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【新連載】石井ゆかり「手のひらの言葉」vol.1 家族

石井ゆかり

【新連載】石井ゆかり「手のひらの言葉」vol.1 家族

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石井ゆかりさんの新連載がスタート。日常にあるなにげない「言葉」をひとつずつ手のひらにのせて眺めてみる......そんなエッセイを石井ゆかりさんにお願いしました。今回の言葉は「家族」です。

マイロハス編集部さんから「お題」を頂いて書くコラム企画、記念すべき第一回のテーマは「家族」だった。

これは、なかなか難しい。世の中には様々な「家族」がある。同じ言葉で表現していいのかなと思うくらい、そのナカミが違っている。家族のために生きている人、家族のために死ねる人もいれば、家族を憎んでいる人、家族のおかげで死にたくなっている人もいる。以前、占いの文章の中に「家族」という言葉を使ったら、「私には家族がいません」「家族という言葉を使わないで頂けますでしょうか」と言われたことがある。確かに、家族のない人もいる。それ以降「身近な人や、家族や......」という表現を使うようになった。

愛ある家族もあれば、愛のない家族もいる。ただ、家族に対して、「優しさや愛を求めたことがない人」は、ほとんどいないだろう。赤ん坊は無償で世話をしてもらえなければ、すぐ死んでしまう。「無償で世話をする」のは愛としか言いようがない。だれだって生まれたばかりの状態では、必死で家族の愛を求める。そうして求めたのに、愛を得られなかった人たちは、いわば「裏切られた」ことになる。自覚しているといないにかかわらず、深く傷つくことになる。

最初から「ない」と思ったものなら、実際、存在しなくても、人は傷ついたりしない。「あるだろう」と思ったものがなかったときだけ、人は傷つく。「家族」という言葉の持つ、あたたかく守られるイメージは、それに触れられなかった人を傷つけてしまうのだ。

多くの人が体験して知っているように、「保険や車や住宅メーカーのCMに出てくるような『絵に描いたような家族』」はほとんど、実在しない。なのに、それを「普通の家族ってこんな感じだ」「家族ならこういうふうなはずだ」と思うために、「あるはずのものがない」と苦しんでいる人が、少なくない。「家族」という概念には、そんなふうに、暴力的なところがある。

「あるだろう、と思ったのに、ない」ことに傷つくのは、愛されるはずの側ばかりではない。「親は子どもを愛する」ことになっているのに、子どもへのあたたかな感情が胸に湧かなくて悩み苦しむ人もいる。もし、他人であったなら、「この人を愛さなければならないのに、愛せない」などと悩むことはないだろう。でも。「愛情らしい感情が感じられないのに、それに耐えて無償で世話をする」ことは、よく考えると、愛の行為でしかない。自分と戦って、「相手のため」に力を尽くしているのだ。これが愛でなくて、なんだろう。

ある本の中に、子どもが優しい母に向かって話すこんな台詞があった。「母さんってみんなこんなに素敵なの?」。残念ながら、そうではない。「母さんだからやさしい」のではなく、その女性がひとりの人間として、賢く優しい人物だっただけだ。その女性が、その子を愛していた、というだけのことだ。母さんだから素敵なんじゃなくて、その人が素敵なのだ。それは、とても素晴らしいことだ。心の中がどうだろうと、責任持って世話をしたなら、それもまた、立派なことだ。

母親を亡くして辛い父が死んで立ち直れないというメッセージをもらうことがよくある。そういう人たちは「幸せな人々」だと思う。もちろん、大切な人が亡くなったのは、決定的に辛く悲しいことだ。でも、「辛く悲しく思える」というのは、つまり、その人が母や父に愛されていたということだ。失って立ち直れないほどの愛がそこにあったのだ。その人は彼等に愛されたのだ。親だから当たり前に愛した、のではない。ひとりの人間として、愛してくれたのだ。それは間違いなく「幸福なこと」だろう。

ためしに自分のブログを「家族」というキーワードで検索したら、東日本大震災直後の日記が幾つもヒットした。災害、事故、なにかのトラブルの時、「家族」が登場する。「家族」というのは、おそらく、その外側の世界と戦わなければならないときに、もっとも境界線がクリアになるのかもしれない。外の世界があるからこそ、家族であり得る。家族以外の人々と戦わなければならない時に、突然、家族が無限の意味と力を持つ。

自分以外のものを自分自身と同じように思い、必要ならば世話をし、一緒に生きていく。こんなに大変なことはない。「誰でも自然にできる」ことではない。でも、私たちは「家族」の運営の仕方やその意義について、学校で習ったりすることはない。なのに、「家族」という言葉のイメージの中に「あるべきだ」と思われるものが見つからないと、私たちは簡単に傷ついてしまう。

「家族」は、本当はすごく難しい、複雑なものなんだと思う。そこに「あるはず」と思われているものは、決して、デフォルトにあるわけではない。あるはず、と思われているものがそこに見つかるのは「家族だからあたりまえ」ではない。

私は子どもの頃、2つの「大家族」で育った。でも、今では両方とも、存在しない。泡のように消えてしまった。何人もの家族が死に、あるいはちりぢりになって、あのユニットは跡形もない。「家族」はいつもそこにあるようでいて、実は「一瞬のできごと」なんだと、よく思う。

(文・石井ゆかり、イラスト・山本祐布子)

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