとおり、ほくほく感のあるかぼちゃといったところ。「ルタバガ」は、見た目も味もカブに似ていますが、カブほど淡泊ではありません。

ダイエットにもおすすめ「キクイモ」

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一方、個性が強いのは日本でも売られている「キクイモ」。「キクイモ」は、ビタミンB3のほか、リン、ポタシウムなどのミネラル、繊維も豊富。イモとはいいますが、デンプンをほとんど含まないためカロリーが低いのが特徴です。100グラムで31キロカロリーと、同量のジャガイモの85キロカロリーと比べると、その低さがよくわかります。フランスではジャガイモ料理に混ぜてダイエット食として使う人も多いようです。

見た目は細長い里芋のような感じですが、ぬめりはありません。味は、生で食べると意外な甘味に驚くでしょう。シャキシャキした食感で、サラダにも使えます。フランスでは「イェルサレムのアーティチョーク」とも呼ばれており、確かにアーティチョークに近い感じがします。

生で食べるなら、小さく切るか、目の荒いチーズおろし器でおろして、ささがき状にするのがおすすめです。同じようにささがき状におろした人参や、根セロリと合わせ、乾燥イチジク、クルミ、リンゴなどとヴィネグレット(サラダドレッシング)で和えると箸休めにぴったりの一品に。

また、火を通してもおいしい野菜です。ピューレやポタージュにも向きますが、そのまま輪切りにして、ニンニクやネギと一緒に塩コショウで炒めるだけでもおいしくいただけます。

私のおすすめは、小さく切ったキクイモを直接牛乳で茹でる調理法。吹きこぼれないように気をつけなければなりませんが、ひたひたよりちょっと多めの牛乳で10分も茹でれば完成。煮詰まった牛乳がキクイモの甘味にクリーミーに絡まります。火からおろしたら、フォークの背で、荒くキクイモをつぶしてどうぞ。

意外な調味料と相性の良い「パースニップ」

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また「パースニップ」も、ビタミンB、C、E、Kや、マグネシウム、ポタシウムなどミネラル、繊維が豊富な野菜です。抗酸化物質も含みます。見た目は白っぽい人参。味も少し似ていますが、火を通した食感はサツマイモに似ています。味は、よくナッツに例えられますが、私は、アニス系の香りが一番の特徴だと思います。

こちらも生でも食べられます。もごもごした食感になりやすいですが、ささがき状におろしたパースニップを、おろしたエメンタールチーズと、ショウガとともにレモンのヴィネグレットで和えると、あっさり上品な一品に。

人参やポティマロンと混ぜて、ピューレやポタージュを作るのにも向いています。

オーヴンでローストしたり、フライパンで炒めて火を通すと、ぐんとほくほく感が増します。火を通したパースニップにぜひかけてみてほしいのは、メープルシロップ。きっと、その相性の良さに驚くでしょう。メープルシロップは、抗菌作用でも知られていますが、モントリオール・マクギル大学の最近の研究では、抗生物質の効力を高める作用も明らかになったところです。寒くなるこれからの季節は、特に積極的に摂りたい食品なので、野菜と組み合わせて、料理に活用できるのは嬉しいことです。

「忘れられた野菜」と呼ばれてはいますが、その実、忘れずつくり続けてきた人がいるから、いまこうして食卓に並べられるのでしょう。植物の生命力の強さと、根気のいる農作を続けてきた人々へ感謝しながら、今日も「いただきます!」。

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