バリ2日目(3月21日) ウブドにて
ヴィラで出会った水先案内人、ガブリエル
ガヤトリ・ラグジュアリー・ヴィラにはスパの施設はないが、ヨガもマッサージも、オーダーすれば、バルコニーでもプールサイドでもベッドルームでも、好きな場所でそれを体験することができる。私は3日間、朝8時からヨガのプライベートセッションをお願いした。
来てくれたインストラクターはウブド在住17年と言うドイツ人のガブリエルさん。
会った瞬間に私にとって、とても良い人だという直感がした。邪気がまったく感じられない。
時間通りに到着後、さて、どこでセッションをしようかしらね?!と、場所探し。
2階のバルコニーから見える山並みを見た瞬間、ガブリエルはそちらに向かって手を合わせマントラをとなえていた。そこからは彼女が信仰する聖地とされている山が見える素晴らしい場所らしい。
セッションの場所はそこに決定、セッティングして安座したところで彼女から、「私はアシュタンガヨガを教えていて、師はアルサナだ」と説明があった。まさかとは思ったが、念のため聞いてみた。
「あなたの師とは、ボディワークスセンターのアルサナさんですか?」
実は私が今回バリ行きを決めた理由に、アルサナ氏のマッサージを受けてみたい、ということがあった。バリ通のお客様から幾度となく「アルサナさんのマッサージはすごい。彼の予約を入れてから飛行機、ホテルを取る人がいるくらいよ」と聞いていたので調べてみると、アルサナ氏は代々ヒーラーの家系だそうで、個人のヒーリングセッションや、ヨガを教えているとのこと。
1月にバリ行きを決めてから彼の予約のキャンセル待ちをしていた私。このヴィラからと日本からと10回くらい電話したけど、結局アルサナ氏の予約が取れなかったのだ。
そういう事情があったので、ガブリエルがアルサナ氏を知っているというのが、すごいシンクロニシティに思えて驚いた。
その話をしたところ、彼女は
「良いタイミングだわ、今日はAshram Munivara(アシュラム ムニバラ アシュラムとはサンスクリット語で“祈りの場”の意)でプルナマ(満月)のセレモニーがあるからよかったらいらっしゃい。アルサナ師を紹介するわ。マッサージは無理でもエネルギーワークはしてもらえるかも」
と言われて更に驚く。
突然私が参加して大丈夫かと心配していたら、「白いクバヤ(バリ島の女性の正装のブラウス)とサロン(衣装)が必要だけど、なければ私が揃えておいてもいいわよ」と言ってくれたのでお願いする。
「だいたい50名くらい参加すると思うから、終了後は混雑してアルサナ師とは話せなくなるはずなので、19時前に来てね。場所はホテルのドライバーに伝えておきますね」
とあっという間に段取りしてくれた。
肝心のヨガは呼吸法とその時に唱えるマントラを教えてもらって練習した。
太陽礼拝のポーズと他いくつかのポーズを丁寧に教えてもらって、約1時間半で終了。
今まで3年くらいヨガの経験はあるので、もちろんこれらのポーズは形はできるけれど、全然自分がやっていたことは違っていたと感じてここでもまた驚く。
アルサナ氏とのシンクロニシティな時間
セレモニーまで時間があるので、昼はガヤトリ・ラグジュアリー・ヴィラ のgigih(ジジ)さんにドライバー兼ガイドをお願いして、有名な観光名所のゴアガジャや、木彫りの店に連れていってもらう。木彫りの店では悩みに悩んでブラフマンの木彫りを一体買った。手で彫っているので、一体ずつ皆顔が違うのだ。
その夜が満月という事もあって、街のあちこちではいつも以上に頭にお供え物を乗せた女性の姿や、お祈りの儀式が見られる。
レゴンダンス(貴族の儀礼のために奉納される宮廷舞踊)の衣装を着けた女の子たちが通りを歩いたりしていて、町の空気も華やいで見えた。車の中から可愛らしい女の子の集団を見つけ、 彼女達たちに声をかけ撮影した。
午後からは儀式に参加するためにゆっくりお風呂に入り、ヴィラのリビングで瞑想をしながらくつろいで過ごした。
18時半ごろアシュラムに到着したが、午後から降り出した雨が勢いを増していて、途中の道路が田んぼからの水であふれてしまっていた。
待っていてくれたガブリエルが、自分で作ったというクバヤとサロンを着せてくれ、裸足になって準備完了。私からの捧げものとしてイエローココナツの実も用意してくれていた。ここで私と同じ様にはじめて参加したカナダ人のサンディーを紹介される。
このセレモニーの参加者は、サンディーとガブリエル、その他2人と私の5人だけ。大雨のため、50人以上の参加予定者はみんな来られなかったようだ。「もしかしてアルサナ師とたくさんお話できるかもしれない」とガブリエルがささやいた。
ココナツを持って、祀られている神様のひとつずつの意味を説明してもらいながら、順番に祈りを捧げていく。私とサンディは見よう見真似でガブリエルの後に続く。儀式を行う場所ではすでに一人の男性が台の上で祈りを捧げていた。アルサナ氏だ。そのまま私たちもその後ろに安座で座り、合掌して目を閉じる。祈りを捧げる僧侶の後ろで、私たちも瞑想のポーズでお祈りをする。例えて言うなら、日本の神社で護摩を焚いてもらう時のようなイメージ。とても神聖な空気が流れていた。
1時間ほどのお祈りの後に、アルサナ氏が私の前にやって来て頭に手をあててくれる。
頭の触れられているところの感覚がぼーっと熱く広がるような感じだった。
皆を一巡したあとに、彼は私に「それでどうしたの?」と優しく話しかけてくれた。
アルサナ氏からもらった気づき
「日本でアロマセラピーのマッサージをしているのですが、このところ持病の首のヘルニアと腰の痛みが出ていて、これからもお客様に最高のお手入れを提供し続けることに不安を感じている」と話した。するとアルサナ氏は私の右手のひらに何かを書いて胸に手を当てさせ、その後同じ事を左手にもしてくれた。
「あなたの人生には歌と踊りが足りない。もっと人生を楽しみなさい。人生はもっと美しいものですよ。昔の日本人は天照大神を崇拝していましたね。この国と同じように神を心に持つ国民です。今日本人は忙しすぎて、自分の中にいつも神がいる事を忘れてしまっている。もっと神を自分の近くに、自分の中に感じればストレスや痛みはなくなるはず」。そうおっしゃった後に「明日のお昼12時に来なさい。首と腰は僕が治してあげるから、良いマッサージをしてください」と、言ってくださった。
お話を聞いているうちに涙が出て来て止まらなくなった。思い当たる事がとてもたくさんあるからだ。
私の中では努力やがんばる事が美徳であった。いつも将来の目標や予測を立てて、それに向かって一生懸命にがんばってきた。今この時を楽しむというよりも、いつも未来に向けての心配をクリアするために生きて来た。自分の体や喜びのことよりも、家族や会社、自分を取り囲む人たちのことを考えていた。
ガブリエルを振り返ると、とても嬉しそうに私を見てにっこり笑ってくれた。
その後、アルサナ氏は日本語で「生きている喜びを、出会えた喜びを胸に…」というような歌を素敵な声で歌ってくれた。同様にカソリックだというサンディの話を聞いて、ハレルヤも歌ってくれた。
アルサナ氏はお祈りのあと、1時間半ほど私たちと楽しそうにお話をしてくださって、セレモニーは終了した。
帰る頃にはすっかり雨もあがって、真っ暗な田んぼ道は雨を堪能した草のみどりの匂いでいっぱいだった。
不思議としか言いようのないガブリエルやアルサナ氏との出会いから、やっぱりバリは神の国なんだと思わざる得ない出来事が続いた満月の夜だった。





