見事な盆栽が並んでいる軒先や庭先を通りかかると、つい足をとめて、うっとりと見入ってしまいます。まるで里山の風景を、そっと手のひらで救いとって小さな鉢に移し替えたような、そんな自然の景色を盆栽に見るからです。
しかし、“盆栽”というと、数年をかけて育むもので、形や鉢にも細やかな決まりがあり、とても気難しい世界。それだけに自分で育てて愛でるには、敷居の高い趣味だと思っていました。
そんな盆栽の世界も、最近は少し様変わりしているようです。フラワーショップの軒先には、手のひらに乗るような小さな盆栽(ミニ盆栽)がちょこんと佇み、若い女性たちが気軽に購入していく様子をよく見かけるようになりました。
盆栽は、雄大なる自然の姿を目指し、幹や枝、根張り、器など、全体のバランスを見ながら形作り、鑑賞します。でも、ミニ盆栽にはそこまでの形式はないため、自由にまた気軽に楽しめる盆栽として、今静かな人気を得ています。手軽ですが、“自然の趣き”を鉢に再現しているのはミニ盆栽も同じ。鉢のなかの小さな木や草花は、毎年きちんと四季を伝えてくれます。
初心者でも楽しめて誰にでも簡単に始められる、ミニ盆栽。小さな鉢だから育てるのにも鑑賞のために飾るのにも、場所をとらないのも嬉しいところ。“四季折々の自然の風景”を持つ部屋、そんな風景のある暮らし……なんて、ちょっと素敵だと思いませんか。
今回、“ミニ盆栽の作り方”の手習いでお伺いしたのは、野の花専門店『野の花 司』。スタッフの渡辺明美さんに、簡単な作業と手入れで実現できる『モミの木のミニ盆栽』を教えていただきました。
ミニ盆栽の作り方
まずは土台から整えていきましょう。
1 用意するもの左から、ワイヤー(銅線)、鉢底ネット、園芸用ピンセット、割り箸、土入れ、剪定バサミ、鉢、富士砂、苔、用土(赤玉土と桐生砂のブレンド)、モミの苗。
2 鉢底ネットを敷く鉢の底に空いている排水口に、鉢底ネットを置きます。ネットを敷くことで、用土や砂が穴から流れ出ていかないようにし、底から害虫の侵入を防ぎます。
3 ワイヤーを鉢底ネットに差し込むU字に曲げたワイヤーを、鉢の内側から鉢底ネットに差し込みます。鉢内側のワイヤーのカーブ部分は少し浮かせて、ワイヤー先端は鉢底の裏側で開いて、ネットを固定します。
4 ワイヤーをねじる浮かせたワイヤーのカーブ部分を、一回ねじって横に倒します。こうすることで網底ネットがさらに固定されます。
5 用土を入れる鉢の3分の1くらいの深さまで、用土を入れます。(用土は、赤玉土:桐生砂を7:3の割合でブレンドしたもの。どちらも園芸ショップで手に入ります)。
土台が整ったら、いよいよ苗を移し変えます。
6 苗を外すモミの苗をポットから取り出します。
7 根をほぐす根元の土は3分の2ほど、指でほぐしながら落とします。
8 鉢に配置する鉢にモミの苗をのせ、幹や枝ぶりを見ながら、配置を決めます。躍動感を表現したい時は、鉢の真ん中に配置するよりも、伸びている枝を生かし、その方向に余白を作るようにレイアウトするといいでしょう。真上からはもちろん、正面からも見定めてレイアウトし、バランスを整えましょう。
9 用土を足す苗の配置が決まったら、根元まわりに用土を足します。
10 割り箸で突く足した用土を、鉢の中に鋤き込むために、割り箸で突きます。こうすることで、根と根の間に隙間なく用土を行き渡らせるのです。根間に隙間があると空気が入り、根が乾燥して育ちにくくなるので注意を。
最後は仕上げです。
11 水をやる用土を入れたら、水やりを。鉢底の排水口から水が流れ出してくるほど十分に水を与えましょう。目安は、流れ出した水が、土を含んだ茶色の水色から、透明な水色になるまで。
12 苔をはりつける苔を水で押し洗いして湿らせ、軽くしぼります。もし苔の裏に古い土がついていたら、剪定バサミで古い土を切り落とします(古い土がついたままだと、新しい土にはりつきにくくなるため)。その苔を、ピンセットでモミの根元の土にはりつけていきます。苔は、自然の景色を鉢の上に作るための素材ですが、土の乾燥を防ぐという役割もあります。
13 化粧砂をまく化粧砂というわれる富士砂を、苔を配しなかった土の上にまきます。ボク石といわれる小石を配して、自然の岩を表してみるとさらに趣きがでます。
14 完成!モミのミニ盆栽の完成図。
置き場所 植え替えてすぐは、新しい用土に根が落ち着いていない状態です。根づくまで一週間くらいは日陰に置き、その後日光があたる屋外に置きかえましょう。 直射日光があたるベランダや庭で育てる時は、コンクリートや石の上に鉢を直接置かないこと。夏は日光の照り返しが強く、冬は寒気で凍てついてしまい、盆栽が育ちにくくなります。必ず木製の板や台の上に置きましょう。 また、真夏は、直射日光が強すぎて葉が焼けてしまうので、よしずなどで日陰を作るなど、盆栽が涼しく過ごせる工夫をしてください。
水やり 苔を触ってみて「乾いてきたな」と感じたら、たっぷり水やりをしてください。時間は午前中がベスト。 水分蒸発が激しい夏場(とくに屋外に置く場合)は、朝夕2回の水やりを。
剪定 ご紹介したモミの木は、新芽が出てきたらそれを摘む程度でOK。 |
野の花専門ショップ。趣豊かな露地咲きの野花をはじめ、茶花、山野草の苗、アレンジメントや寄せ植え、ミニ盆栽、オリジナルガーデニンググッズを揃えているショップ。 2階には、山菜などの“野山のごちそう”が堪能できるお食事処『茶房野の花』があります(営業時間:月〜土11:00-19:00、日・祝日12:00ー18:00)。 また3階フロアでは、野花のアレンジメントや寄せ植え、着物の着付け、絵手紙などのさまざまな教室・講座を開催。詳細はホームページをご参照ください。 |