ミュージシャン。'91年デビュー以降、国内外問わず数々の作品を発表、'98、'99全米ツアーも行う。NHKFMのパーソナリティー、連載コラムや映画コメント執筆、字幕監修なども手掛ける。近年、菊地成孔氏や大友良英氏らのセッションにも参加し話題に。'06年に映像作品「kochab」とアルバム「NUNKI」をリリース。'07年2月のツアーを皮切りに全国各所でのフェスやイベントに出演。7月にはライブDVD, 数々のアーティストと共演した楽曲を収録したコンピレーションアルバムをリリースする。
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2008.01.07
明けましておめでとうございます。
皆さん、お正月はいかがお過ごしでしたか?
私は、足跡が一つも付いていない真っ白な雪が降る山で走りまわり、
うっかりお餅を焦がしたりしながら、元気なお正月を過ごしました!
いつも思うのですが、こういう寒い場所に行く時は防寒対策に気合いが入っているせいか、北国へ出かけるというワクワク感が強いせいか、普段は南国派で寒さが苦手なはずなのに、何故だか寒さが苦になりません。逆に、沢山動くせいか、汗をかいて湯気が出そうな感じです。いつもより水をゴクゴク飲みたくなるくらいです。
氷柱が冬の太陽にキラキラ溶けていたり、うさぎの足跡が時々ピョンピョン付いていたり…シャーベット色に凍った池の底を覗いてみると、茶や黄の落ち葉がぎっしりと敷きつめられています。都会にはない風景に夢中になっていると、無意識に呼吸も変わってくるような気がします。体の隅々にまでキリッと新しい酸素が行き渡って、身も心も生まれ変わったような気分になります。
この山雪のおかげで、新年を迎えた私の心もパキッと引き締まりました。
この真っ白な寒さの下に春が眠っています。私の希望も同じだなぁと思いました。
この一年が、私達に取って実りの多い充実した、素敵な一年になりますように…!
先週の週末明けに、新潟は越後妻有にある「光の館-House of Light」という所に行って来ました。
この「光の館」は、カリフォルニア州出身のアーティスト、ジェームス・タレルの作品で、そこに滞在して観賞するというものです。彼はこの構想を、谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」の中から見出したそうで、瞑想のためのゲストハウスになっています。
この時期の新潟は、田んぼが黄色く色付き、ススキやコスモスがわさわさと揺れて、もうすっかり秋の匂いに包まれていました。
十日市のはずれの山間に作られたこの建物は、この地方の豪雪に備えて玄関が地上から2.7mの高さに据えられているのですが、全体をまるで雨戸で囲う様に全て木材で作られているからか、その階段を登る時にまるでお参りをしに来たような、少し厳かな気分になりました。
この建物の中心となる居間の天井には、四角い穴が開いていて、機会仕掛けでスライドする屋根が付いています。そこを開けるとガラスもはめられていないので、締め忘れると雨が入って来てしまうのですが、直接、空を観察する事が出来るようになっています。
日の出と日没になると、自動的に部屋の灯りがコントロールされるようになっていて、居間の畳に寝転がって、空の光や色がゆっくりと変わっていく様子を観察するプログラムが用意されているのです。
この日は曇りがちでしたが、夕暮れには気持ちの良いお天気になっていて、かえって雲も出ていたおかげで、観賞にはぴったりでした。
人数が多かったせいか、じっくり集中するというよりも、お酒を飲みながらゆっくり観賞する感じだったのですが、それでも空と部屋の光が変化していくのを観賞するという体験は、とても貴重なものになりました。
昨年、モロッコの小さな村に滞在していた時のことを思い出しました。
窓からの光と、窓際に置いたキャンドルの光が変化していく様子を、ビデオに納めたのですが(DVDに収録していますので、よかったら観てみて下さい!)、その時は窓枠や風景の変化など、注目するものがいくつかあったので、今回のように光と色(あとは雲の流れ)に集中する事は、初めての体験でした。
この部屋だけではなく、建物全体がタレルの設置した光に包まれているので、この時のように意識していなくても、自然と光に敏感になるようになっています。
お風呂場には、光ケーブルのようなものが仕込まれていて、真っ暗な中に青白い線が浮かび上がるようになっていました。
お湯に浸かると、体がブラックライトに当たったように発光するのです!(残念ながら、暗すぎて私のカメラでは収める事が出来ませんでした。)
丁度、お月見の夜だったので、消灯前に友人達と短い散歩をしに出かけました。ススキの擦れる音やカエルや虫の合唱の中、時々雲に隠れたりしながら降り注ぐ月光を浴びて、皆でワハハとお喋りをして、なんとも贅沢な時間を過しました。
座間味島で、お豆腐作りをしました。
日本なら何処にいても、特に都会ともなれば、沢山の種類のとても美味しい豆腐が手に入るので、なかなか手作りする機会はないと思うのですが、今回、島で教わったものは、お豆腐屋さんでもやらないだろうと思うくらいの本格的な方法と材料で作ったので、皆さんに紹介しようと思います。
大豆は北海道産の無農薬のものを一升(大体これで大きなお鍋一杯分の豆腐が作れます)、水に浸けて数時間ふやかします。
そして、それを石臼で少しずつ挽いていきます。石臼を使って作る方法は、島でもここのおばあちゃんしかいないそうで、というのも、もう石臼自体が手に入らないからなのです。
それから手間がかかりすぎるからだそう。
石臼で挽くのはそれ自体は簡単そうですが、実はものすごく重たくて大変なのです。
持ち上げる事が不可能だったので一体何キロくらいあるのか分からないのですが、その重たい臼を回しても回しても、挽かれた大豆は少ーしずつしか出てきません。
そのかわり、機械ではなかなか出来ない、とても細かいとろりとしたクリームのような状態になるのです。
豆の量も一升分と多かったので、5人で交換しつつ、石臼を2時間以上ずっと回し続けたのですが、もう筋肉痛に成りそうな程、重労働でした。
びっくりしたのは、おばあちゃんが一番、力があった事。
何度も交代してやっと、という感じなのですが、おばあちゃんはまるで軽快そうに簡単に回していました。
毎日、畑仕事をしたりなど一日中動き回っている姿を数日見かけていて、とてもお元気だなと思っていたのですが、私よりも遥かにタフなのでまったく驚いてしまいました!
こうして挽き終わった大豆は、布巾で作った袋に入れて、漉していきます。
何度も繰り返し、袋にクリーム状の大豆を入れて絞っていくと、おからと豆乳に分かれていくのです。
おからは畑の肥やしなどにするそう。
実は私はあまりおからが美味しいと思った事がなかったのです。
なぜなら、ボソボソしていて口当たりが悪いからなのですが、このおからはとてもシットリしていて色も真っ白で、今までのおからとはまったく違うものでした。
どちらかというと、白和えにしたときの豆腐に近い感じ・・。
そして最後に、豆乳を大きな鍋に入れて火にかけて、そこに海水を入れるのです。
この海水は、私達が一生懸命に石臼を回していた時に、おじさんが島の一番綺麗な浜にいって汲んできてくれたものでした。
”にがりは?”と聞いたら、”にがりは、水が汚くてどうしようもない時に使うものだよ”と教えてくれました。
”そういえば、にがりは海水から出来ているのだった”と気づいたのですが、それでも海水を入れるだけで固まっていくなんて不思議で、何だか感動してしまいました。
塩も入れなくても、もちろん良い具合の味になるのです。
豆乳をグツグツ煮立てていると、豆乳が少しずつ分離していって、豆腐になっていきます。
それをお玉ですくって、器によそえば出来上がり。
これを型に入れたり、ざるに入れたりしても良いのですね。
味はというと、本当に今までの人生の中で一番美味しかったです。
こんな贅沢なお豆腐はもう食べる事は出来ないかもしれません。
とても幸せな経験でした!