水を象徴する『Quan Spa』で、ホリスティックなひと時を
スパに一歩足を入れると、ホテルのスパには珍しく明るくて、太陽の光がさんさんと降り注いでいた。
南国いっぱいのムードの中、果物の香り漂うウェルカムドリンクがまずセラピストから美紀に手渡された。
セラピストの説明によると、『Quan Spa』の『Quan』というのは水のことで、中国の文化では『水』は福のイメージがあり、広東人にとっては富や反映の象徴。
さらに『Quan』は『全て』を意味する別の漢字の同義語なので、全ての良いもの、純粋なものが永遠に湧き出す源を意味する『Quan』というのは、とても縁起の良い言葉だそうだ。
『Quan Spa』は、世界でもまだ5軒しか展開していない、マリオット・ホテル・グループのオリジナルスパブランドで、昨年オープンしたばかりのここルネッサンス上海豫園ホテルでも、大人気なのだという。
「ルネッサンス上海豫園ホテルは『Quan=水』をテーマにお客様一人ひとりに合わせたトリートメントを提供します。ゆったりした時間をどうぞ」とセラピスト。
トリートメントメニューには、昼夜と異なるエッセンシャルオイルを使用するアロマフュージョン・マッサージや、温めた石を使って体内の酵素運搬作用を刺激して疲れと筋肉の緊張を取り除くアースストーン・マッサージなどがあった。
美紀は角質を取りながらクレイでケアする『Deep Detoxifying Mud Body Wrap』を施してもらった。すると嬉しいことに、肌がつるつる。
潤った肌で部屋へ戻ると、俊樹がガウン姿で出迎えてくれた。
「久しぶりだね」
俊樹に抱かれると、微かに煙草の匂いが。
「煙草吸っているの?」
「いや、別に…」
以前、緊張すると煙草を吸うことがあると俊樹は言っていた。ひょっとして私との再会は、彼にとってのプレッシャーなのかしら?
美紀は俊樹の緊張を解きほぐそうと夕食に誘い、ルネッサンス上海豫園ホテルにぴったりのハイビスカス色のサンドレスに着替えた。
「綺麗だよ」。
俊樹に褒められると、嬉しい。
やはり私は彼のことが好き―――
美紀は俊樹に寄りかかり、「あなたも着替えたら」と耳元で囁いた。
上海の夜景に、二人の気持が一つに高まるロマンチックな夜
夕食は木の色を基調とした明るいビュッフェレストランだった。
洋・中・和・デザートまで、ホテル自慢の料理がずらり。味は期待以上で、オーガニック素材を使ったものや、オーガニックワインまであった。
お腹がいっぱいになったところで、上海の夜を散歩しようと俊樹が提案。
部屋に戻ってカーテンを開けると、雄大な豫園の夜景の向こうに浦東の近代ビル群が広がっている。
「綺麗な夜景ね」
二人で夜景を眺めていると、静かに時間が流れていく。
8年の同棲生活の間に、二人で一緒に見た景色はどのくらいなのだろう。
一緒に見ているようで、視線は別々のところを向いていたかもしれない。
でも今は二人で一緒の風景を眺めている。
きっと考えていることも同じだ。
美紀は嬉しくなって、思わず俊樹の手を握りしめた。
「プールで泳ごうよ」と俊樹。
「上海の夜景を、最上階のプールから眺めるんだ」。
美紀は頷き、二人は手を取り合って、最上階のプールへ。
そこは今まで見たことがないような景色が広がっていた。
上海の夜景は、まるで宝石のようにキラキ光り、プールの水面に反射して、二人の未来も多面的に照らしていた。
(テキスト/夏目かをる)
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