これを言うと驚かれることが多いのですが、実は料理をする時、味見をしません。味を見ながら少しずつ調味料を足していく、というのは失敗せずにつくる方法として定番かもしれません。でも、それよりも、つくることにちゃんと集中して、身体が動くままにつくると、ぴたっとくる味になります。身体が今の自分に必要なものを知っているのではないかなと思っています。

そんなわけで、たとえば、おしゃべりをしながら、考えごとをしながらつくると、作り終わってから、あれ? という味や仕上がりになっていることがほとんどです。でも、頭をからっぽにして、冷蔵庫から食材を取り出すところから始めると、たいていはちゃんとおいしく、今の身体に必要なんだなあ、というものができあがっています。

そして、お母さんがつくる料理がおいしい理由のひとつには、きっと、ただ家族の健康を願って、家族のおいしい! というしあわせな顔を思い浮かべて、ただそれだけのためにつくる、というのがあるのではないか思うのです。そんなふうに他意がなくなるときというのは、直感が働きやすくなりますし、そうすると必要なものが必要なだけやってくるからです。

また、アーユルヴェーダでは、作りたてのものを食べ、残りものは食べないことがおすすめされています。ここでいう残りもの、とは口を付けたもののこと。そのため、料理中に味見をすると、すべてが残りものになってしまうとされ、味見をするなら、せめて小皿にとって味見をしましょう、といわれています。さらに、インドのお坊さんたちは、味見をせずに食事を作り、まず神様にお供えしてから自分たちが食べます。どちらも作り立てのものはサットヴァな質で、残りものはタマスな質とするヴェーダ文化が原点です。

頭で考えずに、直感で身体が動くままにするのは、自然の中で調和的に生きる方法だと思うのです。家の中でいちばん自然とつながりやすいキッチンでそれをしてみるのは、そんなふうに生きていく練習にいいんじゃないかなと思っています。

今日食べたもの(仕込んだもの?):新生姜の醤油煮

新生姜が出回ってきました。実りの秋は、保存食作りが楽しい季節でもあります。この新生姜の醤油煮は、ごはんのおとも。毎年必ずつくります。1年くらいは保存できるので、たくさん作って瓶に詰めておきます。

新生姜は洗ってスライスします。繊維を断ち切るようにしても、繊維にそっても、どちらでも、厚さもお好みで。最初の年は、あえていろいろな切り方にして、好みを見つけてもいいかもしれません。

スライスした生姜を鍋にいれ、醤油をひたひたに注ぎます。お好みの量の砂糖(きび砂糖でもてん菜糖でも何でも、もちろん砂糖なしでもOKです)を加えて、中火にかけます。沸騰したら、弱火にして気長に煮詰めていきます。

煮汁が少なくなってきたら中強火にし、焦げつかないように気をつけながら煮切ります。冷めたら煮沸した瓶などに詰めて冷蔵庫へ。瓶を再度煮沸して真空にすれば、常温で保存もできます。数日〜1週間程度おくとだんだん味がなじんできます。

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