すれ違いの二人に訪れる穏やかな時間は、沖縄の自然からの贈り物
エコツアーが終わり、今度は、「泳ぎに行こうよ!」と元気な大輔。
二人はウッパマビーチへ。
真っ白な砂浜が長さ1kmも続く美しいビーチに、直美は感嘆の声を挙げた。
大輔はすぐに海へ飛び込んで、「早くおいで〜」と手を振っていたが、直美は水着の間から露出している肌に、日焼け止めクリームを塗るのに忙しかった。
やっと海へというときに、直美は目を見張った。
大輔がエコツアーのカヌーですれ違った二人連れの女性の一人と、楽しそうに泳いでいる。
白い砂浜の広がるまぶしい太陽の下で、直美は自分ひとり置いてきぼりにされた空しい気持ちになり、ホテルへ戻った。
直美が一人でチェックアウトをしようとしていたら、大輔が戻ってきた。
「ちょっと待ってよ。話をしようよ」と、ロビーに誘う大輔。
「こんなきれいな沖縄の自然の中にいて、何が不服なんだよ」
と不機嫌な大輔。
いいわ、と直美はこれまで抱えていたことを全て打ち明けた。
「私が堪らないのは、大輔の態度よ。いつも自分本位。アウトドアもいいけど、たまには私の好きな映画を一緒に観に行こうとか、食事はいつも居酒屋ではなくてたまには東京のオーガニック料理店で体に優しいご飯を食べようとか…私の好きなことをどうして一緒に、って思えないの?」
大輔は驚いた。
「気がつかなかった」
「ひどいわ」
直美が涙声になると、大輔はうな垂れた。
「ごめん」という一言がいえなくて、無言の大輔。
そんなときに、ウクレレを弾きながらラフなシャツにショートパンツの男性客が近寄ってきた。
「やんばるで喧嘩しちゃ、だめだめ。沖縄の自然に癒されるところで、怒った顔も泣き顔も似合わないよ」。
見事な夏の夕焼けが、二人を囲んだ。
「悪かったよ」と大輔。
「これからは直美が好きな映画や食べ歩きにも一緒に行くよ。だからアウトドア好きな僕のことも許してよ」
男性客のウクレレの軽快なリズムも、「許してやれよ」と聴こえてきて、直美は頷いた。
大輔の顔がぱっと明るくなって、
「明日はやんばるの森トレッキングに行こう!そこは約50年もの間、ほとんど誰も足を踏み入れたことがないんだ。直美が大好きなエコだらけだよ!」。
大のアウトドア好きの彼が、直美のことも気遣い始めたようで、直美は新たな気持ちで沖縄バカンスを充分楽しもうと思うのだった。
(テキスト/夏目かをる)
>>前へ
アウドドア好きの彼と、インドア派の彼女とのすれ違い




